人事考課における目標が思いつかないあなたへ 明確な設定例と実用ポイントについて紹介します。

1 組織マネジメント

会社での人事考課において、目標設定に苦労しているあなたへ。なぜ目標が思いつかないのか、その原因と解決策、さらに適切な目標を設定するための重要ポイントについて紹介します。評価基準や手法も合わせて解説し、仕事の成果を向上させるヒントを提供します。

Contents

人事考課とは

人事考課(Performance Appraisal)は、組織内で従業員の成果を評価し、フィードバックを提供する過程です。これは、組織の目標達成に貢献する従業員の働きに対する、評価と改善を促進するために使用されます。以下に、人事考課の主要な要点と目的について詳しく説明します。

目的

人事考課の主な目的は、以下の点を達成することです。

従業員の業績を評価し、フィードバックを提供して、成果を最大化する。
従業員の強みと成長の領域を特定し、キャリア開発を支援する。
組織の目標と価値観に合致する行動と成果を促進する。
報酬、昇進、トレーニング、資源の割り当てなどの人事決定をサポートする。
公平かつ公正な人事査定を通じて、全ての従業員に対して平等な評価を保証する。
戦略人事や組織開発に役立てることで、組織全体の効率と効果を向上させる。

手順

人事考課の過程は、通常、次のステップで実施されます。

1.人事評価制度の策定組織の目標と従業員の期待に基づいて、人事評価の枠組みと基準を確立します。この段階で、評価の方法、使用するツール、評価の頻度などが定められます。
2.目標設定従業員と上司が業績目標と期待を共有・合意します。この目標は、個人の職務内容に直結すると同時に組織の全体的な目標にも寄与するよう設計されます。
3.業績評価定期的な評価期間中に、従業員の業績が評価されます。この段階では、事前に設定された基準に基づいて、従業員の業績を客観的に測定します。
4.フィードバック上司が従業員に対して成果に関するフィードバックを提供します。このフィードバックは、具体的で建設的なものでなければならず、従業員が自己改善を図るための指針を提供します。
5. 評価結果の文書化業績評価結果や改善計画などが文書化されます。これにより、従業員の成長記録を追跡し、将来の評価に参照情報として活用できます。
6.評価面談上司と従業員が業績評価に関する対話を行います。この面談では、評価結果に基づいて具体的なフィードバックが提供され、従業員と上司が共に改善点について話し合います。
7.改善計画の策定従業員の成長をサポートするために、具体的な改善計画が策定されます。この計画には、必要なトレーニング、指導、その他の支援措置が含まれることがあります。

人事評価制度の策定

人事評価制度の策定は、従業員の成果と能力を公平に評価し、それに応じた報酬を提供するための基盤を作ります。組織においては、評価制度報酬制度等級制度の三つの人事制度との一貫性と連動が求められます。これら三つの制度を適切に連携させることで、効果的な人事管理が実現し、組織の目標達成に貢献します。

1.評価制度

評価制度は、従業員の業績や行動を定期的に評価し、その結果を記録するシステムです。この制度の主な目的は、個々の従業員の成果と努力を認識し、正確なフィードバックとキャリアの進展を促進することにあります。評価の基準は明確で一貫性がある必要があり、すべての従業員が公平に評価される環境を保証します。

3.報酬制度

報酬制度は、評価結果に基づいて従業員に対する金銭的な報酬や福利厚生を決定します。この制度は、モチベーションの向上、才能の獲得と保持、そして組織への忠誠心を高めるために重要です。報酬制度は、評価制度で得られたデータに密接に依存しており、業績が良い従業員には高い報酬を提供することで、正当な評価となるよう設計されています。

3.等級制度

等級制度は、従業員をその職務内容、責任の範囲、及び技能レベルに応じて分類します。各等級は明確な資格基準に基づいており、昇進や職業上の進路の道筋を提供するために使用されます。この制度は、従業員がキャリアの各段階で何を期待されているかを明確にし、評価制度と報酬制度の基準を提供します。

連動の重要性

これら三つの制度は、互いに影響を及ぼし合います。評価制度が公正で透明性が高いことで、報酬制度と等級制度の信頼性が保証され、従業員の満足度と組織に対する責任感が向上します。

