離職・退職理由をランキングで解説!本音を知るためのポイントと改善策を紹介

組織マネジメント

退職・離職理由をランキング形式で紹介し、面談での建前と本音の理由を詳しく解説。社員の離職防止に向けた企業の具体的な改善策や、効果的な対策をわかりやすく紹介します。

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離職防止策を取る必要がある理由

企業にとって、優秀な人材を確保し続けることは、成長と成功の鍵となる要素の一つです。しかし、近年、離職率が増加し、多くの企業が人材の流出に直面しています。この記事では、なぜ離職防止策を取る必要があるのか、いくつかの理由を挙げて解説します。

1.採用コストの削減

従業員が退職するたびに、新たな人材を採用するためのコストが発生します。求人広告、採用面接、選考の流れ、内定者のサポートといった一連の過程に加え、入社後の研修や育成にも多大なコストがかかります。

ある調査によると、新たな従業員を採用し、育成するためのコストは、離職者の年収の30%から50%に相当するとされています。これを考慮すると、離職率を低く保つことで採用コストを大幅に削減することができ、企業の利益率にも好影響を与えます。

2.生産性の低下を防ぐ

従業員の離職が続くと、チーム全体の生産性に悪影響を及ぼす可能性があります。一人の退職者が出ると、その業務を引き継ぐ必要があり、他の従業員に追加の負担がかかることが少なくありません。特に専門的なスキルや知識を持つ従業員が退職すると、そのギャップを埋めるために時間がかかり、企業の生産性が低下することが懸念されます。

また、新しい従業員が業務に慣れるまでには一定の時間が必要です。この間、既存の従業員は追加の業務をこなす必要があり、その結果、仕事に対する満足度が低下し、さらなる離職を引き起こす悪循環に陥る可能性があります。

3.社内文化と士気の向上

企業文化やチームワークは、従業員のモチベーションや貢献意欲に大きな影響を与えます。しかし、離職が続くと、社内の雰囲気が悪化し、従業員同士の信頼関係が揺らぐことがあります。特に、信頼されていたリーダーや長年勤めた従業員が退職する場合、その影響はさらに大きくなります。

離職防止策を講じることで、社内の安定感を高め、従業員同士の絆を深めることができます。長期的に一緒に働くことで築かれる信頼関係やチームの一体感は、組織の成果向上にも寄与します。また、従業員が安心して働ける環境が整うことで、企業全体の士気が向上し、新たな革新やプロジェクトにも積極的に取り組む姿勢が生まれます。

4.顧客満足度の維持

従業員の離職は、顧客満足度にも影響を及ぼす可能性があります。特に、顧客との長期的な信頼関係を築いている従業員が退職すると、顧客は不安や不満を抱くことがあります。新しい従業員が顧客のニーズや要望を理解するまでには時間がかかり、その間に顧客対応が滞ることも考えられます。

顧客が会社に期待するのは、一貫したサービスと信頼関係です。そのため、顧客と直接関わる従業員が頻繁に入れ替わると、顧客満足度が低下し、結果的に顧客離れを招くリスクが高まります。従業員の定着率を高めることで、顧客に対して安定したサービスを提供し、信頼関係を長期的に維持することが可能になります。

5.離職防止は競争力を高める

人材は企業の最も重要な資産の一つです。特に、専門知識や高度なスキルを持つ従業員の離職は、競合他社にそのノウハウが流出するリスクを伴います。また、優れた従業員が他社に転職することによって、競争力を失う可能性もあります。

逆に、従業員が長く働き続けることで、企業はそのノウハウや技術を内部に蓄積し、強固な基盤を築くことができます。また、長期間働いている従業員は、企業の目指す方向性や果たすべき役割を深く理解しているため、業務に対する貢献度も高まります。これにより、企業全体の競争力が向上し、市場での地位を維持または強化することが可能となります。

6.企業のブランドイメージ向上

近年、企業の評判やブランドイメージは、従業員の働きやすさや労働環境にも大きく影響を受けます。従業員が頻繁に退職する企業は、外部から「働きにくい職場」「ブラック企業」と見なされるリスクがあります。その結果、優秀な人材が応募しなくなり、企業の成長が停滞する可能性が高まります。

