人事で活用できるモチベーション理論とは?得られる効果とその種類・人事戦略への応用

1 組織マネジメント

モチベーションとは動機付けのことです。組織を効率的に運営し、企業に所属する全ての人材のモチベーションを上げるため、古くから「モチベーション理論」と呼ばれる様々な手法が用いられてきました。その理論誕生の背景や概要、さらには人事戦略への応用まで、詳しく解説します。

Contents

モチベーションとは

モチベーションとは、人が行動を起こす内的な動機や外的な刺激に対する反応、つまり「何かをするための動機付け」を指します。心理学において、モチベーションは個人の行動、方向性、継続性を決定づける重要な要素とされています。この概念は、個人が目標に向かって努力する過程を理解する上で不可欠なものです。

モチベーションの種類

モチベーションには大きく分けて二つの種類があります。「内発的モチベーション」と「外発的モチベーション」です。

内発的モチベーション

自己満足や興味、好奇心など、個人の内面から生じる動機付けです。行動そのものに喜びを感じたり、自分自身の成長や学習のために何かをする場合、これに該当します。内発的モチベーションは自己決定理論において重要な概念であり、内から湧き出るこの種のモチベーションは持続可能性が高く、深い学習や創造性を促進するとされています。

外発的モチベーション

報酬や評価、罰など、外部から与えられる刺激によって動機付けられることです。例えば、昇進や金銭的報酬のために仕事を頑張る場合などがこれにあたります。外発的モチベーションは効果的な場合もありますが、外部報酬に依存するあまり、行動がその報酬を失った時に持続しなくなる可能性もあります。

モチベーションを高める方法

モチベーションを高める方法は多岐にわたりますが、以下にその例を挙げます。

目標設定

SMART(具体的、測定可能、達成可能、関連性があり、時間的に限定されている)原則に基づいた目標を設定することで、明確な方向性を持たせ、モチベーションを向上させることができます。

小さな成功の積み重ね

大きな目標を小さなステップに分け、それぞれ達成することで自信を高め、モチベーションを維持することが可能です。

自己効力感の向上

自分自身が行動を起こし、結果を出せるという信念(自己効力感)を持つことで、内発的モチベーションを高めることができます。

環境の整備

周囲の環境を整え、モチベーションを高める刺激を提供することも一つの方法です。例えば、勉強する場合は静かな環境を整える、必要な資料を準備するなどが挙げられます。

モチベーションの維持

モチベーションを維持するためには、自己反省や評価の活用が効果的です。自分自身の行動を振り返り、どのような点がうまくいったのか、どのように改善できるのかを評価することで、継続的な動機付けを促進することができます。また、他者からのポジティブな意見や構築的な批判も、モチベーションの向上に寄与します。


チベーションは、個人の行動を促す内的な力であり、成功への道を切り拓くためには欠かせない要素です。内発的モチベーションと外発的モチベーションの適切なバランスを見つけ、自己効力感を高め、目標に向かって一歩ずつ進むことが大切です。モチベーションを理解し、それを高め、維持するための戦略を用いることで、個人は自己実現の道を歩むことができます。

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代表的モチベーション理論①マズローの欲求段階説

マズローの欲求段階説(Maslow’s Hierarchy of Needs)は、アメリカの心理学者Abraham H. Maslowによって提唱されたモチベーション理論です。

この理論は、人間の欲求や動機付けを階層的に分類し、基本的な生存に関する欲求から高次の精神的な成長へと進化する過程を説明します。人々の行動や選択に影響を与える要因を理解するのに役立ち、個人や組織のモチベーションを理解し、向上させるための枠組みとして広く受け入れられています。