人事評価制度を策定する際には、これらの制度が互いに補完し合うように設計する必要があります。たとえば、評価制度で高い評価を受けた従業員が適切な報酬と認識される等級への昇進を期待できるようにすることが重要です。

人事評価制度の策定は、単にルールや基準を設けるだけでなく、組織文化と密接に結びついた戦略的な取り組みであるべきです。これらの制度を適切に統合し、従業員と組織の双方がその利益を最大限に享受できるようにすることが、成功への鍵となります。

継続的な過程

人事考課は一度だけのイベントではなく、継続的な過程として実施されます。定期的な評価とフィードバックを通じて、従業員の業績を維持し向上させるための機会が提供されます。


人事考課は組織と従業員の両方にとって重要な過程であり、成果の向上、キャリアの発展、組織の目標達成に寄与します。その適切な実施には、評価基準の明確化、フィードバックの提供、公平性と透明性の確保が不可欠です。

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人事考課と人事評価の違い

人事考課(Performance Appraisal)と人事評価(Performance Evaluation)は、組織内で従業員の成果を評価し、改善するための過程です。これらの用語はしばしば同じような意味で使用されますが、微妙な違いがあります。以下で、それらの違いを詳しく説明します。

目的

人事考課従業員の過去の業績を評価し、フィードバックを提供することを主な目的とします。これは、従業員が過去の業績を振り返り、個人的な成長と職務の改善に役立つ情報を提供するのに役立ちます。
人事評価従業員の将来の業績を評価し、組織全体の目標や戦略に合わせて資源の配置や報酬決定に影響を与えることを主な目的とします。組織の戦略的目標を達成するために、従業員の適性を判断するのに役立ちます。

時間枠

人事考課通常、年次評価として実施され、過去の一年間の成果を評価します。従業員と管理者は、従業員の成績と改善点に焦点を当てます。
人事評価中期的または長期的な目標を考慮に入れることが多く、組織の方向性に合わせて数年にわたって行われることがあります。将来の成果や成長の見込みを評価するのに役立ちます。

基準

人事考課主に個人の成果に焦点を当て、過去の成績、目標の達成度、スキル、貢献度などを評価します。個人の強みや弱みに関連するフィードバックが提供されます。
人事評価組織の戦略的ニーズと従業員の適性を照らし合わせ、従業員の成長の可能性と役割の適合度を評価します。部門やプロジェクトの成功に貢献できるかどうかを考慮に入れます。

影響と決定

人事考課結果は、主に従業員自身の成長と開発に影響を与えます。フィードバックを受けて、従業員はスキルの向上や不足分の改善に取り組むことが期待されます。
人事評価結果は、組織の意思決定に影響を与えます。報酬の調整、昇進、プロジェクトへの参加、あるいは解雇などの重要な人事決定に関連しています。

過程の性質

人事考課比較的短期的で具体的なフィードバックを提供します。従業員と管理者が一緒に働いて、具体的な改善計画を策定し、成長を促進します。
人事評価戦略的な過程であり、組織の長期的な理想と目標に合致するように従業員の配置や発展を計画するための大局的な視点を提供します。

以上の違いからも分かるように、人事考課と人事評価は両方とも従業員の成果に焦点を当てていますが、異なる取り組みを持っています。人事考課は主に過去の成果に焦点を当て、人事評価は将来の成長可能性も含めた広い視野で評価を行います。

