企業が成長し続けるためには、人事と労務の違いを理解し、適切に管理することが重要です。
本コラムでは、人事労務の役割や業務内容を解説し、労働環境の改善や経営戦略との関係性について紹介します。
適切な人事労務管理が企業の発展を支える仕組みを、一緒に考えましょう。
Contents
人事労務の重要性

企業経営において「人事労務」は欠かせない要素の一つです。人材の採用から育成、適正な労働環境の整備、そして従業員の働きがいを高める仕組みづくりまで、多岐にわたる業務が含まれます。適切な人事労務管理が行われることで、従業員の成果の向上や企業の持続的な成長が実現します。
ここでは、人事労務の重要性について詳しく解説します。
1.企業経営における人事労務の役割とは?
人事労務は、企業が継続的に成長するための「基盤」となる業務です。企業が競争力を維持・強化するためには、優れた人材を確保し、適切に管理し、成長を促す仕組みが不可欠です。特に、近年は働き方改革や多様な人材の活用が求められており、人事労務の役割はますます重要になっています。
人事労務の主な役割は以下の3つに集約できます。
1.労働環境の整備
- 労働基準法や労働安全衛生法などの法令に基づき、労働条件を適切に管理する。
- ハラスメント防止やメンタルヘルス対策を行い、従業員が安心して働ける環境を整備する。
2.人材の確保と育成
- 採用計画を立て、応募者の選考を進め、入社後の研修を行うことで、企業の成長を支える人材を確保する。
- キャリア形成支援や評価制度を整備し、従業員のモチベーションを高める。
2.労働生産性の向上
- 適切な労務管理を行い、労働時間の最適化や業務効率化を推進する。
- 評価制度や報酬制度を適正に運用し、成果に応じた処遇を実現することで従業員のエンゲージメント(会社や仕事への愛着や意欲)を高める。
2.人事労務の重要性が増している背景
近年、人事労務の重要性がより一層高まっています。その理由として、以下の3つが挙げられます。
1.労働環境の変化
働き方改革の推進により、長時間労働の是正や多様な雇用形態の活用が求められています。フレックスタイム制やリモートワークの導入が進む中で、労働時間の管理や評価基準の見直しが不可欠となっています。
2.人材不足と採用競争の激化
少子高齢化の影響で、優秀な人材の確保が難しくなっています。採用市場が厳しくなる中で、企業は魅力的な職場環境を提供し、優秀な人材を定着させるための施策を強化する必要があります。
3.従業員の働きがいとエンゲージメントの向上
従業員がやりがいを感じながら働くことは、組織の生産性向上につながります。適切な評価制度やキャリア支援を通じて、従業員のモチベーションを維持・向上させることが求められます。
人事労務は、企業が持続的に成長するために欠かせない要素です。適切な労務管理によって法令を遵守し、働きやすい環境を整備することで、従業員の定着率や生産性を向上させることができます。また、人材育成やキャリア支援を強化することで、企業の競争力を高めることも可能です。
今後の企業経営において、人事労務の重要性はさらに増していくでしょう。効果的な人事労務管理を実施し、従業員が安心して働ける環境を構築することが、企業の持続的な成長につながります。
人事の業務範囲

企業にとって「人材」は最も重要な資源の一つです。組織の成長や競争力の強化には、適切な人材の採用・配置・育成が欠かせません。これらを担うのが「人事」の役割です。人事の業務は多岐にわたり、単に採用を行うだけでなく、従業員が最大限の力を発揮できる環境を整えることが求められます。
以下では、人事の具体的な業務範囲について詳しく解説します。
1.人事の主な業務領域
人事の業務は、大きく以下の6つの領域に分けられます。
1.採用(新卒・中途・アルバイト)