マズローの欲求段階説は、以下の5つの階層から成り立っています。

生理的欲求(Physiological Needs)この階層は、基本的な生存に関連する欲求を表します。食事、水、睡眠、空気、体温の維持などが含まれます。これらの欲求が満たされない場合、他の欲求にはほとんど注意が払われません。例えば、空腹や喉の渇きが満たされていないと、他の高次の欲求には関心が向かないでしょう。
安全性と安定性の欲求(Safety Needs)この階層では、身体的な安全、経済的な安定、仕事、健康などに関連する欲求が含まれます。人々は危険や不安から守られ、安定感を感じる必要があります。例えば、安定した雇用がない場合、自己実現や愛情の追求よりも、まず安定した収入を求めるでしょう。
所属と愛情の欲求(Love and Belongingness Needs)この段階では、友情、家族、愛情、所属感、社会的なつながりなど、人間関係に関連する欲求が重要です。人々は他者との関係を築くこと、愛され、受け入れられることを望みます。この段階での充足感は、自己評価や幸福感に大きな影響を与えます
尊重と承認の欲求(Esteem Needs)この階層では、自尊心、自己評価、他者からの尊敬や評価、成功、成果などに関連する欲求が重要です。人々は自分に自信を持ち認めることができることや他者からの尊敬を得ることができること、成功を達成することなどで、自己実現に向かって進んでいきます。
自己実現の欲求(Self-Actualization Needs)マズローの理論の最上位に位置するのが、自己実現の欲求です。自己実現とは、自分自身の可能性を最大限に発揮し、個人の能力を最大限に活用する過程です。この階層に達した個人は、創造性、問題解決能力、個性の発展に注力し、個人的な使命や目標に向かって努力します。

マズローの欲求段階説は、個人のモチベーションがこれらの階層に沿って進化するという考えに基づいています。つまり、基本的な生理的欲求が充足されていない場合、他の階層に関する欲求はほとんど意識されません。しかし、一度低次の欲求が満たされると、高次の欲求が重要になります。

この理論は、個人や組織がモチベーションを高め、個人の成長を促進するために、どの欲求階層に焦点を当てるべきかを理解するのに役立ちます。

例えば、組織のリーダーは、従業員が安全な労働環境を提供し、経済的な安定を確保することから始め、その後、社交的なつながりや自尊心の向上、個人の能力開発に対するサポートを提供することで、従業員のモチベーションと生産性を向上させることができます。

代表的モチベーション理論②マクレガーのX理論・Y理論

ダグラス・マクレガーによるX理論Y理論は、次に紹介するフレデリック・ハーズバーグのモチベーション・ハイジーン理論と並び、組織論とモチベーション理論の分野で重要な概念です。これらの理論は、組織内の従業員のモチベーションや行動を理解し、組織の管理者がそれを向上させるための指針を提供します。以下では、X理論とY理論を詳しく説明し、それぞれの特徴や違いについて論じます。

X理論

X理論は、ダグラス・マクレガーによって1960年代に提唱されました。この理論は、従業員に対する負の視点を持ち、基本的には人々が自然と怠惰で、働くことを嫌い、監督や強制力が必要だと仮定します。以下は、X理論の特徴と仮定です。

怠惰な性格X理論は、従業員が本質的に怠惰で、仕事を避ける傾向があると仮定します。従業員は、できるだけ少ない労力を払おうとし、自己管理能力が不足していると見なされます。
監督と制御の必要性X理論では、組織は従業員を監督し、制御する必要があると考えられています。上司は、従業員の行動を制約し、命令に従わせるために強制力を行使する必要があるとされます。
報酬と刑罰X理論において、報酬と刑罰がモチベーションを形成する主要な要因と見なされます。従業員は、給与や昇進のような報酬を得るために働くとされ、同時に罰則が効果的なモチベーションツールとされます。
独裁的なリーダーシップX理論に基づく組織は、独裁的なリーダーシップスタイルを採用し、従業員に対して厳しい管理を行います。指示命令型のリーダーシップが好まれます。

Y理論

一方、Y理論は、人々が自己実現欲求や創造性を持ち、自己管理が可能であるという前提に基づいています。Y理論は、従業員に対する肯定的な視点を持ち、組織が働きやすい環境を提供することで、従業員のモチベーションを引き出す方法を提供します。以下は、Y理論の特徴と仮定です。

