コーポレートガバナンスと内部統制は混同されやすく、違いを明確に説明できる人は多くありません。
どちらも企業活動を健全に遂行することを目的としており、不祥事の防止や適切な情報開示など、どちらも健全な企業運営に不可欠なものです。
本記事では、コーポレートガバナンスと内部統制の違いをわかりやすく説明していきます。
Contents
- 1 内部統制とは
- 2 内部統制の目的
- 3 内部統制の基本的要素
- 3.1 統制環境(Control Environment)
- 3.2 リスク評価(Risk Assessment)
- 3.3 統制活動(Control Activities)
- 3.4 情報とコミュニケーション(Information and Communication)
- 3.5 モニタリング(Monitoring)
- 3.6 統制の文化(Control Culture)
- 3.7 経営陣のコミットメント(Management Commitment)
- 3.8 役割と責任の明確化(Clear Roles and Responsibilities)
- 3.9 リスク対応の整備(Risk Response Development)
- 3.10 内部統制の持続的改善(Continuous Improvement of Internal Control)
- 4 ガバナンスとは
- 5 ガバナンスと内部統制の違い
- 6 内部統制を強化することでガバナンスにもつながる
- 7 まとめ
内部統制とは
内部統制は、企業や組織がその業務を効果的かつ効率的に行うために設けるプロセスや手続きの集合体です。内部統制の主な目的は、業務の有効性と効率性の確保、財務報告の信頼性向上、法令遵守の確保、不正行為の防止と発見です。以下に、内部統制のについて詳しく説明します。
統制環境
統制環境は、内部統制の基盤となるもので、組織の文化や経営陣の姿勢、価値観などを指します。経営陣の倫理的なリーダーシップと透明性のあるコミュニケーションが、健全な統制環境を築く鍵となります。
リスク評価
リスク評価は、組織が直面する潜在的なリスクを識別し、それらのリスクが業務や目標にどの程度の影響を与えるかを評価するプロセスです。これにより、重要なリスクに対して適切な対応策を講じることができます。
統制活動
統制活動は、識別されたリスクに対応するために設けられた具体的な方針と手続きです。これには、業務プロセスの分業、承認手続き、監視活動、不正防止策などが含まれます。
情報とコミュニケーション
組織内での重要な情報の適時かつ正確な共有は、内部統制の効果を高めるために不可欠です。情報の流れが滞ると、リスクの識別や対応が遅れ、問題が深刻化する可能性があります。
モニタリング
モニタリングは、内部統制の仕組みが適切に機能しているかを継続的に評価するプロセスです。定期的なレビューや内部監査を通じて、統制の効果を検証し、必要に応じて改善を行います。
業務の有効性と効率性
内部統制は、業務プロセスの効率化を図り、目標達成のためのリソースの最適な配分を支援します。これにより、無駄を排除し、生産性を向上させることができます。
財務報告の信頼性
正確で信頼性のある財務報告を確保することは、内部統制の重要な目的の一つです。適切な会計処理や財務データのチェック、財務報告プロセスの監視を通じて、財務情報の正確性を保証します。
法令遵守
内部統制は、組織が関連する法令や規制を遵守することを確保します。これには、法令の変更に対応したポリシーの改訂や従業員への教育・研修が含まれます。
不正行為の防止と発見
内部統制のもう一つの重要な目的は、不正行為の防止と早期発見です。これには、分業や承認手続きの強化、内部通報制度の導入、不正行為のリスク評価が含まれます。
IT統制
現代のビジネス環境では、ITシステムが業務の中核を担っています。IT統制は、システムのセキュリティ、データの正確性、アクセス管理などを含み、情報システムの信頼性を確保します。
内部統制は、組織の健全な運営と持続的な発展を支える重要な仕組みです。統制環境、リスク評価、統制活動、情報とコミュニケーション、モニタリング、業務の有効性と効率性、財務報告の信頼性、法令遵守、不正行為の防止と発見、そしてIT統制の10項目は、内部統制の主要な要素として、それぞれが相互に関連し合いながら機能します。組織はこれらの要素をバランスよく取り入れることで、内部統制を効果的に運用し、目標達成に向けて一貫した努力を続けることができます。