組織はこれらの過程を適切に統合し、従業員の成長と組織の成功を両立させることが求められます。

人事考課の代表的な評価基準

評価基準は組織によって異なることがありますが、一般的に代表的な評価基準を以下に示します。

目標達成度従業員の主要な業務成果や目指すべき点に対する達成度は、評価の重要な要素です。従業員が設定された目標を達成し、成果を出すかどうかが評価されます。目標は個人の役割や責任に基づいて設定され、明確に定義される必要があります。
職務遂行能力従業員の職務遂行能力は、彼らが日常業務をどれだけ効果的に遂行しているかを評価する基準です。仕事の品質、効率性、正確性、時間の管理と有効活用のスキル、問題解決能力などが考慮されます。
コミュニケーションスキルコミュニケーションスキルは、従業員が他のチームメンバーや上司、顧客と効果的にコミュニケーションをとる能力を評価します。クリアで効果的なコミュニケーションは、組織内外での協力と情報共有に重要です。
リーダーシップ能力上級職の従業員に対しては、リーダーシップ能力が評価されます。リーダーシップには、チームの指導、目標達成への貢献、他の従業員の育成などが含まれます。
創造性と主体性従業員が新しいアイデアを持ち、問題解決のために主導的な役割を果たすかどうかが評価されます。創造性と主体性は、組織の成長と革新に不可欠です。
チームプレイヤーと協力チーム内での協力と協調性は、多くの組織で評価基準の一部です。従業員が他のメンバーと協力し、チーム目標の達成に貢献する姿勢が重要です。
自己向上心と学習能力組織は、従業員が自己向上心を持ち、新しいスキルや知識を習得し、成長し続けることを評価します。学習能力と成長意欲は、変化する環境に適応するために重要です。
プロ意識と倫理従業員のプロ意識、倫理観、ルールや規則への遵守が評価の対象となります。組織の価値観と一致した行動が重要です。
顧客対応顧客対応のポジションにいる従業員には、顧客満足度とサービス品質が重要な評価基準です。顧客のニーズを理解し、適切に対応する能力が評価されます。
プロジェクト管理能力プロジェクト管理のスキルは、プロジェクトリーダーやプロジェクト関連の役割を担当する従業員に対して評価されます。プロジェクトの計画、実行、監視、完了における能力が重要です。

評価基準は、目標達成度からプロジェクト管理能力に至るまで、多岐にわたります。これらの基準を活用することで、従業員一人一人の職務遂行の効果性、コミュニケーション能力、チームでの協働性、創造性、リーダーシップといった多面的な側面が総合的に評価されます。

組織の目標と密接に連携したこれらの評価基準により、個々の従業員だけでなく、組織全体の成長と発展を促進することが可能です。人事考課を効果的に実施することは、組織の持続可能な成功に向けた重要なステップです。

人事考課に使える評価手法

従業員の成果と潜在能力を把握し、組織全体の生産性をアップするための手段として、多様な評価手法が導入されています。しかし、これらの手法がどのように機能し、効果的に活用するためのポイントは何か、明確に理解できている経営者や人事担当者は意外に少ないのが現実です。

本記事では、各評価手法の特徴と効果的な利用方法について解説します。各手法の長所と短所をバランス良く取り上げ、あなたの企業に最適な人事評価戦略を見つけ出すお手伝いをします。ここでおすすめの評価手法を紹介し、仕事の成果を向上させるヒントを提供します。

定量評価(Quantitative Evaluation)

定量評価は、数値に基づいて従業員の成果を評価する手法です。この手法では、目標設定やKPI(Key Performance Indicator、主要業績評価指標)を使用して、成果物や業績を数値化し、従業員の達成度を評価します。KPIとは、組織の重要な目標達成に寄与する具体的な業績の指標であり、通常、売上、顧客満足度、生産性などの要素を含みます。

従業員の目標達成率や生産性、売上成績などの数値データを元に評価を行います。定量評価は客観的で公平な評価を提供することができますが、主観的な要因を考標する必要があります。

グラフィカルレーティングスケール(Graphic Rating Scale)

グラフィカルレーティングスケールは、従業員のスキルや特性を評価する際に使用される一般的な手法です。評価者は、あらかじめ定義された項目や特性に対して、スケール(例:1から5の評価)を使用して評価を行います。

これにより、評価者は各項目について従業員の成果を視覚的に表現することができます。グラフィカルレーティングスケールは簡単に導入でき、評価の一貫性を高める助けになります。

マネージャー評価(Manager Evaluation)

マネージャー評価は、直属の上司または管理者が従業員の成果を評価する手法です。上司は従業員の仕事の品質、コミュニケーション能力、リーダーシップ、協力性などを評価します。