一方で、離職率が低く、従業員が長く働く企業は、「従業員を大切にしている企業」として、求職者や顧客からも好意的に捉えられます。特に若い世代の求職者は、給与や福利厚生だけでなく、働きやすさや企業の社会的責任(CSR)にも関心を持つため、従業員の満足度が高い企業は、採用活動においても有利です。

CSRとは、企業が自社の利益追求だけでなく、社会全体に対してどのように貢献できるかを考え、持続可能な成長や環境保護、地域社会の発展、人権尊重などを積極的に実施する責任を指します。これにより、企業は社会に対する信頼を築き、ブランド価値を向上させることができます。


離職防止策を講じることは、単にコストを削減するためだけでなく、企業の持続的な成長と競争力を維持するために欠かせない施策です。

従業員が安心して働ける環境を整え、モチベーションを高めることが、結果的に企業全体の成功へと繋がります。従業員の定着率を向上させることで、企業は内部の強固な基盤を築き、外部からも信頼されるブランドを構築することが可能です。

そのためには、定期的なコミュニケーションやフィードバックを通じて、従業員の声に耳を傾け、働きやすい環境を提供することが重要です。

男女で差がある離職理由

企業が離職防止策を講じる際、特に注目すべき点は、男女で離職理由に顕著な違いが見られることです。これらの違いを理解し、適切に対応することで、職場全体の定着率を向上させ、組織の持続的な成長を支えることが可能になります。ここでは、男女別に離職理由を掘り下げ、なぜこのような違いが生じるのか、そしてそれにどう対策を講じるべきかについて考察します。

男女の離職理由に見られる傾向の違い

調査によると、男性と女性では離職に至る主な理由が異なることがわかっています。男性の場合、一般的には給与や昇進、キャリアの道筋の不透明さが主な要因となることが多く、一方で女性は家庭との両立や、職場の柔軟性の欠如、または職場環境の問題により退職を決断するケースが多いです。これは、性別によって異なる価値観やライフステージの変化が影響していると言えます。

男性に多い離職理由

1.給与や昇進に対する不満

男性は、仕事に対する成果や努力が報われないと感じた場合、転職を検討する傾向が強いです。特に、同業他社と比較して賃金が低い場合や、昇進が遅れていると感じると、キャリアアップを目指して離職するケースが増えます。この点において、企業が適切な評価制度や昇給の仕組みを整えていない場合、男性社員の離職リスクが高まると言えるでしょう。

2.仕事のスキルが活かせない

男性は、専門的なスキルや知識を活かせない、または成長が見込めないと感じた場合に退職を考えやすい傾向があります。職場内でのキャリアの道筋が明確でない場合や、自分の能力を発揮する機会が与えられていないと感じると、転職を選択する可能性が高くなります。

3.業務過多や長時間労働

業務量が過剰で長時間労働が常態化していると、男性はストレスを感じ、転職を考えることが多いです。特に、ワークライフバランスを重視する若い世代では、こうした要因で離職を決断することが増えています。

女性に多い離職理由

1.家庭との両立が難しい

女性の場合、育児や介護といった家庭の責任を担うことも多く、そのために柔軟な働き方が求められます。しかし、企業が柔軟な勤務体制を提供していない場合、家庭との両立が困難になり、離職に至ることが少なくありません。特に、保育施設や介護支援が整っていない地域では、この理由が離職の大きな要因となります。

2.職場環境やハラスメント

女性は、職場での人間関係やハラスメントが離職理由として挙げられることが多いです。特に、上司や同僚からのセクシャルハラスメントや、性別による差別的な待遇が原因で退職するケースが見受けられます。職場環境が女性にとって働きやすくないと感じる場合、心理的負担が増大し、退職へとつながることが少なくありません。

3.キャリアの停滞感

女性は、家庭との両立を優先せざるを得ない場合も多く、キャリアが一時的に停滞することがありますが、これが本人にとって大きな不満となり、結果として離職を選ぶケースもあります。