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内部統制の目的
内部統制(internal control)の目的は、企業や組織の業務活動が適正に行われ、目的が達成されるようにするためのプロセスと仕組みを整備・運用することにあります。以下に、内部統制の主要な目的について詳述します。
業務の効率化と効果的な運営
内部統制は、業務の効率化を図り、資源の無駄を排除することで、企業全体の運営を効果的にすることを目的としています。具体的には、業務プロセスの標準化や自動化、リソースの最適配置などが挙げられます。
法令遵守(コンプライアンス)
内部統制は、企業が関係法令や規則を遵守し、法的リスクを低減するための仕組みを提供します。これにより、法令違反による罰則や信用失墜を防ぐことができます。
財務報告の信頼性確保
内部統制は、財務報告の正確性と信頼性を確保するために必要なプロセスを整備します。これにより、株主や投資家に対する透明性の高い財務情報の提供が可能となります。
資産の保全
企業の資産を不正利用や紛失から守るために、内部統制は適切な管理と監視を行います。物理的な資産だけでなく、情報資産や知的財産の保護も含まれます。
不正防止と早期発見
内部統制は、従業員や取引先による不正行為を防止し、万一発生した場合には早期に発見するための仕組みを構築します。これには、職務分掌や定期的な監査などが含まれます。
業務の正確性と完全性の確保
業務が正確かつ完全に実行されるように、内部統制はチェック機能を設けます。例えば、複数の担当者による承認プロセスや、データ入力の検証手続きなどが含まれます。
リスク管理の強化
内部統制は、企業が直面するリスクを評価し、適切に管理するためのフレームワークを提供します。リスクの特定、評価、対策の立案と実施が組織全体で体系的に行われます。
業務の透明性向上
内部統制は、業務の透明性を高めることを目的としています。透明性が向上することで、組織内外のステークホルダーに対する信頼性が向上し、持続的な成長が期待できます。
情報の正確性と信頼性の確保
内部統制は、業務に関連する情報が正確かつ信頼できるものであることを保証します。これには、データの保護、アクセス制御、定期的なバックアップなどが含まれます。
継続的改善と組織の学習能力向上
内部統制は、組織の継続的な改善と学習能力の向上を促進します。定期的な見直しやフィードバックの仕組みを通じて、内部統制のプロセス自体が進化し、組織全体の能力向上に寄与します。
これらの目的を達成するために、企業は内部統制の仕組みを整備し、適切に運用することが求められます。内部統制は単なる規制遵守のための手段ではなく、企業の持続的成長と価値創造に欠かせない重要な要素です。
内部統制の基本的要素
内部統制の基本的要素は、企業や組織が業務活動を適正に行い、目標を達成するために不可欠な要素です。以下に、内部統制の基本的要素を10項目挙げ、それぞれについて詳述します。
統制環境(Control Environment)
統制環境は、内部統制システムの基盤であり、組織全体の統制意識や文化を形成します。トップマネジメントの姿勢、倫理規範、組織構造、人事政策などが含まれます。健全な統制環境は、他の内部統制要素の効果的な運用を支えます。
リスク評価(Risk Assessment)
リスク評価は、組織が直面するリスクを特定し、評価するプロセスです。リスク評価を通じて、潜在的なリスクを認識し、これに対する適切な対応策を講じることができます。リスク評価には、環境変化や新たなリスクの出現に対応するための継続的な見直しが必要です。
統制活動(Control Activities)
統制活動は、リスクを管理し、組織の目標を達成するための具体的な方策や手続きを指します。これには、承認手続き、職務分掌、アクセス制御、物理的な資産の保護などが含まれます。統制活動は、業務プロセス全体に組み込まれている必要があります。
情報とコミュニケーション(Information and Communication)
効果的な内部統制には、適切な情報の収集、処理、伝達が不可欠です。情報とコミュニケーションの仕組みが整備されていることで、全ての従業員が必要な情報をタイムリーかつ正確に共有できます。これにより、業務の透明性が向上し、組織全体の連携が強化されます。