企業が成長し続けるためには、適切な人材を確保することが不可欠です。そのため、人事部門は採用活動の計画から実施までを担当します。
- 採用計画の立案(年間の採用人数や求める人材の要件を決定)
- 求人広告の作成・掲載
- 応募者の選考(書類選考、面接、適性検査の実施)
- 内定者へのサポート(入社前研修、交流会の開催)
- 採用後の定着支援(新入社員のサポート・働きやすい環境づくり)
特に近年は、採用市場が激化しているため、自社の魅力を伝える工夫や、SNSを活用した採用活動も重要になっています。
2.配置・異動・昇進
入社後の従業員が適切な環境で能力を発揮できるようにするために、配置や異動、昇進の調整も人事の重要な業務の一つです。
- 配置・配属の決定(適性を考慮し、適切な部署・職務に配属)
- 異動の実施(組織のバランスを考慮し、適切なタイミングで異動を行う)
- 昇進・昇格の決定(評価制度に基づき、管理職やリーダー職への昇進を検討)
適切な配置や異動は、個人の成長だけでなく、組織の生産性向上にもつながります。
3.人材育成(研修・教育)
採用した人材が企業の成長を支えるためには、継続的な教育・研修が不可欠です。人材育成の具体的な業務には以下のようなものがあります。
- 新入社員研修(ビジネスマナーや社内ルールの習得)
- 階層別研修(若手・中堅・管理職向けのスキル研修)
- 専門スキル研修(技術系・営業系など業務に直結するスキル習得)
- OJT(On the Job Training:実際の業務を通じて指導やトレーニングを行い、従業員のスキル向上を図る仕組み)制度の設計と実施
- キャリア開発支援(自己啓発支援制度の導入)
特に近年では、リモートワークの普及に伴い、オンライン研修の導入や、AIを活用した個別学習の提供など、新しい育成手法も増えています。
4.評価制度の設計と運用
従業員のモチベーションを高め、適正な報酬や昇進を決定するためには、公正な評価制度が必要です。人事の業務としては、以下のようなものが挙げられます。
- 人事評価制度の設計(評価基準・評価項目の策定)
- 目標管理制度(MBO:Management by Objectivesの略で、従業員が自身の業務目標を設定し、その達成度を評価する制度)の運用
- 360度評価の導入(上司・同僚・部下など複数の視点から評価)
- 評価結果のフィードバック
評価制度が不透明だったり、納得感のない運用が行われると、従業員の不満につながり、離職率の上昇を招く可能性があります。そのため、透明性の確保や、評価結果の適切なフィードバックが重要になります。
5.報酬・福利厚生の管理
従業員の働く環境を整え、モチベーションを高めるためには、適正な報酬や福利厚生の提供も必要です。
- 給与制度の設計(基本給・賞与・成果に応じた報酬の設定)
- 福利厚生制度の整備(住宅手当、健康診断、企業年金制度など)
- 柔軟な働き方の導入(フレックスタイム制度、リモートワークの推進)
- 健康経営の推進(メンタルヘルスケア、ストレスチェックの実施)
特に、昨今ではワークライフバランスの充実が求められており、休暇制度の充実や、従業員の健康管理を支援する施策も増えています。
6.組織開発(組織文化の築く・エンゲージメント向上)
企業が成長するためには、単に個人の能力を伸ばすだけでなく、組織全体の活性化も欠かせません。組織開発の業務には以下のようなものがあります。
- 組織風土改革(働きやすい職場づくりの推進)
- 従業員エンゲージメントの向上施策(社内イベント、社内報の運営)
- ダイバーシティ&インクルージョンの推進(女性活躍推進、多様な働き方の支援)
組織の活性化は、従業員の定着率や生産性向上にも直結するため、企業の経営戦略とも密接に関係しています。
2.人事業務が適切に機能しないとどうなるか?