この評価手法は、直接の監督者の視点から評価を受けるため、フィードバックや改善点を得る機会を提供します。ただし、主観的な側面が強調される可能性があるため、公平性を確保するためにトレーニングが必要です。

360度フィードバック(360-Degree Feedback)

360度フィードバックは、従業員を評価する際に、上司、同僚、部下、顧客など、異なる利害関係者からのフィードバックを取り入れる手法です。これにより、従業員は多角的な視点から評価され、自己成長の機会を提供します。一方で、フィードバックの収集と処理に時間と資源がかかることがあります。

成果物評価(Results-Oriented Evaluation)

成果物評価は、従業員が達成した成果物やプロジェクトの品質と量を評価する手法です。具体的なプロジェクトや作業において、従業員がどれだけ効果的に成果を出したかを評価します。成果物評価は特に数値による成果が明確な場合に有効であり、目標達成率を測定する際にも役立ちます。

行動評価(Behaviorally Anchored Rating Scales:BARS)

行動評価は、従業員の具体的な行動や行動パターンを評価するための手法です。評価者は、特定の行動が定義されたスケールを使用して、従業員の行動を評価します。これにより、主観的な評価を具体的な行動に基づいて行うことができ、フィードバックをより具体的にすることができます。

チーム評価(Team Evaluation)

チーム評価は、従業員の協力、チームワーク、協働能力を評価する手法です。従業員がチームプロジェクトにどれだけ貢献し、他のメンバーと協力しているかを評価します。これは特にチームワークが重要な場合に有効です。

自己評価(Self-Assessment)

自己評価は、従業員が自身の成果を評価する手法です。従業員は自分の強みや弱みを認識し、自己評価を通じて自己成長の機会を見つけることができます。自己評価は他の評価手法と組み合わせて使用されることがあります。

ポテンシャル評価(Potential Assessment)

ポテンシャル評価は、従業員の将来の成長と発展の可能性を評価する手法です。従業員のリーダーシップスキル、学習能力、新たな貢献への意欲などを評価します。組織の将来のリーダーや重要な人物を特定するのに役立ちます。


これらの評価手法を適切に組み合わせることで、従業員の多面的な評価が可能となり、組織の成果向上に繋がります。各手法の選択と適用は、組織の目的や文化、従業員のニーズに応じて慎重に行う必要があります。

組織の目標や文化に合わせて選択し、適切なトレーニングとガイダンスを提供することで、人事考課の過程を強化し、従業員のモチベーションと成長を促進するのに役立ちます。また、公平で透明な評価過程を確立することも大切です。

人事考課における「目標設定」

人事考課では、従業員の能力開発と組織の成果向上を図るために「目標設定」が欠かせません。目標設定とは、具体的な成果や行動を定める過程であり、従業員自身が自らの業務に対して明確な指針を持ち、動機づけを高めることができる手法です。

1.目標設定の意味

目標設定の意味とその核心

目標設定の基本的な意義は、従業員が自身の職務において取り組むべき具体的な行動や成果を明確にすることにあります。この明確化により、従業員は自分の業務を通じて何を目指すべきか、どのような成果が期待されているかを具体的に理解し、日々の業務における指針を得ることができます。また、この過程で従業員が自己の役割や責任について深く考えることが求められます。

目標設定は単なる業務の指示ではなく、従業員が自己の役割と責任を自覚し、それに基づいて行動するための基盤を提供します。

SMART原則に基づく目標設定

目標はSMART原則(具体的で、測定可能で、達成可能で、関連性があり、時間的に限定されている)に基づいて設定されることが一般的です。

これらの特性を持つ目標は、従業員にとって達成が現実的であり、モチベーションを維持しやすくします。また、目標達成のための期限が設定されているため、時間管理や優先順位の設定が容易になり、効率的な業務遂行が可能になります。


このように、目標設定の過程は、従業員が自己の業務目標に対する意識を高め、積極的に職務に取り組むための重要な要素です。具体的で測定可能、達成可能で関連性があり、時間的に限定された目標は、従業員が自身の成果を明確に把握し、組織全体の成果向上に寄与するための強力な手段となります。