モニタリング(Monitoring)
モニタリングは、内部統制が適切に機能しているかを継続的に監視するプロセスです。これには、定期的な内部監査、自己評価、外部監査の結果のフィードバックなどが含まれます。モニタリングにより、内部統制の改善点が明らかになり、継続的な改善が促進されます。
統制の文化(Control Culture)
統制の文化は、組織全体の価値観や行動規範に深く根ざしています。従業員一人ひとりが統制の重要性を理解し、自発的に統制に貢献する文化を育成することが求められます。統制文化の醸成は、組織の長期的な健全性を支える重要な要素です。
経営陣のコミットメント(Management Commitment)
経営陣の強いコミットメントが内部統制の成功に不可欠です。経営陣が内部統制を重視し、リソースを投入し、積極的に関与することで、組織全体の統制意識が高まります。経営陣のコミットメントは、従業員の士気を高め、組織全体の統制活動を支援します。
役割と責任の明確化(Clear Roles and Responsibilities)
内部統制の効果を最大化するためには、各従業員の役割と責任を明確にすることが重要です。職務分掌を明確にすることで、不正の防止や業務の効率化が図られます。また、責任の所在が明確になることで、問題発生時の迅速な対応が可能となります。
リスク対応の整備(Risk Response Development)
リスク対応の整備は、組織がリスクに対して迅速かつ適切に対応するためのプロセスを確立することを意味します。リスク対応計画を策定し、定期的に見直すことで、組織のリスク耐性を高めます。効果的なリスク対応は、組織の持続可能な成長に寄与します。
内部統制の持続的改善(Continuous Improvement of Internal Control)
内部統制は一度整備すれば終わりではなく、継続的に改善することが求められます。定期的な見直しやフィードバックを通じて、内部統制のプロセスを進化させ、組織の変化に対応できる柔軟性を持つことが重要です。持続的な改善は、組織の競争力を維持し、リスク管理の強化に寄与します。
以上のように、内部統制の基本的要素は多岐にわたりますが、これらが相互に連携し、補完し合うことで、組織全体の健全な運営と目標達成を支える強固な内部統制システムが構築されます。効果的な内部統制は、組織の信頼性を高め、ステークホルダーからの信頼を得るための基盤となります。
ガバナンスとは
ガバナンスは、企業や組織がその活動を効果的に管理し、戦略的な目標を達成するための枠組みやプロセスを指します。ガバナンスは、経営陣、取締役会、株主、その他の利害関係者によって構成される組織の意思決定プロセスや管理機構に関連しています。以下に、ガバナンスついて詳しく説明します。
戦略的計画
ガバナンスの中心には、組織の長期的な目標とビジョンを設定する戦略的計画があります。戦略的計画は、組織の方向性を示し、資源の配分や優先事項を決定します。効果的な戦略的計画は、外部環境の変化に対応し、競争優位を維持するために重要です。
リーダーシップ
リーダーシップは、ガバナンスにおいて重要な役割を果たします。経営陣は、組織のビジョンと目標を共有し、それを達成するための方向性を示します。強力で倫理的なリーダーシップは、組織全体に信頼とモチベーションをもたらします。
リスク管理
リスク管理は、組織が直面する潜在的なリスクを識別、評価、管理するプロセスです。効果的なリスク管理は、組織が不確実性に対応し、損失を最小限に抑えるための重要な手段です。リスク管理の枠組みには、リスクアセスメント、リスク対応、リスクモニタリングが含まれます。
透明性と説明責任
透明性と説明責任は、ガバナンスの基本原則です。透明な意思決定プロセスと説明責任のある経営は、利害関係者の信頼を築くために不可欠です。これには、定期的な報告や情報開示、内部および外部の監査が含まれます。
利害関係者の関与
利害関係者の関与は、ガバナンスにおいて重要な要素です。株主、従業員、顧客、供給者、コミュニティなど、様々な利害関係者の意見や期待を考慮し、それを組織の意思決定に反映させることが求められます。
法令遵守
法令遵守は、組織が関連する法律や規制を遵守することを確保するプロセスです。法令遵守は、組織の信頼性と評判を維持するために重要です。これには、コンプライアンスプログラムの導入や従業員教育が含まれます。