特に、結婚や出産後に復職してもキャリアアップが見込めない場合、その不満が離職につながることがあります。企業がキャリア支援制度を充実させ、女性の昇進や昇格の道筋を明確にすることで、この問題を緩和することができます。

男女間での離職理由の差が生じる背景

なぜ男女で離職理由が異なるのか、その背後には社会的および文化的な背景が影響しています。日本社会では、依然として「男性が主に家計を支えるべき」という考え方が根強く、男性はより高い給与や安定した雇用を求める傾向があります。

一方で、女性には「家庭と仕事の両立」が求められることが多く、特に育児や介護など家庭内の役割を担うケースが多いです。こうした社会的な役割分担が、男女間での離職理由の違いを生み出していると言えるでしょう。

企業が取るべき対策

男女間での離職理由の違いを理解した上で、企業は全社員に対する対策を講じる必要があります。例えば、社員にキャリアアップの機会を提供し、給与や待遇面での満足度を向上させることが重要です。また、業務量の適正化や長時間労働の解消に向けた取り組みを強化することで、社員のワークライフバランスを改善し、離職リスクを低減させることができます。

加えて、柔軟な勤務時間制度やリモートワークの導入、職場環境の改善を行い、家庭と仕事の両立を支援する体制を整えることも求められます。

1.柔軟な勤務体制の導入

家庭の責任を担う社員や、ワークライフバランスを重視する社員の離職を防ぐためには、柔軟な勤務体制を導入することが効果的です。時短勤務やリモートワーク、フレックス制度の導入により、仕事と家庭の両立や自分のライフスタイルに合った働き方が容易になります。

2.キャリア支援と育児サポートの充実

企業はキャリア支援プログラムを提供し、昇進や昇給の明確な道筋を示すことが重要です。特に、仕事で得たスキルを活かせる場を提供し、成長の機会を増やすことで、社員が将来に向けて前向きに取り組む環境を整えることができます。

さらに、社員がキャリアを諦めることなく育児や介護に取り組めるよう、育児休業からのスムーズな復職支援や、育児や介護とキャリアの両立を目指すプログラムを提供することで、定着率を向上させることができます。

3.ハラスメント対策と職場環境の改善

ハラスメントや性差別が離職の原因となることを防ぐため、企業は厳格なハラスメント防止対策を講じることが不可欠です。また、職場環境の改善や、男女ともに働きやすい職場文化の作り上げることが重要です。


ここでは、離職理由の現状について男女の違いに着目して考えてきましたが、従業員の離職理由には性別に限らず、一人ひとり異なる要因が影響しています。それらを理解し、適切な対策を講じることで、離職防止に大きく貢献できます。

個々のニーズに合わせたキャリアやライフスタイルの支援を行うことで、全社員が働きやすい職場環境を実現し、企業の成長を促進することが可能です。

離職・退職理由をランキングで紹介

企業が従業員の離職を防ぐためには、なぜ従業員が退職を決断するのか、その理由を理解することが重要です。多くの企業に共通する離職理由の傾向を、ベスト10のランキング形式で紹介します。さらに、それぞれの離職理由に対して企業がどのように対策を講じるべきかも詳しく解説していきます。

このランキングは、国内外の様々な調査や企業の人事データを基に構成されています。

1位 給与や待遇への不満

最も多くの従業員が挙げる離職理由が、給与や待遇への不満です。業界平均より低い給与や、昇給や昇進の機会が少ないと感じた社員は、より高い報酬を求めて転職を検討します。

対策

企業は、給与や待遇を業界水準と比較し、定期的な昇給や昇進の機会を提供する必要があります。透明な評価制度を導入し、公平に評価されているという実感を社員に持たせることが重要です。

2位 ワークライフバランスの悪化

過重労働や長時間労働が続くと、従業員は心身のストレスを抱え、家庭や私生活との両立が困難になります。これが離職の大きな要因となります。特に若い世代や、家庭を持つ社員にとっては深刻な問題です。

