【マトリックス組織とは】そのメリットとデメリット、種類や特徴を徹底解説 

組織マネジメント

マトリックス組織とは、複数の管理構造を組み合わせた組織形態のことですマトリックス組織の基礎知識や期待できる効果などを把握して、ポイントを押さえて問題提起をすると、全社的な理解がより早く進み、提案が採用される可能性が高まります。

本記事では、マトリックス組織の基本知識やメリット・デメリット、実務に役立つ構築ポイントなどを解説します。

Contents

マトリックス組織とは

マトリックス組織とは、組織内の複数の機能やプロジェクトラインを同時に管理するための構造であり、特に複雑な業務や多岐にわたるプロジェクトを持つ企業に適しています。この組織形態は、従来の単一の指揮系統では対応できない柔軟性と効率性を提供することが目的です。以下に、その詳細について説明します。

マトリックス組織の概要

マトリックス組織は、機能別組織(ファンクショナル組織)とプロジェクトベースの組織(プロジェクト組織)の要素を組み合わせたもので、従業員が二重の報告ラインを持つことが特徴です。具体的には、従業員は機能部門(例:営業、製造、財務)とプロジェクトチーム(例:新製品開発、マーケット拡大プロジェクト)の両方に属し、それぞれの上司から指示を受けます。

マトリックス組織の特徴

二重の報告ライン

従業員は機能別上司とプロジェクト上司の両方に報告するため、二重の管理ラインが存在します。

これにより、従業員は機能別の専門知識とプロジェクトの目的達成の両方に貢献することが求められます。

柔軟なリソース配置

リソース(人材、設備、資金)を柔軟に再配置できるため、複数のプロジェクトに迅速に対応できます。

市場の変化やプロジェクトの進行状況に応じて、必要なリソースを適切に配分することが可能です。

協力とコミュニケーションの強化 

異なる部門やプロジェクト間での協力とコミュニケーションが促進され、組織全体のシナジーが生まれます。

情報共有が円滑に行われ、組織の一体感が高まります。

マトリックス組織の導入事例

マトリックス組織は、特に大規模なプロジェクトや複数の製品ラインを持つ企業において、その柔軟性と効果的なリソース管理のために採用されています。例えば、製薬会社やハイテク企業、コンサルティングファームなどがこの組織形態を取り入れています。これにより、技術革新や市場の動向に迅速に対応し、競争力を維持・向上させています。

マトリックス組織は、その複雑さにもかかわらず、効率的なリソース利用と柔軟な対応能力を提供するため、多くの企業で採用されています。しかし、その成功には適切な管理とコミュニケーションの戦略が不可欠です。組織内の全員が明確な役割と責任を理解し、効果的に協力することで、マトリックス組織は最大の効果を発揮します。適切なリーダーシップと綿密な計画が、この組織形態の成功の鍵となります。