2.目標設定をするメリット

自己評価と自己成長の機会

目標設定がもたらす最初の大きな利点は、従業員が自身の成果を明確に把握し、それに基づいて自己評価を行えることです。これにより、従業員は自らの強みや改善が必要な点を具体的に認識し、自己成長のための具体的な行動計画を立てることが可能になります。

例えば、営業職の従業員が四半期ごとの売上目標を設定した場合、達成に向けて必要なスキルや資源が何かを評価し、それに基づいて研修の受講や時間管理の改善など、具体的な自己改善策を講じることができます。

目標を達成する過程で、従業員は自らの業務に対する責任感と所有権を育みます。これは仕事に対する熱意やモチベーションを高め、結果として業務の質や生産性が向上します。自己成長の過程は従業員のキャリア発展にも直接的に寄与し、長期的には組織全体の人材資源の充実に繋がります。

組織の相乗効果の促進

目標設定による二つ目の重要なメリットは、個々の目標と組織全体の目標がシンクロすることで生まれる相乗効果です。従業員の個人的な目標が組織の長期的な展望や目標と連携することで、組織は一丸となって目標達成に向けて動くことができます。これにより、部門間の協力が促され、資源の最適化や効率的な業務運営が可能になることが期待されます。

例として、製品開発チームの目標が新製品の市場投入である場合、マーケティング部門や営業部門もその目標に合わせて戦略を立てることができます。これは、異なる部門が連携して一つの大きな目標に貢献することで、個々の努力が組織全体の成果に直結するため、従業員のモチベーション向上にも寄与します。


このように目標設定を行うことで、従業員は自己実現を追求すると同時に、組織の成功に積極的に貢献する機会を持つことができます。これは組織文化の強化にも繋がり、全体としての組織力の向上を図ることが可能です。

人事考課における目標設定の過程

目標設定の過程は、通常、以下のステップで進められます

評価の実施従業員の現在の成果と能力を正確に評価します。この評価は、目標設定の基盤となり、どの領域に焦点を当てるべきかを明確にするために重要です。
目標の草案作成従業員と管理者が一緒になって、目標の草案を作成します。この段階で、従業員の意見や希望を反映させることが重要です。
具体的な行動計画の合意草案をもとに、具体的な行動計画を含む最終的な目標に合意します。この合意過程は、従業員が目標に対してコミットメントを持つために不可欠です。
目標に基づく業務の実施合意された目標に基づいて、日常業務が行われます。目標は従業員の日々の業務に具体的な指針を提供します。
進捗のモニタリングと評価定期的に進捗を確認し、必要に応じて目標を調整します。進捗の確認はモチベーションを保つためにも重要です。

目標設定は、単に数値を追うだけではなく、従業員が自身の職業生活において意味ある成果を出すための、戦略的かつモチベーションを高める手段です。正しく設定された目標は、従業員と組織の双方にとって、成長と発展の源泉となるでしょう。

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仕事の目標が思いつかないのはなぜか

仕事において具体的な目標を設定することは、自己成長や組織の発展に欠かせない要素です。しかし、多くの従業員が目標を設定する際に行き詰まりを感じることがあります。以下に、目標が思いつかない主な理由とその解決策を探求していきます。

理解不足からくる困難

目標が設定できない一番の理由は、しばしば自分が担当している業務やその業務の組織全体における意味、重要性に対する理解不足にあります。業務の目的や、それが組織のどのような成果に寄与しているのかを把握していないと、何を目指すべきか見えてきません。

解決策

業務の目的や役割について上司や同僚と話し合うことが重要です。これにより、自分の仕事がどのように組織の目標と連動しているかの視野が広がります。

モチベーションの低下

目標を設定する意欲が湧かないのは、仕事に対するモチベーションが低下しているからかもしれません。日々の業務がルーティンであり、挑戦や新しい学びが少ない状況では、目標を見出すことが困難になります。

解決策

新しいプロジェクトに挑戦する、異なる部門での交流を深める、研修やセミナーへの参加を通じて新たなスキルを学ぶなど、自身の業務範囲を広げることが助けになります。これにより、新たな目標が見えてくることがあります。