人事業務が適切に運用されない場合、以下のような問題が発生する可能性があります。
1.採用のミスマッチ
採用基準が曖昧で適性に合わない人材を採用してしまうと、早期離職につながります。
2.評価制度への不信感
公正な評価が行われないと、社員のモチベーションが低下し、離職率が上昇します。
3.組織の成長が停滞
育成が不十分だと次世代のリーダーが育たず、組織の成長が鈍化してしまいます。また、適切な評価制度がなければ従業員のやる気を引き出せず、結果として組織の成長が停滞してしまう恐れがあります。さらに、キャリア形成の支援が不足すると、優秀な人材の流出を招き、組織の発展に必要な人材が確保できなくなるリスクも高まります。
人事の業務は、採用・育成・評価・報酬・組織開発と多岐にわたります。企業の成長を支えるためには、適切な人事施策を設計し、従業員が最大限の力を発揮できる環境を整えることが重要です。
労務の業務範囲

企業が円滑に運営されるためには、従業員が安心して働ける環境を整備することが欠かせません。その役割を担うのが「労務」です。労務管理は、従業員の労働条件や法的な手続きを適正に管理し、働きやすい職場を実現することを目的としています。
以下では、労務の具体的な業務範囲について詳しく解説します。
1.労務の主な業務領域
労務の業務は、大きく以下の6つの領域に分けられます。
1.勤怠管理
従業員の労働時間を適正に管理し、労働基準法などの関連法規に違反しないようにすることが、労務管理の基本となります。
- 出退勤管理(タイムカード・ICカード・クラウドシステムなどの活用)
- 残業・休日出勤の管理(適正な労働時間の把握)
- 有給休暇の取得状況の管理(年5日の取得義務などの法令遵守)
- フレックスタイム・リモートワークの管理(多様な働き方に対応)
近年では、働き方改革に伴い、長時間労働の是正や労働時間の見える化が求められています。そのため、クラウド勤怠管理システムの導入が進んでいます。
2.給与計算と社会保険手続き
従業員の給与支給は、正確性が求められる重要な業務の一つです。計算ミスや手続きの遅れは、従業員の不満につながるため、慎重に行う必要があります。
給与計算
- 基本給・残業代・賞与の計算
- 住民税・所得税・社会保険料の控除
- 給与明細の発行と振込手続き
社会保険・労働保険の手続き
- 健康保険・厚生年金保険の加入・喪失手続き
- 雇用保険の加入・離職票の発行
- 労災保険の適用手続き
- 産休・育休の申請サポート
特に近年では、電子申請の活用が進み、労務管理の効率化が求められています。
3.労働契約と法令対応
従業員との雇用関係を適正に管理するためには、法的な知識が不可欠です。労働基準法をはじめとする各種労働関連法規に準拠しながら、適切な契約・手続きを行います。
- 労働契約書の作成・管理
- 就業規則の整備と改定(法改正への対応)
- 非正規雇用(パート・派遣・業務委託など)の契約管理
- 解雇や退職時の手続き(トラブル防止のための書類整備)
法令に適合しない契約や運用を行うと、労働基準監督署からの指導や、労働トラブルに発展するリスクがあるため、注意が必要です。
4.安全衛生管理
企業は、従業員の健康と安全を確保する責任を負っています。そのため、労務管理の一環として、安全衛生管理を徹底することが求められます。
労働安全衛生法に基づく取り組み
- 産業医の選任(常時50人以上の事業所で義務)
- 定期健康診断の実施と管理
- ストレスチェックの実施(従業員50人以上の事業所で義務)
- 労働災害防止対策(事故防止のための教育・研修)
メンタルヘルス対策
- 過重労働対策(長時間労働の抑制)
- ハラスメント防止対策(相談窓口の設置、研修実施)
- 休職・復職支援(メンタル不調者のサポート)
特に、労働環境の悪化は従業員のモチベーション低下や離職につながるため、労務部門は積極的に安全衛生管理に取り組む必要があります。
5.労使関係の調整
企業と従業員の間でトラブルが発生した場合、それを円滑に解決することも労務の重要な業務です。
- 労働組合との交渉(団体交渉の対応)
- 労働基準監督署への対応(是正勧告や監査)
- ハラスメント・労働紛争の対応(社内通報制度の運用)
トラブルを未然に防ぐためには、社内ルールを明確にし、定期的なコミュニケーションを取ることが重要です。
6.退職・解雇の管理
従業員が退職する際の手続きも、労務の業務範囲に含まれます。
- 退職手続き(離職票の発行、退職金の計算)
- 解雇手続き(不当解雇にならないよう適切な運用)
- 退職者フォロー(社内のノウハウ流出防止)
特に、不当解雇をめぐる訴訟リスクがあるため、解雇の際は就業規則や労働契約を厳密に確認することが求められます。
2.労務業務が適切に機能しないとどうなるか?