内部統制
内部統制は、ガバナンスの一部として、業務の有効性、効率性、信頼性を確保するための手続きやプロセスを指します。内部統制は、不正行為の防止や早期発見、業務の改善に寄与します。
財務管理
財務管理は、組織の財務資源を適切に管理し、資金の効率的な使用を確保するプロセスです。これには、予算編成、財務報告、コスト管理が含まれます。効果的な財務管理は、組織の持続可能な成長を支えます。
ガバナンスの評価と改善
ガバナンスの評価と改善は、組織のガバナンス枠組みが効果的に機能しているかを定期的に評価し、必要に応じて改善を行うプロセスです。これには、内部および外部の評価、ベストプラクティスの導入が含まれます。
倫理と企業の社会的責任(CSR)
倫理と企業の社会的責任は、ガバナンスにおいてますます重要な要素となっています。組織は、倫理的な行動を促進し、社会的責任を果たすための取り組みを行う必要があります。これには、環境保護、コミュニティ支援、公正なビジネス慣行が含まれます。
ガバナンスは、組織の健全な運営と持続的な発展を支える枠組みです。戦略的計画、リーダーシップ、リスク管理、透明性と説明責任、利害関係者の関与、法令遵守、内部統制、財務管理、ガバナンスの評価と改善、倫理と企業の社会的責任はガバナンスの主要な要素として、それぞれが相互に関連し合いながら機能します。組織はこれらの要素をバランスよく取り入れることで、効果的なガバナンスを実現し、持続可能な成長を目指すことができます。
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ガバナンスと内部統制の違い
ガバナンスと内部統制は、いずれも組織の健全な運営を支えるための重要な概念ですが、それぞれ異なる目的、範囲、役割、焦点を持っています。以下に、ガバナンスと内部統制の違いを具体的に比較しながら詳述します。
ガバナンスの定義と目的
ガバナンス(Governance)は、組織全体の管理と意思決定の枠組みを指します。主な目的は、組織がその目標を達成し、ステークホルダーの利益を守るための透明性、公正性、説明責任を確保することです。ガバナンスは、特に取締役会や経営陣の役割が中心となり、以下の要素を含みます。
意思決定の透明性
ガバナンスは意思決定プロセスの透明性を高め、ステークホルダーに対する信頼を築きます。
透明な意思決定は、情報の公開とコミュニケーションを通じて達成されます。
説明責任(アカウンタビリティ)
組織は、その行動や決定についてステークホルダーに対して説明責任を果たす必要があります。
これにより、組織の行動が適切であるかどうかを評価することができます。
法令遵守(コンプライアンス)
ガバナンスの一環として、組織が関係法令や規則を遵守することが求められます。
コンプライアンスの徹底は、法的リスクを回避し、組織の信頼性を高めます。
リスク管理
ガバナンスは、組織が直面するリスクを評価し、管理するためのフレームワークを提供します。
リスク管理は、組織の安定性と持続可能性を確保するために不可欠です。
ステークホルダーの関与
ガバナンスは、株主、従業員、顧客、取引先などのステークホルダーとの関与を重視します。
ステークホルダーの意見や利益を適切に反映することで、組織の運営が公正かつ透明性を持つようになります。
取締役会の役割
取締役会は、ガバナンスの中核的な役割を果たします。
取締役会は、経営陣の監督と指導を行い、重要な意思決定に関与します。
取締役会の独立性と専門性は、ガバナンスの質を左右する重要な要素です。
内部統制の定義と目的
内部統制(Internal Control)は、組織の業務活動を効果的かつ効率的に遂行し、資産を保全し、法令を遵守し、財務報告の信頼性を確保するために設けられる仕組みやプロセスです。内部統制の具体的な目的は以下の通りです。
業務の効率化と効果的な運営
内部統制は、業務の効率化を図り、資源の無駄を排除することで、組織全体の運営を効果的にすることを目的としています。
業務プロセスの標準化や自動化、リソースの最適配置などが含まれます。
法令遵守
内部統制は、組織が関係法令や規則を遵守し、法的リスクを低減するための仕組みを提供します。
これにより、法令違反による罰則や信用失墜を防ぐことができます。
財務報告の信頼性確保