資源とサポートの不足

目標を設定しても、それを達成するための資源やサポートが不足している場合、目標設定に消極的になることがあります。不確実な支援や達成のための手段の不足は、目標設定の障壁となり得ます。

解決策

必要な資源やサポートが得られるよう、具体的な要求を管理者に伝えることが重要です。目標達成のために必要な手段や人材の支援を明確に要請し、それが提供されることでより具体的な目標設定が可能になります。

成功の見込みが低いと感じる場合

極めて高い目標や、逆に低すぎる目標はモチベーションを損ないます。現実的でない目標や、挑戦的でない目標は、設定すること自体が難しいです。

解決策

目標は達成可能でありながらも、ある程度の挑戦を伴うように設定することが理想的です。目標を小さなステップに分け、それぞれの達成ごとに自信をつけることができます。

継続的な評価とフィードバックの不足

目標に向かって努力しているにも関わらず、その進捗が定期的に評価されず、必要なフィードバックが得られないと、次のステップが不明確になり、新しい目標を設定するモチベーションが低下します。

解決策

定期的な評価と進捗評価を行う文化を組織内に確立すること。具体的なフィードバックを通じて、どのような改善が必要か、次の目標に向けてどのような取り組みが有効かを見極めることが重要です。


これらの問題点と解決策を踏まえることで、目標が思いつかない状況を乗り越え、より具体的で効果的な目標設定を行うことが可能になります。これは個々の成長だけでなく、組織全体の目標達成にも寄与する重要な過程です。

適切な目標設定のために明確にしておくベきこと

目標設定は人事考課の中でも特に重要な過程であり、従業員のモチベーションの向上、生産性の向上、組織の成果の最大化に直接的な影響を与えます。適切な目標を設定するためには、以下の4つの要素を明確にする必要があります。

1.企業目標

目標設定の出発点として、企業全体の目標を明確にすることが最も重要です。企業目標は、組織の長期的な展望と直結しており、全従業員が共有すべき基本的な指針を提供します。企業の使命や理想に基づき、具体的な数値目標や達成すべき質的な目標を設定することが重要です。

たとえば、売上成長率の向上、市場シェアの拡大、新規顧客の獲得などが企業目標になり得ます。

実施方法

企業目標を明確にするためには、経営層からの明確なコミュニケーションが必要です。全社員が理解し、納得する形での情報共有が行われるべきです。

2.部門目標

部門目標は、企業目標を達成するための中間的なステップです。各部門がどのようにして企業目標に貢献できるかを具体的に計画します。例えば、営業部門では新規顧客の獲得数、製造部門では製品の不良率の削減など、部門の特性に応じた目標が設定されます。

実施方法

部門目標は、部門長と従業員が共同で設定することが望ましいです。これにより、部門内での責任感を高め、具体的な行動計画につなげやすくなります。

3.個人の役割

個々の従業員が組織内で果たすべき役割を明確にすることも、効果的な目標設定には欠かせません。個人の役割を理解することで、従業員一人ひとりが自分の業務がどのように部門目標や企業目標に影響を与えるかを把握しやすくなります。

実施方法

役割の理解が不足しているケースも多いため、定期的な一対一の面談を通じて、個々の従業員の業務内容とそれに関連する目標を明確にすることが効果的です。また、役割に応じた研修や支援を提供することで、個人の能力向上を図ります。

4.課題

目標設定の過程で、現在の業務や過去の成果から明らかになる課題を特定し、それを克服するための目標を設定することが重要です。課題の特定は、目標をより具体的かつ実行可能なものにするための基盤となります。

実施方法

業務の日々の監視と評価を通じて課題を特定し、それらを目標設定の際に取り入れることが重要です。問題解決のための戦略的な目標設定が求められます。


このように、適切な目標設定のためには、企業目標から個人の役割までの各レベルでの目標を明確にし、それぞれの課題を認識することが必要です。これにより、全員が同じ方向を向いて努力することができ、組織全体としての成果の最大化を目指すことが可能となります。