労務管理が適切に行われない場合、以下のような問題が発生する可能性があります。
1.長時間労働・未払い残業
適正な勤怠管理が行われないと、違法な長時間労働や未払い残業が発生し、労働基準監督署からの指導や罰則を受ける可能性があります。さらに、労働時間や業務量の管理が適切に行われなければ、業務のムダが増え、生産性が低下するだけでなく、労働基準法違反による未払い残業問題が発生し、企業の信用も大きく損なわれる恐れがあります。
2.社会保険・給与計算ミス
給与計算や社会保険の手続きミスが発生すると、従業員の信頼を損なうだけでなく、企業が追加納付を求められることもあります。
3.ハラスメント・労務トラブル
労使関係が適切に管理されないと、ハラスメントやパワハラ、セクハラの問題が発生し、企業の評判に悪影響を及ぼします。さらに、これらの問題が適切に対処されなければ、訴訟リスクの増大や社会的評価の低下につながる恐れがあります。
4.メンタルヘルス不調者の増加
ストレスチェックや健康管理が不十分だと、メンタルヘルス不調者が増加し、休職・離職のリスクが高まります。
労務管理は、従業員の労働環境を整え、企業が法令を遵守しながら円滑に運営されるために不可欠な業務です。勤怠管理や給与計算、安全衛生管理、労使関係の調整など、労務の役割は幅広く、さまざまな分野に及びます。
適切な労務管理が行われることで、企業のリスクを軽減し、従業員が安心して働ける職場を実現できます。企業の成長と従業員の満足度向上のために、労務業務の適正な運用が求められます。
人事と労務を分けておく必要はあるのか

企業における「人事」と「労務」は、どちらも従業員に関する業務を担当する部門ですが、それぞれの役割には大きな違いがあります。
人事は「採用・配置・育成・評価」など、組織を成長させるための戦略的な業務を担い、労務は「労働時間管理・給与計算・社会保険手続き」など、従業員が働くための環境を適切に管理する役割を果たします。
このような違いを踏まえ、企業にとって 人事と労務を分けることが必要なのか? それとも一体化して運営する方がよいのか? 本記事では、その点について詳しく解説します。
1.人事と労務の業務内容の違い
人事と労務を分ける必要性を考えるためには、まず両者の業務内容を明確にしておくことが重要です。以下に、ここまで紹介してきた人事と労務の業務についてまとめました。
人事の主な業務
人事の業務は、 企業の成長や組織の強化に関わる戦略的な業務 が中心となります。
- 採用活動(新卒・中途・アルバイトの募集、選考、内定者のサポート)
- 人材配置・異動・昇進の決定
- 人材育成(研修・教育制度の設計)
- 評価制度の設計・運用
- 組織開発(エンゲージメント向上、企業文化を築く)
人事の業務は「企業の未来を見据えた人材戦略」を実行することが求められます。
労務の主な業務
一方、労務の業務は、 法令を遵守し、従業員が安心して働ける環境を整える業務 です。
- 勤怠管理(出退勤の記録、残業時間の管理、有給休暇の管理)
- 給与計算(基本給、残業代、賞与の計算と支払い)
- 社会保険・労働保険の手続き
- 労働契約の管理(契約書の作成・更新・解雇手続き)
- 安全衛生管理(健康診断、ストレスチェック、労災対応)
労務は、「適正な労働環境の維持」と「法令遵守」を重視し、組織の基盤を整える役割を担います。
2.人事と労務を分けるメリット
人事と労務を分けて運営することには、いくつかのメリットがあります。
1.専門性の向上
人事と労務の業務は、それぞれ異なる専門知識を必要とします。
- 人事 は、採用戦略や人材育成、組織開発の知識が求められます。