内部統制は、財務報告の正確性と信頼性を確保するために必要なプロセスを整備します。
これにより、株主や投資家に対する透明性の高い財務情報の提供が可能となります。
資産の保全
内部統制は、企業の資産を不正利用や紛失から守るために、適切な管理と監視を行います。
物理的な資産だけでなく、情報資産や知的財産の保護も含まれます。
不正防止と早期発見
内部統制は、従業員や取引先による不正行為を防止し、万一発生した場合には早期に発見するための仕組みを構築します。
これには、職務分掌や定期的な監査などが含まれます。
業務の正確性と完全性の確保
業務が正確かつ完全に実行されるように、内部統制はチェック機能を設けます。
例えば、複数の担当者による承認プロセスや、データ入力の検証手続きなどが含まれます。
範囲と目的の違い
ガバナンスは、組織全体の管理と意思決定の枠組みを提供し、特に取締役会や経営陣が中心となります。組織の目標達成とステークホルダーの利益保護を目的とします。
内部統制は、具体的な業務プロセスや仕組みを提供し、現場レベルでの業務遂行をサポートします。業務の効率化、不正防止、法令遵守、財務報告の信頼性確保を目的とします。
焦点の違い
ガバナンスは、透明性、公正性、説明責任に焦点を当て、ステークホルダーの信頼を得ることを目指します。
内部統制は、業務の適正な遂行と具体的な管理手段に焦点を当てます。
役割の違い
ガバナンスは、主に取締役会や経営陣が担い、組織の全体的な方向性や戦略を決定します。
内部統制は、全ての従業員が関与し、日々の業務活動を通じて実行されます。
プロセスの違い
ガバナンスは、組織の大きな枠組みや方針を設定し、戦略的な意思決定を行うプロセスです。
内部統制は、具体的な業務手順やチェック機能を設けて、業務の適正性を確保するプロセスです。
相互の補完関係
ガバナンスと内部統制は、相互に補完し合う関係にあります。効果的なガバナンスは、強固な内部統制システムを支え、内部統制は、ガバナンスのフレームワーク内で業務が適切に実行されることを確保します。例えば、取締役会が内部統制の方針を策定し、経営陣がそれを実行に移し、従業員が具体的な業務プロセスで実行することで、全体として組織の健全な運営が維持されます。
これにより、組織は持続可能な成長を実現し、ステークホルダーからの信頼を得ることができます。効果的なガバナンスと内部統制は、リスクの低減、不正防止、法令遵守、財務報告の信頼性確保を通じて、組織の競争力を高めるための基盤となります。
内部統制を強化することでガバナンスにもつながる
内部統制を強化することは、組織のガバナンスを向上させるための重要な手段です。内部統制とガバナンスは相互に補完し合う関係にあり、内部統制の強化はガバナンスの枠組みを支え、組織全体の透明性、公正性、説明責任を確保するための基盤となります。以下に、内部統制を強化することがどのようにガバナンスの向上に寄与するかについて詳述します。
透明性の向上
内部統制の強化により、組織内の業務プロセスや手続きが明確化され、透明性が向上します。例えば、業務フローの標準化や承認手続きの明確化は、業務の進行状況や決定の根拠を可視化し、関係者全員が情報を共有しやすくなります。これにより、取締役会や経営陣が正確かつ最新の情報に基づいて意思決定を行うことが可能となり、組織全体のガバナンスが強化されます。
説明責任の強化
内部統制の強化は、組織の説明責任(アカウンタビリティ)を向上させます。具体的には、業務プロセスの各段階での責任者や担当者が明確になり、各自が自分の役割に責任を持つようになります。これにより、業務の進捗や成果について、ステークホルダーに対して明確に説明することができるようになります。取締役会や経営陣も、組織全体のパフォーマンスについて正確な報告を受け、説明責任を果たしやすくなります。
法令遵守(コンプライアンス)の徹底
内部統制は、法令や規則の遵守を確実にするための仕組みを提供します。内部統制を強化することで、法令遵守に関する監視と管理が徹底され、コンプライアンス違反のリスクが低減します。これにより、組織の信頼性が向上し、外部からの監査や規制当局の評価に対しても適切に対応できるようになります。法令遵守が徹底されることで、組織全体のガバナンスが強化されます。
リスク管理の強化