マトリックス組織の種類

マトリックス組織にはいくつかの種類があり、それぞれの種類が異なるニーズや状況に適しています。以下に、マトリックス組織の主な種類について説明します。

弱い(ライト)マトリックス組織

特徴

プロジェクトマネージャーの権限が弱く、機能部門のマネージャーが主要な権限を持つ。

プロジェクトマネージャーは主にコーディネーターやファシリテーターとして機能し、プロジェクトの進行をサポートする役割を担う。

メリット 

従業員は機能部門での役割が明確であり、専門知識やスキルの開発が進む。

機能部門の安定した指揮命令系統が保たれる。

デメリット

プロジェクト間でのリソース配分が難しく、プロジェクトの優先順位が不明確になることがある。

プロジェクトマネージャーの権限が弱いため、迅速な意思決定が難しくなる場合がある。

バランスマトリックス組織

特徴

プロジェクトマネージャーと機能部門のマネージャーがほぼ同等の権限を持ち、共同で意思決定を行う。

プロジェクトと機能部門のバランスを取り、両者のメリットを最大限に活かすことが目的。

メリット

プロジェクトと機能部門のリソースを効率的に活用できる。

両マネージャーが協力して意思決定を行うため、バランスの取れた管理が可能。

デメリット 

意思決定に時間がかかることがあり、特に意見が対立する場合にプロジェクトの進行が遅れる可能性がある。

従業員がどちらの指示に従うべきか混乱することがある。

強い(ストロング)マトリックス組織

特徴

プロジェクトマネージャーが強い権限を持ち、プロジェクトの成功に対して主要な責任を負う。

機能部門のマネージャーは主にリソースの提供と専門知識の支援を行う。

メリット

プロジェクトマネージャーが迅速に意思決定を行えるため、プロジェクトの進行がスムーズ。

プロジェクトの成果に対して明確な責任を負うため、目標達成に対するモチベーションが高まる。

デメリット

機能部門の役割が軽視される可能性があり、長期的な専門知識やスキルの開発が疎かになることがある。

プロジェクトマネージャーの権限が強すぎると、機能部門との協力が難しくなることがある。

マトリックス組織の選択基準

マトリックス組織の種類を選択する際には、以下の要素を考慮することが重要です。

プロジェクトの複雑性

プロジェクトが高度に複雑で、多くの専門知識が必要な場合、強いマトリックス組織が適していることが多いです。

組織の規模と構造

大規模な組織ではバランスマトリックスが適していることが多く、機能部門とプロジェクトの両方のメリットを活かせます。

リソースの可用性

リソースが限られている場合、柔軟にリソースを再配置できるバランスマトリックスや弱いマトリックスが効果的です。

マトリックス組織の種類は、組織のニーズや状況に応じて選択することが重要です。それぞれの種類にはメリットとデメリットがあり、適切なバランスを取ることで、組織全体の効率性と柔軟性を最大限に引き出すことができます。組織のリーダーシップとコミュニケーション戦略が、この選択の成功の鍵となります。

マトリックス組織を導入するメリット

マトリックス組織を導入することには、多くのメリットがあります。以下に、その主なメリットを説明します。

効率的なリソース利用

マトリックス組織は、組織内のリソースを効率的に利用することができます。プロジェクトごとに必要な専門知識やスキルを持つ従業員を集めることができ、各プロジェクトに最適なチームを編成できます。これにより、リソースの無駄を減らし、全体の生産性を向上させることができます。

柔軟性の向上

マトリックス組織は、変化する市場環境やプロジェクトの要件に迅速に対応できる柔軟性を提供します。組織内のリソースを必要に応じて再配置することで、新たなビジネスチャンスや緊急のプロジェクトに迅速に対応できます。この柔軟性は、競争力の維持と向上に寄与します。

プロジェクトの成果向上

プロジェクトごとに専門的な知識やスキルを持つ従業員を集めることで、プロジェクトの品質が向上します。マトリックス組織では、各プロジェクトに対して明確な目標と責任が設定されているため、チームメンバーは目標達成に対して強い意欲を持ちます。これにより、プロジェクトの成功率が高まり、顧客満足度も向上します。

イノベーションの促進 

異なる部門や専門分野の従業員が協力することで、新しいアイデアや解決策が生まれやすくなります。マトリックス組織は、情報共有と協力を促進するため、組織全体でのイノベーションが促進されます。これにより、企業は市場の変化に対応し、革新的な製品やサービスを提供することができます。

従業員のスキル向上 

マトリックス組織では、従業員が異なるプロジェクトや部門での経験を積むことができるため、スキルの幅が広がります。多様な業務に従事することで、従業員は新しい知識や技術を習得し、キャリアの成長につながります。これにより、組織全体の人材の質が向上します。

コラボレーションの強化

マトリックス組織は、異なる部門やプロジェクト間での協力とコミュニケーションを強化します。これにより、組織全体の一体感が高まり、情報の共有が円滑に行われます。部門間の壁を越えて協力することで、組織のパフォーマンスが向上します。

グローバルな運営

マトリックス組織は、多国籍企業やグローバルに展開する企業に適しており、異なる地域や文化に対応した柔軟な運営が可能です。これにより、世界中の市場に適応しやすくなり、グローバルなビジネス戦略の実行が容易になります。

マトリックス組織を導入することで、効率的なリソース利用、柔軟性の向上、プロジェクトの成果向上、イノベーションの促進、従業員のスキル向上、コラボレーションの強化、そしてグローバルな運営が可能になります。これらのメリットにより、企業は競争力を維持・向上させることができ、持続可能な成長を実現することができます。