- 労務 は、労働基準法や社会保険制度などの法令に関する知識が不可欠です。
両者を分けることで、各分野の専門性を高めることができ、企業の人事・労務管理の精度が向上します。
2.業務負担の分散
企業規模が大きくなるほど、人事と労務の業務量は増加します。
もし、すべての業務を一つの部門で管理しようとすると、担当者の負担が過剰になり、ミスが発生する可能性が高まります。
たとえば…
- 採用活動が忙しい時期(新卒採用シーズン)に、給与計算の締め切りが重なると、どちらかの業務が疎かになる。
- 労務管理に関する法改正があった際、人事の業務と並行して対応すると、情報収集や手続きが遅れる可能性がある。
このような負担を避けるためにも、業務を分けることで効率的に対応できるようになります。
3.コンプライアンス(法令遵守)の強化
労務の業務では、法令違反が発生すると、企業に大きなリスクが伴います。
たとえば…
- 残業代の未払いが発生 → 労働基準監督署の指導、未払い分の追加支給
- 社会保険手続きの遅れ → 従業員の保険未加入、罰則の発生
- ハラスメント問題の対応遅れ → 訴訟リスクの増大
人事と労務を分けることで、 労務管理を専門的に行う担当者を配置し、法令違反を防ぐ体制を強化する ことができます。
3.人事と労務を統合するメリット
一方で、人事と労務を統合することで得られるメリットもあります。
1.連携がスムーズになる
人事と労務は、業務上、密接に関係しています。
- 採用した従業員の入社手続き → 社会保険の加入
- 異動・昇進の決定 → 給与計算への反映
- 評価制度の変更 → 賃金体系の見直し
これらの業務をスムーズに連携させるために、一つの部門で管理することで 情報共有がスピーディーに行われる というメリットがあります。
2.コスト削減
人事と労務を分けると、専門の担当者をそれぞれ配置する必要があるため、人件費が増加する可能性があります。
小規模な企業では、一人の担当者が 「人事・労務を兼任」 することでコストを抑えるケースが一般的です。
4.人事と労務を分けるべき企業、統合するべき企業
人事と労務を分けるべき企業
- 従業員数が100人以上 の企業
- 採用活動・人材育成に注力 したい企業
- 法令遵守を徹底 し、労務管理を強化したい企業
大企業では、専門性を高め、リスクを分散させるために 人事と労務を分けるのが一般的 です。
人事と労務を統合すべき企業
- 従業員数が100人以下 の中小企業
- 人事・労務の業務量が少ない 企業
- コスト削減を優先 する企業
中小企業では、一人の担当者が 「採用・育成・給与計算・勤怠管理」 をまとめて行うことが多く、統合することでスムーズに運営できます。
人事と労務を分けるべきかどうかは、企業の規模や業務量によって異なります。
大企業 → 人事と労務を分けて、専門性を高める
中小企業 → 統合して、業務の効率化を図る
企業の成長に合わせて 適切な人事・労務体制を整えることが重要 です。
関連コンテンツ
人事労務管理と経営戦略の関係性

企業が成長し、競争力を高めるためには、優れた経営戦略が不可欠です。しかし、どれほど優れた戦略を立てたとしても、それを実行するのは「人」です。組織の成功を左右するのは、そこに所属する人材であり、その人材を適切に管理し、活かすための仕組みが「人事労務管理」です。
ここでは、 人事労務管理が経営戦略に与える影響 について詳しく解説し、企業の成長と成功を実現するために、人事と労務の適切な運用がいかに重要か、ということについて考えていきます。
1.経営戦略とは?