対策

企業はフレックスタイムやリモートワークなど柔軟な働き方を導入し、長時間労働を避け、適切な労働時間管理を徹底することが必要です。

3位 キャリアの停滞感

昇進やスキルアップの機会が不足していると感じる社員は、キャリア成長の見込みがないと判断し、転職を考える傾向があります。特に若手社員や中堅社員がこの理由で離職を選びやすいです。

対策

社員一人ひとりのキャリアの道筋を明確にし、定期的な評価とフィードバックを行い、スキルアップの機会や研修を提供することが大切です。

4位 人間関係のトラブル

職場での人間関係は、社員の満足度に大きく影響します。上司や同僚との不和や、ハラスメントが原因で離職するケースは少なくありません。特に、直属の上司との関係が悪いと、退職を選ぶ確率が高くなります。

対策

コミュニケーションの機会を増やし、上司と部下の信頼関係を築くためのトレーニングを導入することが重要です。また、ハラスメント対策を強化し、安心して働ける職場環境を提供することが不可欠です。

5位  職場環境の悪さ

職場環境が劣悪な場合、社員のモチベーションが低下し、退職につながることがあります。過度に騒がしいオフィス、古い設備、適切な休憩スペースがない場合などが原因です。

対策

企業は職場環境を改善し、快適で生産的な作業環境を整えることが重要です。物理的な改善だけでなく、職場の文化や雰囲気も含めて、社員が働きやすい環境作りを進めましょう。

6位 仕事の意義が感じられない

仕事に対してやりがいや目的を感じられない社員は、仕事に対する情熱を失い、退職を選びがちです。特に、自分の仕事が会社の成功にどう貢献しているのかが不明確な場合、社員のモチベーションは低下します。

対策

企業の将来の方向性や目標を共有し、社員の役割が全体の成功にどう貢献しているのかを明確にすることで、社員が仕事に対する意義を感じられるようにすることが重要です。

7位 会社の将来性に対する不安

会社の経営が不安定であったり、業績が低迷している場合、社員は将来の安定性に不安を感じ、より安定した企業に転職を考えることがあります。

対策

会社の長期的な成長戦略や経営計画を社員と共有し、将来の見通しを明確にすることで、社員の不安を軽減することが必要です。

8位 フィードバック不足や不適切な評価

適切なフィードバックが不足している場合や、自分の業績が正当に評価されていないと感じる社員は、仕事への意欲を失い、退職を検討します。また、評価基準が不透明だと、不満が生じやすいです。

対策

定期的なフィードバックを行い、社員が自分の業績を理解し、改善の方向性を示すことが大切です。評価制度の透明性を確保し、公平な評価を行うことが求められます。

9位 職務内容に対する不満

期待していた業務内容と実際に任されている仕事が異なる場合や、業務内容にやりがいを感じられない場合、社員はモチベーションを失い、離職を選びがちです。特に、単調な作業や挑戦の少ない業務が続くと、退職の動機が高まります。

対策

社員が期待している仕事に合った業務を提供し、定期的に業務内容の見直しを行うことが必要です。また、挑戦的なプロジェクトや新しい役割に挑戦できる機会を提供することで、社員のモチベーションを向上させることができます。

10位 福利厚生や支援制度の不足

福利厚生が充実していない企業では、社員が他社に魅力を感じ、離職することがあります。育児支援や医療保険、教育サポートなどの福利厚生は、社員の定着率に大きな影響を与えます。

対策

充実した福利厚生を提供し、社員が長期的に働きやすい環境を作ることが重要です。特に、育児支援や医療、余暇の充実を図ることで、社員の満足度を向上させることができます。


これらの離職や退職の理由は、組織にとって重要な問題点を示唆しています。組織は従業員の声に耳を傾け、これらの問題に真剣に取り組むことで、離職率の低減と従業員の定着率の向上を図ることが求められます。

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面談で建前の理由を言うのはなぜか

退職面談や離職時の面接で、従業員が本音ではなく「建前」の理由を述べることは、企業にとって大きな課題です。離職の本当の理由を知ることができれば、企業はその原因に対応し、離職率を下げるための具体的な施策を講じることができますが、従業員が「建前」の理由を述べることで、真の問題が表面化せず、改善策を見逃してしまうリスクが高まります。