マトリックス組織を導入するデメリット

マトリックス組織を導入することには多くのメリットがありますが、一方でデメリットも存在します。以下に、マトリックス組織を導入する際の主なデメリットを説明します。

複雑な指揮命令系統

マトリックス組織では、従業員が機能別上司とプロジェクト上司の二重の報告ラインに従います。このため、指揮命令系統が複雑になり、どちらの指示に従うべきか混乱することがあります。また、上司間での意見の不一致が生じると、従業員はその対立の影響を受けやすくなります。

コミュニケーションの負担増

複数の部門やプロジェクト間での協力が必要なため、綿密なコミュニケーションが不可欠です。これにより、情報共有や意思疎通にかかる時間や労力が増加します。特に大規模な組織では、適切なコミュニケーション戦略を持たないと、情報の伝達ミスや誤解が発生しやすくなります。

意思決定の遅れ 

多くの関係者が意思決定プロセスに関与するため、決定が遅れることがあります。特に意見が対立する場合や合意を得るのに時間がかかる場合、迅速な対応が求められる状況での遅延が問題となります。これにより、機会損失や市場での競争力低下が発生する可能性があります。

役割と責任の不明確さ 

複数の上司からの指示を受けることで、従業員の役割と責任が不明確になることがあります。明確な職務範囲や責任の境界が曖昧になると、業務の効率が低下し、従業員のモチベーションや満足度が低下するリスクがあります。

リソース競争 

複数のプロジェクトが同時に進行する中で、リソース(人材、設備、資金)の奪い合いが発生することがあります。限られたリソースを最適に配分するための調整が難しくなり、特定のプロジェクトがリソース不足に陥ることがあるため、全体的なパフォーマンスが低下する可能性があります。

管理コストの増加 

複雑な組織構造を維持するための管理コストが増加します。二重の管理ラインに伴う追加の管理職やコーディネーター、プロジェクト管理のためのシステムやツールの導入など、運営コストが高くなることがあります。これにより、経済的な負担が増大します。

従業員のストレス

複数の上司からの異なる要求や指示に対処する必要があるため、従業員のストレスが増加することがあります。明確な優先順位や目標がない場合、従業員は仕事のプレッシャーや不確実性に悩むことが多くなります。これにより、従業員の離職率が高まる可能性があります。

マトリックス組織は、効率的なリソース利用や柔軟な対応能力など多くのメリットを提供しますが、一方で複雑な指揮命令系統、コミュニケーションの負担増、意思決定の遅れなどのデメリットも存在します。これらの課題を克服するためには、適切な管理戦略やコミュニケーションの改善が不可欠です。組織のリーダーシップがこれらのデメリットに対処し、組織全体での一体感を維持することで、マトリックス組織の利点を最大限に活かすことができます。

他の組織形態との違い

マトリックス組織は、他の組織形態とは異なる特徴とメリット、デメリットを持っています。以下に、代表的な組織形態である「機能別組織」と「事業部制組織」との違いを説明します。

機能別組織(ファンクショナル組織) 

特徴

従業員が専門的な機能(例:営業、製造、マーケティング、人事、財務)ごとにグループ化され、各部門が特定の機能に特化しています。各部門は部門長が指揮し、組織全体が専門的な業務に対して効率的に対応できます。

メリット

専門知識が集約され、スキルの向上が促進されます。また、業務が標準化されるため、効率が高くなります。

デメリット

部門間の連携が難しく、全社的な視点からの意思決定が遅れることがあります。プロジェクトが部門の壁を越える際に、調整が困難になることが多いです。

マトリックス組織

特徴

従業員が機能別部門とプロジェクト別チームの両方に属し、二重の指揮系統が存在します。各プロジェクトにはプロジェクトマネージャーが配置され、機能別部門のリソースを活用してプロジェクトを推進します。