経営戦略とは、企業が 持続的に成長し、競争優位を確立するための方針や計画 を指します。具体的には、以下のような要素が含まれます。
- 市場でのポジショニングの決定(どの顧客層をターゲットにするのか)
- 競争優位性の確立(他社と差別化できる強みを持つ)
- 利益の最大化とコスト削減(事業の効率化と収益性向上)
企業の経営戦略が成功するかどうかは、多くの場合、 計画そのものよりも、それを実行する「人材」の力に依存 しています。つまり、 どれだけ優れた戦略を持っていても、人事労務管理が機能しなければ成功は難しい のです。
2.人事労務管理が経営戦略に与える影響
企業が成長し、競争力を維持するためには、人材を適切に管理し、最大限の力を発揮できる環境を整えることが不可欠です。ここで 人事と労務がどのように経営戦略と関わるのか を具体的に見ていきます。
1.人材の採用と戦略的配置
経営戦略を実現するには、 適切な人材を確保し、適切な役職や担当業務に配置する必要があります。
たとえば、新規事業を立ち上げる場合、それに適したスキルや経験を持つ人材を採用し、適切に配置することが成功の鍵を握ります。
人事労務管理が果たす役割
- 採用計画の策定(必要な人材を特定し、適切な採用活動を実施)
- 配置と異動の最適化(適材適所の実現)
- 人材の定着支援(離職率の低減とエンゲージメントの向上)
成功事例
ある企業では、デジタル化戦略を進めるために ITスキルのある人材を積極的に採用 し、既存社員にはデジタル研修を実施。その結果、事業のデジタル化がスムーズに進み、競争力が向上した。
2.人材育成と組織の成長
経営戦略を実行するためには、 社員のスキル向上とリーダー育成 が欠かせません。優れた人材を確保したとしても、適切な育成が行われなければ、企業の成長は頭打ちになります。
人事労務管理が果たす役割
- 研修プログラムの導入(新入社員研修、管理職研修、専門スキル研修)
- キャリアの道筋の整備(社員の成長機会の提供)
- モチベーション管理(評価制度の適正化、報酬制度の見直し)
成功事例
ある製造業の企業では、次世代リーダーを育成するための研修を強化。管理職候補を計画的に育成することで、事業拡大時のリーダー不足を防ぐことができた。
3.労働環境の整備と生産性向上
経営戦略の実行には、生産性の向上が不可欠です。そのためには、 労働環境を整備し、従業員が最大限のパフォーマンスを発揮できる状態を作ること が重要です。
人事労務管理が果たす役割
- 労働時間の適正管理(過重労働の防止、フレックスタイムの導入)
- 給与・福利厚生の適正化(従業員の満足度向上)
- ハラスメント対策・メンタルヘルスケア(職場環境の改善)
成功事例
ある企業では、労働時間の見直しとリモートワーク制度を導入したことで、社員のストレスが軽減され、パフォーマンスが向上。結果的に、売上高が前年比20%増加した。
4.組織文化とエンゲージメントの向上
企業文化は、経営戦略の実行に大きな影響を与えます。 組織の一体感が強く、エンゲージメントの高い職場ほど、戦略の成功率が高くなる ことが知られています。
人事労務管理が果たす役割
- 組織のビジョン(企業が目指す未来の姿や理想像)・ミッション(企業が果たすべき役割や使命)の浸透
- コミュニケーションの活性化(社内イベント、1on1ミーティングの実施)
- ダイバーシティ&インクルージョンの推進(多様な人材を活かし、誰もが能力を最大限発揮できる職場環境を作ること)
成功事例
ある企業では、経営層と従業員の対話を重視し、定期的なミーティングを実施。組織のビジョンが明確になり、社員のエンゲージメントが向上したことで、離職率が大幅に低下した。
3.組織を成功に導くのは「人」