自己実現欲求Y理論は、人々が自己実現欲求を持っており、個々の成長や達成感を追求すると仮定します。従業員は、仕事を通じて自己実現を果たす機会を求めるとされます。
自己管理能力Y理論によれば、従業員は自己管理能力を持ち、自分で仕事を計画し、実行できると見なされます。リーダーシップはサポート的であり、指導や指導が必要な場合に提供されます。
創造性と革新Y理論は、従業員の創造性と革新への貢献を重視します。組織は、従業員のアイデアや提案を歓迎し、それを活用して成長を促進します。
報酬だけでないモチベーションY理論において、報酬はモチベーションの一要素に過ぎず、仕事そのものへの満足感や達成感が重要です。従業員は、仕事が有益で意義があると感じることでモチベーションが高まります。

X理論とY理論の違い

X理論とY理論は、組織の従業員に対する基本的な仮定やアプローチが異なります。以下に、これらの違いをまとめました。

人間観の違い

X理論は、人々を怠惰で自己中心的な存在と見なし、外部からの監督が必要だと仮定します。一方、Y理論は、人々を自己実現欲求を持つ自己管理能力を持った存在と見なし、内発的なモチベーションを強調します。

リーダーシップスタイル

 X理論に基づく組織は、独裁的なリーダーシップスタイルを採用し、指示命令が支配的です。対照的に、Y理論に基づく組織は、サポート的なリーダーシップスタイルを採用し、従業員の成長と発展を促進します。

モチベーションの源 

X理論では報酬と罰が主要なモチベーション源とされますが、Y理論では仕事そのものへの満足感や成果が重要です。報酬は補完的な要素と見なされます。

組織文化と環境 

X理論に基づく組織は、コントロールと規律が強調され、緊張した環境が生まれやすいです。一方、Y理論に基づく組織は、協力と協調を重視し、創造的な環境を育てます。


要するに、X理論は従業員を管理の対象と見なし、外部からの刺激と制約が必要だと考えます。対照的に、Y理論は従業員を自己管理能力を持つ個人と見なし、内発的なモチベーションを引き出すために環境を整えることを重要視します。組織はこれらの理論を参考にして、従業員のモチベーションを向上させ、生産性を高めるための戦略を選択します。

代表的モチベーション理論③ハーズバーグの2要素理論

フレデリック・ハーズバーグの2要素理論は、モチベーションと満足に関する組織心理学の重要な理論の一つです。この理論は、1959年に発表され、ハーズバーグによって提唱されました。

この理論は、従来のモチベーション理論とは異なり、モチベーションと満足を異なる要素として捉え、それぞれの要素が異なる要因に影響されると主張しています。以下で、ハーズバーグの2要素理論について詳しく説明します。

ハーズバーグの2要素理論は、モチベーション「動機づけ要因」ハイジーン「衛生要因」理論として知られています。

動機づけ要因(Motivators)

動機づけ要因は、仕事の達成感や個人的な成長に関連する要素です。これらの要因が存在すると、従業員はワークモチベーションが高まり、仕事に対する熱意や満足度が向上します。以下は、動機づけ要因の主要な要素です。

達成感(Achievement)仕事を成功裏(物事が成功した状態にあること)に遂行することで生じる達成感は、従業員のモチベーションを高めます。成果に対する認識や報酬がこの要因に関連します。
責任感(Responsibility)仕事に責任を持つことで、従業員は自己価値感を高め、モチベーションが向上します。上司からの信頼や自主性が関連要因とされます
認知(Recognition)努力や成果が認識され、評価されることは、従業員の満足度とモチベーションに大きな影響を与えます。賞賛や表彰が関連要因です。
仕事自体(The Work Itself)仕事が興味深く、やりがいがある場合、従業員はモチベーションを高めます。楽しみややりがいがこの要因に関連します。

衛生要因(Hygiene Factors)

衛生要因は、仕事の不満や不快感を防ぐ役割を持つ要素です。これらの要因が不足すると、従業員は不満や不幸を感じ、モチベーションが低下します。以下は、衛生要因の主要な要素です。

給与(Salary) 給与は基本的な生活費を賄うために必要ですが、給与が低すぎる場合、不満を引き起こす可能性があります。
労働条件(Working Conditions)安全な労働環境や適切な設備がない場合、従業員は不満を感じます。清潔な職場や快適な作業環境が関連要因です。
会社方針と管理(Company Policies and Administration)不明確な方針や不公平な管理体制は、従業員に不安感を与えます。
対人関係(Interpersonal Relations)同僚や上司との対人関係が悪化すると、不満が生じます。協力的なチーム環境やサポートが関連要因です。
仕事の安定性(Job Security)仕事の不安定性や職場の不確実性は、従業員にストレスを引き起こします。