メリット

プロジェクト間でリソースを効率的に配分でき、柔軟に対応できます。また、異なる部門の知識やスキルを融合させることで、イノベーションが促進されます。

デメリット

指揮系統が複雑になり、従業員がどちらの指示に従うべきか混乱することがあります。また、意思決定に時間がかかることがあります。

事業部制組織

特徴

組織が製品ラインや市場セグメントごとに事業部に分かれており、各事業部が独立して運営されます。事業部ごとに独自の財務責任を持ち、事業部長が全体の運営を管理します。

メリット

各事業部が自律的に運営され、市場や顧客のニーズに迅速に対応できます。事業部ごとのパフォーマンスが明確に評価でき、競争力が高まります。

デメリット

事業部ごとに重複する機能が発生し、リソースの効率的な利用が難しくなります。また、全社的な統一感が欠けることがあります。

マトリックス組織

特徴

機能別部門とプロジェクト別チームの二重構造があり、従業員が複数の報告ラインを持つことで、全社的なリソースの効率的な利用とプロジェクトの柔軟な管理が可能になります。

メリット

各プロジェクトが機能別部門から必要なリソースを取得でき、迅速にプロジェクトを進めることができます。全社的な視点からの連携が促進され、統一感が高まります。

デメリット

複雑な指揮系統により、管理コストが増加し、従業員が役割や責任に混乱することがあります。また、調整に時間がかかることがあります。

マトリックス組織は、機能別組織や事業部制組織と比較して、複雑な指揮系統と高い柔軟性を持っています。このため、リソースの効率的な利用や迅速なプロジェクト管理が可能になる一方で、管理の難しさや意思決定の遅れといった課題もあります。各組織形態にはそれぞれの強みと弱みがあり、組織のニーズや環境に応じて最適な形態を選択することが重要です。

具体的な導入方法と導入時の注意点 

マトリックス組織の導入は、組織の複雑さと柔軟性を高めるための戦略的な選択ですが、その成功には慎重な計画と実行が必要です。以下に、具体的な導入方法と導入時の注意点について説明します。

導入方法

現状の分析と評価

組織の現在の構造、プロセス、リソースの利用状況を評価します。特に、現在の組織形態の長所と短所を明確にし、マトリックス組織がどのように改善をもたらすかを理解します。

導入の目的と目標設定

マトリックス組織を導入する目的を明確にし、具体的な目標を設定します。これには、業務の効率化、プロジェクトの成功率向上、リソースの最適化などが含まれます。

トップダウンアプローチの採用 

経営陣からの強力なサポートが必要です。トップマネジメントは、マトリックス組織の導入を推進し、その重要性を全社員に伝える役割を果たします。

組織設計と役割の明確化

新しい組織構造を設計し、各機能部門とプロジェクトチームの役割と責任を明確にします。各部門とプロジェクトマネージャーの権限を具体的に定義し、重複や矛盾を避けるようにします。

トレーニングと教育 

マトリックス組織における効果的な働き方を理解するために、従業員に対するトレーニングと教育プログラムを実施します。これには、新しい指揮命令系統やコラボレーションの方法についての研修が含まれます。

コミュニケーションの強化 

新しい組織構造におけるコミュニケーション戦略を策定し、部門間およびプロジェクト間の情報共有を促進します。定期的な会議や進捗報告の制度を導入し、全員が最新の情報を共有できるようにします。

パイロットプロジェクトの実施 

全面的な導入の前に、パイロットプロジェクトを実施して、マトリックス組織の効果を検証します。これにより、潜在的な問題を特定し、改善策を講じることができます。

フィードバックと改善 

導入後、定期的にフィードバックを収集し、組織構造やプロセスを改善します。従業員の意見を取り入れ、必要に応じて調整を行います。

導入時の注意点

明確な役割分担 

役割と責任を明確に定義し、二重の指揮系統に伴う混乱を最小限に抑えます。各従業員が誰に報告すべきか、どのような権限があるかを明確にすることが重要です。

トップマネジメントの支持 

経営陣の支持と積極的な関与が欠かせません。トップマネジメントがマトリックス組織の価値を理解し、その導入をリードすることで、従業員の抵抗を減少させることができます。