人事考課における目標設定の例

この記事では、様々な職種ごとに具体的な目標設定の例を紹介し、それぞれの目標がどのように従業員のモチベーションを高め、組織全体の成果に貢献するかを解説します。各職種に最適な目標設定を行うことで、企業は高い業績を達成し、市場での競争力を強化することが可能です。職場での目標設定の効果的な例を参考にして、成功への道筋を探求しましょう。

営業担当者

目標次の四半期での新規顧客獲得数を前四半期比で20%増加させる。
行動計画業界イベントに毎月最低2回参加し、新規見込み客を50件以上取得する。
期待される成果新規顧客獲得数の増加と見込み客の取得数の向上。

この目標は市場拡大と直接的な収益向上に寄与します。業界イベントへの積極的な参加により、潜在顧客との接触機会を増やし、新規顧客獲得のチャンスを広げることができます。これにより売上増加と市場シェアの拡大が期待されます。

ITエンジニア

目標新しい顧客管理システムの開発を3ヶ月以内に完了する。
行動計画週1回の進捗報告会を設け、プロジェクトのマイルストーン(主要な区切り)を管理する。
期待される成果プロジェクトの納期遵守率とバグ発生率の改善。

この目標の達成により、開発される顧客管理システムの効率と信頼性が高まります。定期的な進捗報告とマイルストーンの管理により、プロジェクトの遅延リスクを最小限に抑え、システムの品質を保証することができるため、顧客満足度が向上することが期待されます。

人事担当者

目標従業員エンゲージメントスコア(従業員の職場への熱意や参加度、企業への忠誠心などを示す指標)を現在の70%から85%に向上させる。
行動計画従業員満足度調査を実施し、結果に基づいた改善策を四半期ごとに実行する。
期待される成果従業員エンゲージメントスコアの向上と改善策の効果の実感。

従業員満足度の向上は、直接的に生産性の向上に繋がります。定期的な満足度調査とそのフィードバックに基づく改善策の実施は、職場環境を改善し、従業員のモチベーションと忠誠心を高めるため、全体的な業務効率が向上します。

マーケティングマネージャー

目標オンライン広告キャンペーンを通じてウェブサイトの訪問者数を月間10万人に増やす。
行動計画ソーシャルメディアとGoogle AdWordsを用いた広告キャンペーンを最適化する。
期待される成果ウェブサイト訪問者数の増加、広告のクリック数とコンバージョン率の向上。コンバージョン率とは特定のアクションや目標を達成する(例えば、商品の購入、サービスへの登録、問い合わせの送信など)ためにウェブサイトや広告を訪れた訪問者の割合です。

ターゲット市場への広告キャンペーンの最適化により、ウェブサイトへのアクセス数が増加し、最終的には売上の増加に寄与します。高度にターゲットされた広告戦略は、訪問者の関与を高め、より多くのコンバージョンを生み出すため、ブランドの可視性が向上します。

事務職

目標書類の処理速度を現在の1日平均50件から1日平均65件に20%向上させる。
行動計画効率的なデータ入力とファイリングシステムを導入し、毎日の作業過程を改善する。
期待される成果書類処理の効率化により、事務作業の生産性が向上。

書類処理の速度向上は、全体の業務効率を高めることに寄与します。効率的なデータ入力システムと改善されたファイリング過程により、時間を節約し、その結果、他の重要な業務にも注力できるようになります。

接客職

目標顧客満足度を現在の80%から90%に向上させる。
行動計画顧客対応のトレーニングプログラムに参加し、具体的な顧客対応技術を向上させる。また、顧客からのフィードバックを積極的に収集し、それをサービス改善に役立てる。
期待される成果顧客満足度の向上により、リピーターの増加とポジティブな口コミが期待される。

顧客サービスの質を高めることで、顧客の満足度が向上し、店舗の評判が良くなります。結果として、新規顧客の獲得と既存顧客の保持が増加し、長期的な売上の安定に繋がります。


効果的な目標は、従業員が自らの役割において具体的な成果を達成するための指針となり、組織の競争力を高めるための重要なステップとなることができます。

人事考課でよくある事例

人事考課でよくある事例として、「手順やマニュアル通りに行っているのに、形骸化してしまう」というケースがあります。これは特に真面目に取り組もうとされる管理職の方に多い傾向があります。「人事考課が形骸化している」と感じられた方には、弊社では以下の事項を確認しています。

〇 人事考課を“自分事”として捉えられている社員は、部署にどのくらいいますか?