ハーズバーグは、動機づけ要因と衛生要因が異なる要因であると主張しました。彼は、衛生要因が不足している場合、従業員は不満を感じるが、これが満たされてもモチベーションが高まるわけではないと述べました。動機づけ要因は、仕事の本質的な面に関連し、従業員の成長や達成感に影響を与えます。

この理論は、組織が従業員のモチベーションを高めるためには、衛生要因を最小限に保ちつつ、動機づけ要因を最大化する必要があるという重要な指針を提供しています。組織は、給与や労働条件などの衛生要因を改善し、同時に従業員の達成感や認知を高めるような仕事や評価制度を導入することで、従業員のモチベーションと満足度を向上させることができます。

ハーズバーグの2要素理論は、組織の人事管理やリーダーシップの戦略において重要な考え方として広く受け入れられており、従業員のモチベーション向上と組織の成功に貢献しています。

代表的モチベーション理論④マクレランドの三欲求理論

マクレランドの三欲求理論(McClelland’s Three Needs Theory)は、人々が異なる種類の欲求に基づいて行動するというアプローチを提供する心理学的理論です。この理論は、1961年にデビッド・マクレランド(David McClelland)によって提唱されました。彼は、個人の行動と動機づけに関連する3つの主要な欲求(需要)を識別しました。これらの欲求は、成就欲求権力欲求、および所属欲求です。

成就欲求(Achievement Need)成就欲求とは、個人が自己実現や目標達成に向けて努力し、成功を求める内在的な欲求です。成就欲求の高い人は、自分の成果やスキルの向上に焦点を当て、困難な任務に挑戦し、目標を達成しようと努力します。彼らは失敗を恐れず、振り返りのための意見を受け入れることができます。この欲求が高い人々は、上司や同僚からの認識や評価に対して強い関心を持つことがあります。
権力欲求(Power Need)権力欲求は、他の人々を影響や支配することへの欲求を指します。権力欲求の高い人は、組織内でのリーダーシップポジションや影響力を持つことに興味を持ちます。彼らは他の人々に指示を出し、管理する立場でありたいと考えます。この欲求が高い人々は、組織内での競争に積極的に取り組み、リーダーシップの機会を追求します
所属欲求(Affiliation Need)所属欲求は、他の人々との関係やコミュニケーションへの欲求を指します。所属欲求の高い人は、チームや組織内での協力や連帯感に価値を置きます。彼らは他の人々との良好な関係を築くことに喜びを感じ、対人関係の構築に時間とエネルギーを注ぎます。この欲求が高い人々は、協力的でコミュニケーション能力が高いことがあります。

マクレランドは、これらの三つの欲求が個人の行動や動機づけに影響を与え、個人の職業選択や成功にも影響を及ぼすと考えました。彼は、これらの欲求が一人ひとり異なる程度で発達し、特定の欲求が他の欲求よりも優先されることがあると主張しました。具体的な状況や背景に応じて、異なる欲求が優勢になることがあります。

この理論の重要なポイントは、マクレランドがこれらの欲求が習得されたものであると考えていたことです。つまり、これらの欲求は生まれつきのものではなく、個人の経験や環境から形成されるという考えでした。したがって、個人の行動や動機づけは、環境や経験によって変化する可能性があるとされました。

この理論は、組織心理学や人事管理の分野で広く研究され、組織のリーダーシップやチームビルディング、従業員の動機づけに関する戦略の開発に応用されています。特定の職場環境で特定の欲求を満たすための対策やプログラムを設計するのに役立ちます。

要約すると、マクレランドの三欲求理論は、成就欲求、権力欲求、および所属欲求の3つの主要な欲求に焦点を当て、これらが個人の行動と動機づけにどのように影響を与えるかを説明しています。これらの欲求は個人の経験や環境によって形成され、特定の状況や背景に応じて優先されることがあります。組織や個人の成功を追求するために、これらの欲求を理解し、活用することができる重要な理論の一つです。