ここでは、なぜ従業員が退職面談で「建前の理由」を述べるのか、その背景を詳しく考察し、企業がどのように対策を取るべきかについて説明します。

1.人間関係を悪化させたくないという心理

最も一般的な理由の一つは、人間関係を悪化させたくないという心理です。退職時に本音を伝えることで、上司や同僚との関係が悪化することを恐れる従業員は多くいます。特に、退職後も元同僚や上司と業界内で関わる可能性がある場合、従業員は波風を立てないようにする傾向があります。

例えば、上司の管理方法や職場の雰囲気に問題を感じていたとしても、それを直接的に指摘することで関係が悪化し、最後に嫌な思いをしたくないと考える従業員は「新しいチャレンジを求めている」「自己成長のため」といった建前を述べることが多いです。

対策

企業は、退職面談が感情的な対立を生まないように配慮し、客観的で安全な環境を提供することが重要です。第三者を交えた面談や匿名のフィードバックシステムの導入など、退職者が安心して本音を伝えられる方法を検討するべきです。

2.ネガティブな意見を避けたい気持ち

退職する従業員の多くは、ネガティブなフィードバックを避けたいという心理を持っています。たとえ退職理由が職場の不満に基づくものであっても、その不満を直接的に伝えることは心理的に負担となる場合があります。特に日本の企業文化において、直接的な批判やネガティブな意見を述べることは、礼儀に反する行動と見なされることもあるため、あえて無難な理由を述べる傾向があります。

「会社や同僚に悪い印象を与えたくない」「面倒な対立を避けたい」といった考えから、従業員は本来の退職理由を隠し、「家庭の事情」や「転職によるキャリアアップ」といった建前を使うことが多いです。

対策

企業は退職面談の前に従業員に対して、「正直なフィードバックは企業の成長に役立つ」というメッセージを伝え、従業員の意見を歓迎する姿勢を強調することが必要です。これにより、従業員が安心してネガティブな意見を述べやすくなります。

3.離職後の評判や将来のキャリアに影響を与えたくない

従業員が「建前の理由」を述べるもう一つの大きな要因は、退職後の評判やキャリアに悪影響を及ぼしたくないという心理です。離職後の仕事探しやキャリアの発展において、前の会社からの推薦や評判が重要な場合、退職者は自分の印象が悪くならないよう慎重になります。

例えば、次の職場に転職する際に、前職の会社に問い合わせがあった場合、退職者が厳しい意見を述べていたと知れれば、ネガティブな影響を受けるのではないかと不安に思うことがあります。特に、上司や人事担当者との間に直接の対立が生じる可能性があると考えると、従業員は本音を隠すことが増えます。

対策

企業は、退職後も前職の評価に影響を与えないことを明確に伝えるべきです。面談時に得たフィードバックが公正に扱われ、今後のキャリアに影響を及ぼさないことを保証することで、従業員がより正直に意見を述べやすくなります。

4.企業側が聞きたがる理由に合わせてしまう

退職面談の場では、企業側があらかじめ想定している「聞きたい理由」に従業員が合わせることもよくあります。例えば、会社側が「キャリアアップのために辞めるのですね?」といった質問をする場合、従業員はそれに同意する方がスムーズであると感じ、あえてその線に沿った答えを選ぶことがあります。

企業が求めている答えに合わせて、退職理由を「無難な形」にすることで、従業員は対立や深い説明を避け、円満な形での退職を進める意識が働くのです。

対策

企業は、退職面談において一方的な質問や誘導的な質問を避け、従業員が自由に考えを述べられる場を作る必要があります。「何が最も難しかったですか?」や「改善が必要と感じた点はありますか?」といったオープンな質問をすることで、従業員が本音を話しやすくなります。

5.建前が一般的になっている文化的背景

日本をはじめとするアジア圏では、ビジネスシーンでのコミュニケーションにおいて「建前」が文化的に根付いている面があります。礼儀正しさや対面を重んじるため、退職理由についてもあえて無難な説明をすることが、従業員にとって自然な選択肢と考えられることが多いです。