コミュニケーションの強化

部門間およびプロジェクト間のコミュニケーションを強化し、情報共有の重要性を全員に理解させます。オープンなコミュニケーション文化を育成し、透明性を確保します。

コンフリクトマネジメント 

二重の指揮系統による潜在的な対立を管理するためのメカニズムを導入します。対立が発生した場合、迅速に解決できるようなプロセスを確立します。

柔軟性の確保

マトリックス組織は柔軟性を持つことが前提です。市場の変化やプロジェクトのニーズに迅速に対応できるように、組織の柔軟性を維持するための制度を整えます。

継続的な評価と改善 

マトリックス組織の導入が成功しているかどうかを継続的に評価し、必要に応じて改善を行います。定期的な評価を通じて、組織のパフォーマンスを最大化します。

マトリックス組織の導入は、組織の柔軟性と効率性を高めるための有効な手段ですが、その成功には慎重な計画と実行が不可欠です。明確な役割分担、トップマネジメントの支持、コミュニケーションの強化、コンフリクトマネジメント、柔軟性の確保、そして継続的な評価と改善が、マトリックス組織を効果的に運営するための鍵となります。

導入する際に確認しておきたいポイント

マトリックス組織を導入する際には、いくつかの重要なポイントを確認しておくことが成功の鍵となります。以下に、導入時に確認しておきたいポイントを説明します。

組織の目標と戦略の明確化

マトリックス組織の導入目的が組織全体の目標や戦略と一致しているかを確認します。組織が何を達成したいのか、どのようにマトリックス組織がそれを支援するのかを明確にすることが重要です。

経営陣のコミットメント 

トップマネジメントの強力なサポートとコミットメントが必要です。経営陣がマトリックス組織の価値を理解し、導入を推進する姿勢を明確に示すことで、組織全体に一貫したメッセージを伝えられます。

従業員の理解とサポート

従業員がマトリックス組織の導入の目的と利点を理解し、サポートすることが重要です。変化に対する抵抗を最小限にするために、従業員に対する十分な説明と教育を行います。

役割と責任の明確化 

各従業員の役割と責任を明確に定義し、二重の報告ラインによる混乱を避けます。特に、プロジェクトマネージャーと機能別マネージャーの権限と責任を明確にすることが重要です。

コミュニケーションの仕組み 

効果的なコミュニケーションの仕組みを構築します。定期的な会議や報告制度を導入し、部門間およびプロジェクト間での情報共有を促進します。オープンなコミュニケーション文化を育成し、透明性を確保します。

パフォーマンス評価と報酬制度の見直し 

マトリックス組織に適したパフォーマンス評価と報酬制度を見直します。従業員の成果が公正に評価され、適切な報酬が与えられるように制度を整備します。これにより、モチベーションを維持し、高いパフォーマンスを引き出します。

トレーニングとスキル開発 

従業員に対するトレーニングとスキル開発プログラムを実施します。マトリックス組織での効果的な働き方やコラボレーションの方法を学ぶ機会を提供し、組織全体のスキルレベルを向上させます。

リソースの適切な配分 

プロジェクトごとに必要なリソースを適切に配分し、リソース不足を防ぎます。リソースの配分が公平であり、組織全体の最適化が図られるように調整します。

コンフリクトマネジメントのメカニズム 

二重の報告ラインによる潜在的な対立を管理するためのメカニズムを導入します。対立が発生した場合、迅速かつ効果的に解決できるプロセスを確立します。

継続的なモニタリングと改善 

マトリックス組織の導入後、継続的にモニタリングを行い、フィードバックを収集します。必要に応じて組織構造やプロセスを改善し、導入の効果を最大化します。定期的な評価を通じて、成功要因と課題を特定し、組織全体で共有します。

マトリックス組織を導入する際には、これらのポイントを確認し、慎重に計画を進めることが重要です。組織の目標と戦略を明確にし、経営陣と従業員のサポートを得て、効果的なコミュニケーションとパフォーマンス評価の仕組みを構築します。また、リソース配分やコンフリクトマネジメントのメカニズムを整備し、継続的なモニタリングと改善を行うことで、マトリックス組織の導入を成功させることができます。

マトリックス組織の今後の課題

マトリックス組織は、複雑なプロジェクトや多様なビジネス環境に柔軟に対応するための効果的な組織形態ですが、導入後にはさまざまな課題が浮上することがあります。以下に、マトリックス組織の今後の課題について説明します。

指揮命令系統の複雑化

マトリックス組織の最大の課題は、二重の指揮命令系統による複雑化です。従業員は機能別の上司とプロジェクト別の上司の両方に報告しなければならないため、指示が重複したり、矛盾したりすることがあります。このような状況が続くと、従業員は混乱し、ストレスが増加する可能性があります。明確な役割分担とコミュニケーションの改善が必要です。