内部統制の強化は、リスク管理の質を向上させます。リスク評価とリスク管理のプロセスが組織全体で統一されることで、潜在的なリスクの早期発見と対応が可能となります。例えば、不正行為やミスの発見が早期に行われることで、大きな損害を未然に防ぐことができます。取締役会や経営陣は、リスク管理の強化により、より確実な意思決定を行うことができ、組織の安定性と持続可能性が高まります。
業務効率の向上
内部統制の強化は、業務効率の向上にも寄与します。業務プロセスが明確に定義され、無駄な作業が排除されることで、業務全体の生産性が向上します。効率的な業務運営は、リソースの最適配分を可能にし、経営資源の有効活用を促進します。取締役会や経営陣は、効率的な業務運営により、組織の戦略的目標達成に向けた資源配分を最適化することができます。
財務報告の信頼性向上
内部統制の強化により、財務報告の正確性と信頼性が向上します。具体的には、会計処理の適正化や監査手続きの強化により、誤りや不正の発見が容易になります。信頼性の高い財務報告は、株主や投資家などのステークホルダーに対する組織の透明性を高め、資金調達や投資判断において有利に働きます。取締役会や経営陣も、正確な財務情報に基づいて戦略的な意思決定を行うことができ、組織全体のガバナンスが強化されます。
不正防止と早期発見
内部統制の強化は、不正行為の防止と早期発見に寄与します。例えば、職務分掌の明確化や監視機能の強化により、不正行為が発生しにくい環境が整備されます。また、不正が発生した場合でも、早期に発見し、適切に対応することで損害を最小限に抑えることができます。取締役会や経営陣は、不正防止と早期発見の仕組みを通じて、組織の信頼性と安全性を確保することができます。
継続的な改善と学習能力の向上
内部統制の強化は、組織の継続的な改善と学習能力の向上を促進します。定期的な監査やフィードバックを通じて、内部統制のプロセス自体が進化し、組織の変化に対応できる柔軟性を持つことが重要です。取締役会や経営陣は、継続的な改善と学習能力の向上を通じて、組織の競争力を維持し、ガバナンスの質を高めることができます。
内部統制を強化することで、組織のガバナンスも強化されます。透明性の向上、説明責任の強化、法令遵守の徹底、リスク管理の強化、業務効率の向上、財務報告の信頼性向上、不正防止と早期発見、継続的な改善と学習能力の向上といった効果が得られ、これらが総合的に組織の健全な運営を支える基盤となります。内部統制とガバナンスの相互補完関係を理解し、適切に実行することで、組織は持続可能な成長とステークホルダーからの信頼を築くことが可能となります。
まとめ
コーポレートガバナンスと内部統制の違いは、コーポレートガバナンスが経営者の不正・暴走を防ぐための仕組みであるのに対し、内部統制は経営者が従業員などを管理するための仕組みである点です。
コーポレートガバナンスに取り組むことで、株主やステークホルダーの利益や権利が確保され、長期的に見て企業の社会的地位の向上につながります。
コーポレートガバナンスの強化は内部統制の構築に大きく関わるため、両面から取り組み、健全な企業経営を目指していきましょう。
内部統制の強化は不正行為や違反の抑止につながり、結果的にガバナンスの目的である適切な情報開示と透明性の確保に寄与します。
また、ガバナンスの強化によって、経営における透明性の確保や企業価値の向上につながります。それによって、社会的な信頼度を高めることが可能です。
内部統制とガバナンスを強化することは、企業を存続させるために必要不可欠な取り組みといえるでしょう。
監修者
- 2010年、株式会社秀實社を設立。創業時より組織人事コンサルティング事業を手掛け、クライアントの中には、コンサルティング支援を始めて3年後に米国のナスダック市場へ上場を果たした企業もある。2012年「未来の百年企業」を発足し、経済情報誌「未来企業通信」を監修。2013年「次代の日本を担う人財」の育成を目的として、次代人財養成塾One-Willを開講し、産経新聞社と共に3500名の塾生を指導する。現在は、全国の中堅、中小企業の経営課題の解決に従事しているが、課題要因は戦略人事の機能を持ち合わせていないことと判断し、人事部の機能を担うコンサルティングサービスの提供を強化している。「仕事の教科書(KADOKAWA)」他5冊を出版。コンサルティング支援先企業の内18社が、株式公開を果たす。
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