特に、職場の雰囲気や文化が従業員に対して建前を求める傾向が強い場合、社員は退職時もそのルールに従う傾向があります。

対策

企業が従業員の本音を引き出すためには、企業文化そのものを見直す必要があるかもしれません。定期的なアンケートやフィードバックセッションを通じて、従業員が常に本音を伝えやすい環境を整えることが重要です。

6.本当の理由を話しても改善が期待できないと感じている

最後に、従業員が本音を隠す理由として、本当の理由を伝えても改善される見込みがないと感じているケースがあります。長年、問題が解決されないまま残っている職場では、従業員は退職を決断しても、退職面談で本当の問題を伝えることに意味がないと感じることがあります。

例えば、離職の理由が業務過多やハラスメントに関連している場合、それが過去に改善されなかった経験があると、従業員はもう本音を伝えないほうが賢明だと判断することがあります。

対策

企業はフィードバックを受けた後に迅速かつ具体的な対応を行うことが重要です。従業員にとって「改善される可能性がある」と感じさせることで、退職理由について本音を述べやすい環境を作れます。


従業員が退職面談で建前の理由を述べる背景には、様々な心理的・文化的要因が存在します。企業がこれに適切に対応し、従業員が本音を述べられる環境を整えることで、離職率の改善に向けた有用な情報を得ることが可能になります。信頼関係の構築やフィードバックの重要性を理解し、建前を減らして本音を引き出すための取り組みが必要です。

本当の退職理由を聞くために

退職面談は、従業員が離職する際にその理由を探り、会社が持続的に成長するための重要なフィードバックを得る絶好の機会です。企業は単に退職理由を聞くだけではなく、組織運営の課題を浮き彫りにするためのデータとして退職理由を収集し、分析し、活用することが求められます。しかし、従業員が建前ではなく、本音を語るためには工夫が必要です。

本当の理由を引き出すための環境作り

本当の退職理由を引き出すためには、「安全な環境作り」とともに、従業員が気軽に相談できる窓口や場を設けることが効果的です。相談の場を設けることで、従業員が早期に不満や悩みを共有しやすくなり、退職に至る前に問題の芽を摘むことができます。

さらに、従業員が自由に、かつ安心してフィードバックを提供できる状況が整っていなければ、表面的な理由が提供されるだけで終わってしまいます。以下の方法は、従業員が本音を話すための適切な環境を提供するための基本的なステップです。

1.匿名性の高いアンケートを導入する

面談形式での退職理由を伝えることが難しい場合、匿名のアンケートを実施することは非常に効果的です。特に人間関係や労働条件に関する不満を述べる際、個別面談では伝えにくい従業員も多いです。匿名であれば、そのリスクを感じずに本音を述べやすくなります。

2.感謝の言葉と理解の姿勢を示す

面談の場では、まず従業員に対してその貢献に感謝し、これまでの努力を評価する姿勢を示すことが重要です。その上で「退職理由を聞くのは、組織の改善に役立てたい」という前向きな意図を明確に伝えることで、従業員は安心して本音を述べることができます。

3.第三者を交えた面談を行う

従業員が直接の上司や人事担当者に対して不満を持っている場合、彼らに本音を伝えるのは難しいかもしれません。外部のコンサルタントや第三者を面談に加えることで、より客観的かつ公正な環境が作られ、従業員は安心して本音を述べやすくなります。

4.フィードバックを実際に反映させる

退職者からのフィードバックを収集しても、それが改善に役立たなければ従業員は次第に本音を話さなくなります。過去に得たフィードバックがどのように会社の改善に寄与したのかを示し、実際に変化が起こっていることを伝えることで、次の退職者も率直なフィードバックを提供する意欲が高まります。

効果的な質問の取り組み方

面談やアンケートで使用する質問は、従業員が本音を引き出すための鍵となります。自由な回答を促す質問や、改善点を探る質問を意識して活用することで、より具体的で建設的な意見が得られる可能性が高まります。以下は、効果的な質問例です。