最終的に、企業の成功を決定づけるのは「戦略」ではなく「人」です。どれほど優れた経営戦略を策定しても、それを実行するのは従業員であり、従業員が最大限の力を発揮できる環境を整えることが経営の最重要課題となります。そのため、人事労務管理の質を高め、組織の成長を支える仕組みを整えることが、経営の成否を左右する要因となるのです。
経営戦略の成功には、人事労務管理が不可欠であり、適切な人材採用・育成、労働環境の整備、組織文化の形成が企業の競争力を高める重要な要素となります。人材を適切に管理し、活かすための人事と労務が経営戦略に与える影響は非常に大きく、企業の成長を支えるためには、それらを最大限に活用することが重要です。
関連コンテンツ
人事労務管理で起こる可能性のある失敗

人事や労務の業務には多くの要素が関わるため、適切に管理できていないと 組織全体の生産性低下や社員のモチベーション低下、法的リスクの発生 につながることがあります。
以下では、 人事労務管理で起こる可能性のある主な失敗 を取り上げ、それによる影響や解決策について詳しく解説します。
1.採用のミスマッチ
企業の成長に欠かせないのが「人材の確保」ですが、 採用計画の不備や適切な選考の進め方が決まっていないと、企業に合わない人材を採用してしまうことがあります。
- 求人要件が曖昧で、必要なスキルや経験が明確でない
- 面接官の評価基準が統一されておらず、適切な人材が選ばれない
- 企業文化に合わない人材を採用し、早期離職につながる
影響
- 早期離職の増加 により、採用コストが無駄になる
- 社内のチームワークが乱れ、業務の生産性が低下
- 採用ブランドの低下(「離職率が高い企業」と認識される)
解決策
- 採用基準を明確にし、適性検査や行動面接を導入
- 面接官のトレーニングを実施し、評価基準を統一
- 採用後のオンボーディング(新入社員の早期定着支援)を強化
2.人事評価の不透明さ
人事評価は、社員のモチベーション向上や能力開発につながる重要な制度ですが、 評価基準が不明確 だったり、 評価者の思い込みや個人的な好み が影響すると、不公平な評価になりやすくなります。
- 評価基準があいまいで、社員が何を基準に評価されるのか分からない
- 上司の好みや主観に左右され、納得感のない評価がされる
- フィードバックが適切に行われず、社員の成長につながらない
影響
- 社員のモチベーション低下(「評価に納得できない」と感じる)
- 優秀な人材の流出(「適正に評価されない会社」と見なされる)
- 職場の不満が増加し、エンゲージメントが低下
解決策
- 360度評価(複数の視点からの評価)を導入し、評価の公平性を向上
- 明確な評価基準と手順を設計し、社員に事前説明を行う
- フィードバック面談を定期的に実施し、成長支援の場を設ける
3.労務管理のミス(勤怠・給与計算・社会保険)
労務管理では、 給与計算のミスや勤怠管理の不備、社会保険手続きの遅れ などの問題が発生することがあります。
- 勤怠管理が適切に行われず、サービス残業が発生
- 給与計算のミスにより、従業員の信頼を損なう
- 社会保険手続きの遅れにより、社員に不利益が生じる
影響
- 労働基準監督署の指導や是正勧告を受ける可能性
- 従業員のモチベーション低下(給与や手続きミスは信頼問題につながる)
- 訴訟リスクの増加(未払い賃金の請求など)
解決策
- 勤怠管理システムを導入し、労働時間を正確に記録
- 給与計算を自動化し、ミスを防ぐ(社労士の確認を取り入れる)
- 社会保険の手続きを電子申請化し、迅速な対応を行う
4.ハラスメントや労務トラブルの対応遅れ
企業がハラスメント問題や労務トラブルに適切に対応できていないと、 職場環境の悪化 や 企業の評判低下 につながります。
- ハラスメントの相談窓口が整備されていない
- 労務トラブルが発生しても、適切な対応が取れない
- 企業の対応が遅れ、社員が外部機関(労働基準監督署・弁護士)に相談
影響
- 職場環境の悪化(社員が安心して働けなくなる)