〇 人事考課を“上司に言われたから実施する”ではなく、自らスケジュールを確認して実施しようとする社員は、部署にどのくらいいますか?


〇 通常業務の他に、業務以外で知識やスキルを習得する研修を、どの程度実施していますか?


〇 目標設定面談やフィードバック面談を、疎かにしていませんか?



実際、どれだけ素晴らしい能力を持たれ、やる気に満ち溢れた方がいても、その方1名だけでは、人事考課は正しく運用できません。人事考課は公平かつ公正な人事査定の実施を目的としたものであり、企業で定めた基準に基づく評価を行った結果がその後の待遇にも影響する制度ですが、対象となる社員が制度を理解していないと本来の効力は発揮されません。

また、社員の多くは通常業務にプラスして、この人事考課を実施することが求められます。目の前の業務対応を優先することは当たり前のことだと考えます。人事考課の実施は、短期で直接的な利益を生むわけではありませんので、人事考課の制度を理解するより、目の前の顧客にどのように貢献すべきか、貢献して売上・利益を上げていくための方法を考える時間を増やす方が良いという意見も、納得できます。

自社内で人事考課を正しく機能させるのは難しい場合が多く見受けられます。社内でプロジェクトを組んで、人事考課を浸透させようとする社員が大勢いる場合は別ですが、そうでない場合は、目標設定面談やフィードバック面談の実施すらなくなってしまうケースもあります。

その際に活用できるのが、弊社のような組織人事コンサルティングファームだと考えます。外部に任せるのではなく、一部外部の力を借りることによって、仕組みとして、企業文化として、制度を定着させやすくなります。
弊社では一見人事考課とは直接関係のないように思われる、「管理職研修」から担当させていただくケースも多々ございます。管理職皆様に管理職として求められる仕事内容や、マネジメントの方法を理解していただくと、人事考課を有効活用すべきであることにも気づかれます。単に「人事考課制度を運用しましょう」と申し上げるより、マネジメントの1つの手段・ツールとして人事考課をご理解いただくことで、「何のために行うのか」「なぜ必要なのか」が明確になり、継続した実施につながるのです。
是非、人事考課の実施・定着でお悩みの企業は、外部の力を借りることも視野に入れてお考えになられることを推奨いたします。

まとめ

人事考課は、社員と企業の将来に関わる重要な取り組みです。人事考課を適正に運用するためには、制度の目的を理解したうえで、適切な評価手法を用いて制度設計する必要があります。目標は一度決めたら、達成するまで変えてはいけないと思っている方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。変化の激しい現代においては、むしろ環境変化に応じて柔軟に対応できることが大切です。

仕事の目標は、自らを突き動かす原動力であり、幸せで充実した未来を実現するために欠かせないものです。また、社会人として成長していくためには、目標設定と達成を何度も繰り返し行っていくことが求められます。目標の設定と実現に向けて、今のあなたにできることから少しずつ具体的な行動を始めていきましょう。

監修者

髙𣘺秀幸
髙𣘺秀幸株式会社秀實社 代表取締役
2010年、株式会社秀實社を設立。創業時より組織人事コンサルティング事業を手掛け、クライアントの中には、コンサルティング支援を始めて3年後に米国のナスダック市場へ上場を果たした企業もある。2012年「未来の百年企業」を発足し、経済情報誌「未来企業通信」を監修。2013年「次代の日本を担う人財」の育成を目的として、次代人財養成塾One-Willを開講し、産経新聞社と共に3500名の塾生を指導する。現在は、全国の中堅、中小企業の経営課題の解決に従事しているが、課題要因は戦略人事の機能を持ち合わせていないことと判断し、人事部の機能を担うコンサルティングサービスの提供を強化している。「仕事の教科書(KADOKAWA)」他5冊を出版。コンサルティング支援先企業の内18社が、株式公開を果たす。

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