1.「この会社で働く上で、最もストレスを感じたことは何ですか?」

2.「退職を考え始めたきっかけは何ですか?」

3.「どのようなサポートがあれば、退職を避けることができたと思いますか?」

4.「他の会社で働く際に、最も期待していることは何ですか?」

5.「当社で改善すべき点があるとすれば、何でしょうか?」

これらの質問は、従業員の具体的な経験に基づいた回答を引き出しやすく、ただ表面的な理由ではなく、深い理由や背景を明らかにする助けとなります。

データの活用とフィードバックループの重要性

得られた退職理由やフィードバックは、単なる参考情報に留めるのではなく、定量的に分析し、企業全体で共有・活用するとが大切です。定量的な分析とは、数値やデータに基づいた客観的な方法で、感覚や個々の意見に頼らずに問題の規模や影響を評価する手法です。

これにより、より明確な傾向やパターンを把握しやすくなり、根本的な問題点を洗い出すことができます。例えば、一定の部署において人間関係の問題が多発している場合、組織構造の見直しやマネジメント研修の強化が必要かもしれません。

さらに、得られたフィードバックは常に「フィードバックループ」として運用することが求められます。すなわち、得た情報を基に改善を図り、その結果を現場にフィードバックし続けるというサイクルを回すことが重要です。このループがうまく機能すれば、従業員は「自分たちの意見が会社の成長に寄与している」と感じ、今後も率直な意見を提供しやすくなります。


退職者から本当の退職理由を引き出すことは、企業の成長や従業員満足度向上に直結する重要な課題です。しかし、本音を聞くためには、従業員が安心してフィードバックを提供できる環境を整えることが必要です。匿名性の確保、感謝と理解の姿勢、第三者の関与、フィードバックの実施結果の共有など、従業員が率直に意見を述べられる工夫を行うことが大切です。

また、得られた情報は企業の成長に向けて適切に活用し、フィードバックループを構築することで、従業員との信頼関係を強化することができます。本当の退職理由を知り、それを改善することが、組織の健全な発展と持続可能な成長を支える一歩となるでしょう。

退職理由から改善すべき会社の問題点

企業にとって、従業員の退職理由を把握し、それを基に会社の改善点を見つけ出すことは、離職防止だけでなく、従業員満足度や生産性向上にもつながります。特に退職者からのフィードバックは貴重であり、それを無視してしまうと同じ問題が繰り返される可能性があります。

ここでは、「離職・退職理由をランキングで紹介」でも解説してきたさまざまな退職理由を深掘りし、企業が取り組むべき改善点について詳しく解説します。

1.マネジメント体制の見直し

多くの退職理由の中で、上司やマネージャーとの関係が大きな要因となるケースは少なくありません。例えば、「上司との信頼関係が築けない」「評価が不公平だと感じる」といった理由は、従業員のモチベーションを下げる要因となります。こうした問題点に対処するためには、マネジメント体制の見直しが必要です。

まず、マネージャーやリーダーに対してリーダーシップ研修やコーチング(成長を支援するための対話型の手法で、目標を達成するための思考や行動を引き出す)の機会を提供し、部下とのコミュニケーション能力を高めることが重要です。

特に、部下の意見に耳を傾け、適切なフィードバックを行うことが信頼関係の構築につながります。また、定期的な1on1ミーティングや、上司の取り組みに対するフィードバックの仕組みを導入することも効果的です。

2.職場の人間関係の改善

退職理由としてよく挙げられるのが、職場の人間関係に関する問題です。例えば、チーム内でのコミュニケーション不足や、特定のメンバーとの対立が原因で退職を決断する従業員も少なくありません。このような問題は、特にチームワークが重視される現代の職場において、重大な課題となります。

人間関係の改善には、従業員同士のコミュニケーションを促進する場を提供することが重要です。たとえば、定期的なチームビルディング活動やオフサイトミーティング(職場を離れて行う会議や交流の場)を通じて、メンバー同士がリラックスした環境で交流できる機会を設けることが有効です。

また、心理的安全性を確保し、従業員が意見を自由に表明できる風土を育むことも、職場の人間関係改善につながります。

3.キャリアパスの明確化と成長機会の提供

退職者の中には、「キャリアの道筋が見えない」「成長の機会が不足している」といった理由で離職を決断する人も多いです。特に若手従業員にとって、自身のキャリアがどのように進展するのか、企業がどのようにその成長をサポートしてくれるのかは非常に重要です。