- 訴訟リスクの増加(企業の対応に問題があると法的責任が発生)
- 採用ブランドの低下(「働きにくい会社」と認識される)
解決策
- ハラスメント防止のための研修を実施し、全社員に周知
- 労務トラブルの相談窓口を設置し、早期解決を図る
- 企業のコンプライアンス強化のため、就業規則を適宜見直す
5.組織文化・エンゲージメントの低下
企業が 社員のエンゲージメント(組織への貢献意欲)を軽視 すると、組織の活力が失われ、成長が鈍化することがあります。
- 経営層と現場社員のコミュニケーション不足
- 組織のビジョン・ミッションが共有されていない
- エンゲージメント向上の施策が不十分(社内イベント、1on1の実施不足)
影響
- 社員のモチベーション低下(組織の方向性が見えない)
- 優秀な人材の離職(成長の機会を感じられない)
- 業績の低下(エンゲージメントが低い組織は生産性が下がる)
解決策
- 経営層が積極的にビジョン・ミッションを発信
- 社員との対話を増やし、定期的な1on1ミーティングを実施
- エンゲージメント向上のため、福利厚生や評価制度の見直しを行う
これらの失敗を防ぐためには、 適切な人事・労務戦略を構築し、組織全体で仕組みを整えること が重要です。
最終的に、 人事労務管理の質が、企業の成長と社員の働きやすさを決定づける のです。
人事労務管理の本質とは
企業が成長し続けるためには、 「人」の力を最大限に活かすこと が欠かせません。そのための基盤となるのが 人事労務管理 です。
本コラムでは、人事と労務の役割の違いや、経営戦略との関係、管理上の課題について解説しました。人事は、組織の成長を支える「攻め」の役割を担い、労務は、働く環境を守る「守り」の役割を果たします。 どちらも企業経営にとって不可欠であり、適切に機能することで、社員一人ひとりが力を発揮できる環境が生まれます。
また、人事労務管理がうまくいかないと、 不公平な評価、採用のミスマッチ、労務トラブル、ハラスメント問題 など、企業全体のパフォーマンスを下げる要因になりかねません。逆に、適切な管理が行われれば、社員のモチベーションが高まり、組織全体の生産性向上につながります。
最終的に企業の成長を決めるのは「人」です。 その人材が安心して働ける環境を作り、能力を最大限発揮できる仕組みを整えることが、企業の未来を左右する重要な要素になります。
今後の企業経営において、人事労務管理の重要性はますます高まるでしょう。適切な制度設計と運用を通じて、 「社員が活躍できる組織づくり」こそが、企業の持続的成長につながる という視点を忘れずに、日々の業務に取り組んでいきましょう。
監修者

- 株式会社秀實社 代表取締役
- 2010年、株式会社秀實社を設立。創業時より組織人事コンサルティング事業を手掛け、クライアントの中には、コンサルティング支援を始めて3年後に米国のナスダック市場へ上場を果たした企業もある。2012年「未来の百年企業」を発足し、経済情報誌「未来企業通信」を監修。2013年「次代の日本を担う人財」の育成を目的として、次代人財養成塾One-Willを開講し、産経新聞社と共に3500名の塾生を指導する。現在は、全国の中堅、中小企業の経営課題の解決に従事しているが、課題要因は戦略人事の機能を持ち合わせていないことと判断し、人事部の機能を担うコンサルティングサービスの提供を強化している。「仕事の教科書(KADOKAWA)」他5冊を出版。コンサルティング支援先企業の内18社が、株式公開を果たす。
最新の投稿
1 組織戦略・マネジメント2025年2月7日組織論が果たす役割とは?
2 人事評価制度2025年1月5日人事異動の内示を正しく伝える方法を解説!トラブル回避のポイントとは?
2 人事評価制度2025年1月3日人事異動の決め方とは?成功のためのポイントを解説
5 部下指導・育成2024年12月31日リスキリングとは?社員研修における研修解説
コメント