コミュニケーションの円滑化

複数の部門やプロジェクトチームが協力するマトリックス組織では、コミュニケーションが重要な要素となります。しかし、情報の伝達が遅れたり、誤解が生じたりするリスクがあります。これを防ぐためには、定期的なミーティングや情報共有の仕組みを整備し、オープンなコミュニケーション文化を育成することが重要です。

リソースの競争

マトリックス組織では、複数のプロジェクトが同時進行するため、リソース(人材、設備、資金)の競争が発生することがあります。特に重要なプロジェクトにリソースが集中し、他のプロジェクトが影響を受ける可能性があります。リソースの配分を公平かつ効率的に行うための仕組みを構築し、リソース管理を強化することが求められます。

意思決定の遅延

マトリックス組織は多くの関係者が関与するため、意思決定が遅れることがあります。特に緊急時や迅速な対応が求められる場合に、意思決定のプロセスが遅延すると大きな問題となります。意思決定の権限を明確にし、迅速な意思決定が行えるようなプロセスを整備することが必要です。

コンフリクトマネジメント

二重の指揮命令系統により、機能別上司とプロジェクト上司の間で対立が発生することがあります。これを効果的に管理するためのコンフリクトマネジメントの仕組みが不可欠です。対立が発生した場合、迅速に解決できるようなプロセスを導入し、組織全体での協力を促進する必要があります。

組織文化の変革

マトリックス組織の導入には、従来の組織文化を変革する必要があります。部門間の壁を越えて協力する文化や、オープンなコミュニケーションを奨励する文化を育成することが重要です。これには、従業員に対する教育やトレーニングプログラムの実施が含まれます。

パフォーマンス評価の見直し

マトリックス組織では、従業員が複数のプロジェクトに関与するため、従来のパフォーマンス評価制度が適さないことがあります。従業員の成果を公正に評価し、適切な報酬を提供するための新しい評価制度を導入する必要があります。これにより、従業員のモチベーションを維持し、高いパフォーマンスを引き出すことができます。

マトリックス組織は、効率的なリソース利用と柔軟な対応能力を提供する一方で、指揮命令系統の複雑化やコミュニケーションの課題など、さまざまな課題を抱えています。これらの課題を克服するためには、明確な役割分担、オープンなコミュニケーション、リソース管理の強化、迅速な意思決定のプロセス、効果的なコンフリクトマネジメント、組織文化の変革、そして新しいパフォーマンス評価制度の導入が必要です。これらの取り組みを通じて、マトリックス組織の利点を最大限に活かし、組織全体のパフォーマンスを向上させることができます。

まとめ

マトリックス組織は、複数の管理ラインを組み合わせることで、柔軟かつ効率的な運営を可能にする組織形態です。マトリックス組織の導入で、企業は組織力と効率をアップし、社員が複数の分野に挑戦できる体制を作ることができます。

企業にとって望ましい効果を期待できるマトリックス組織ですが、縦型組織と横型組織の2つを社内に持つことになるため、社員同士がコミュニケーションを取りやすい体制を整え、情報共有ができる仕組み作りが大切です。

指揮系統の複雑化や社員の負担増加などにはしっかりとケアを怠らず、マトリックス組織のデメリットを最小化しつつ、メリットを最大化できるように、社員の意見を取り入れながら、組織改革を目指しましょう。

監修者

髙𣘺秀幸
髙𣘺秀幸株式会社秀實社 代表取締役
2010年、株式会社秀實社を設立。創業時より組織人事コンサルティング事業を手掛け、クライアントの中には、コンサルティング支援を始めて3年後に米国のナスダック市場へ上場を果たした企業もある。2012年「未来の百年企業」を発足し、経済情報誌「未来企業通信」を監修。2013年「次代の日本を担う人財」の育成を目的として、次代人財養成塾One-Willを開講し、産経新聞社と共に3500名の塾生を指導する。現在は、全国の中堅、中小企業の経営課題の解決に従事しているが、課題要因は戦略人事の機能を持ち合わせていないことと判断し、人事部の機能を担うコンサルティングサービスの提供を強化している。「仕事の教科書(KADOKAWA)」他5冊を出版。コンサルティング支援先企業の内18社が、株式公開を果たす。

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