この問題を解決するためには、キャリアの道筋を明確にし、従業員に対して将来的な見通しを示すことが求められます。定期的なキャリア面談や、個人のスキル向上を支援する研修プログラムの導入が効果的です。また、社内での異動や昇進の機会を増やし、従業員がさまざまな職務に挑戦できる環境を整えることで、成長意欲を高めることができます。

4.ワークライフバランスの見直し

「仕事とプライベートの両立が難しい」「長時間労働が常態化している」といった理由で退職を決断する従業員も少なくありません。特に、家庭を持つ従業員や、プライベートな時間を大切にする従業員にとって、仕事と私生活のバランスが崩れることは、大きな不満となります。

企業は、従業員のワークライフバランスを改善するために、柔軟な働き方の導入を検討する必要があります。例えば、リモートワークやフレックスタイム制度を導入し、従業員が自分のライフスタイルに合わせて働ける環境を提供することが有効です。また、長時間労働の抑制に向けた取り組みや、業務の効率化を図るための支援ツールや仕事の進め方の導入も、ワークライフバランス改善に貢献します。

5.従業員の声を反映させる仕組みの整備

最後に、退職理由を改善する上で重要なのが、従業員の声を適切に反映させる仕組みを整備することです。従業員が自分の不満や要望を表明できる場がない場合、問題が解決されずに放置されることになります。その結果、不満を抱えた従業員は最終的に退職を選択する可能性が高くなります。

この問題を解決するためには、従業員の意見を定期的に収集し、それを会社の方針や施策に反映させる過程を導入することが重要です。「本当の退職理由を聞くために」でも述べた、フィードバックループです。

例えば、従業員満足度調査や退職面談の結果をもとに、具体的な改善策を講じることが効果的です。また、従業員が匿名で意見を提出できる仕組みや、意見をフィードバックする場を設けることで、従業員が安心して意見を述べられる環境を整えることが重要です。


退職理由の改善は、企業にとって従業員の定着率を高め、組織全体の成果の向上にもつながる重要な取り組みです。従業員からのフィードバックを基に、マネジメント体制や職場の人間関係、キャリアパスの明確化、ワークライフバランスの改善といった問題に対処することが必要です。

また、従業員の声をしっかりと反映させる仕組みを整備することで、組織全体の健全な成長を促進することができるでしょう。企業は、こうした取り組みを継続的に行うことで、従業員の満足度と生産性を同時に向上させることができます。

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まとめ

このコラムを通じて、企業における離職理由を深く掘り下げ、その背景にある問題点と改善策について考察しました。離職防止策は、企業の持続的な成長と従業員の満足度向上に直結する重要な課題です。特に、男女による離職理由の違いや、退職面談での建前の理由の背後にある本音に向き合うことは、企業がさらなる成長を目指す上で欠かせません。

これらの知見を基に、今後は従業員の声を積極的に反映し、働きやすい環境を整えていきましょう。そうすることで、従業員の離職を防ぎ、企業と従業員の双方にとって良い結果を生み出すことができるでしょう。

監修者

髙𣘺秀幸
髙𣘺秀幸株式会社秀實社 代表取締役
2010年、株式会社秀實社を設立。創業時より組織人事コンサルティング事業を手掛け、クライアントの中には、コンサルティング支援を始めて3年後に米国のナスダック市場へ上場を果たした企業もある。2012年「未来の百年企業」を発足し、経済情報誌「未来企業通信」を監修。2013年「次代の日本を担う人財」の育成を目的として、次代人財養成塾One-Willを開講し、産経新聞社と共に3500名の塾生を指導する。現在は、全国の中堅、中小企業の経営課題の解決に従事しているが、課題要因は戦略人事の機能を持ち合わせていないことと判断し、人事部の機能を担うコンサルティングサービスの提供を強化している。「仕事の教科書(KADOKAWA)」他5冊を出版。コンサルティング支援先企業の内18社が、株式公開を果たす。

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