代表的モチベーション理論⑤期待理論

期待理論(Expectancy Theory)は、モチベーション理論の一つであり、個人が行動を選択し、特定の目標に向かって努力する際の動機付けを説明するために使用されます。この理論は、1960年代にヴィクター・ヴルーム(Victor Vroom)によって提唱され、組織心理学や人事管理の分野で広く研究されています。

期待理論では、個人が行動を起こすモチベーションは、その行動が結果をもたらす可能性や、その結果がどれだけ価値があるかに依存すると仮定します。以下では、期待理論の主要な概念と要点について詳しく説明します。

期待(Expectancy)期待理論の中心的な要素の一つであり、個人が特定の行動をとった場合に、望ましい結果が得られる確率についての信念です。つまり、ある行動が成功につながる確信度を指します。期待は0から1までの値で表され、1に近いほど個人はその行動が成功すると期待し、より高いモチベーションが生まれます。
努力(Effort)期待理論では、個人の努力が望ましい結果にどれだけ影響を与えるかが重要です。努力が高ければ、成功の確率も高まり、期待も高くなります。一方、努力が低い場合、期待も低くなります。
成果(Performance)期待理論における成果は、個人の努力と行動によって達成された結果を指します。成果は、特定の目標や課題に関連しており、その成果がどれだけ優れているかは、モチベーションに影響を与えます。
報酬(Valence)報酬は、個人が特定の成果を達成した際にどれだけ価値を感じるかを表す概念です。報酬は主観的であり、人によって異なります。報酬が高ければ、その成果に対する価値も高くなり、モチベーションも高まります。

期待理論の基本的な数学的な式は以下のように表されます。

モチベーション(M) = 期待(E) × 報酬(V)

モチベーション(M) = 期待(E) × 報酬(V)この式からわかるように、モチベーションは期待と報酬の積に依存します。個人は、特定の行動が成功する確率(期待)が高く、その結果に価値(報酬)を感じる場合に、高いモチベーションを持ちます。逆に、期待が低いか、報酬が低い場合、モチベーションは低くなります。

期待理論の特徴と重要な要点

個人の信念と価値観が重要

期待理論は、個人が自身の信念や価値観に基づいてモチベーションを形成することを強調します。同じ結果に対して異なる個人が異なるモチベーションを持つことがあります。

目標設定が重要

 目標設定は、期待理論において非常に重要な役割を果たします。個人は、特定の目標に向かって努力することで、成功の期待を高めることができます。

努力と報酬のバランス

 期待理論において、個人は努力と報酬のバランスを考慮します。過度な努力に対して報酬が低い場合、モチベーションが低下する可能性があります。

振り返りの重要性 

成果や実績に対する振り返りは、個人の期待を調整し、モチベーションに影響します。ポジティブな振り返りはモチベーションを高め、ネガティブな振り返りはモチベーションを低下させる可能性があります。


期待理論は、組織や個人のモチベーションを理解し、向上させるための重要な枠組みです。組織は、従業員の期待を高め、報酬を適切に設計することで、生産性を向上させることができます。また、個人は自身の目標設定や努力レベルを調整することで、自己モチベーションを向上させることが可能です。

期待理論は、組織心理学や人事管理の分野で広く応用され、効果的なモチベーション戦略の開発に貢献しています。

代表的モチベーション理論⑥目標設定理論

目標設定理論(Goal Setting Theory)は、人間のモチベーションに関する重要な理論の一つです。この理論は、特定の目標を設定することが、個人や組織の価値や成果を向上させ、モチベーションを高めるのに効果的であると主張します。この理論は、エドウィン・ロックとゲイリー・ルーサーの研究に基づいています。以下では、目標設定理論について詳しく説明します。

目標の重要性

目標設定理論は、目標が個人や組織の行動を方向付け、モチベーションを引き出す上で重要な役割を果たすと考えています。目標は、成功や成果を達成するための道しるべとして機能し、個人にとって意味のある課題を提供します。

具体的で明確な目標 

目標設定理論は、特に具体的で明確な目標がモチベーションに与える影響を強調しています。あいまいな目標よりも、具体的な目標の方が達成しやすく、モチベーションを高める効果があります。たとえば、「1か月で5キロ体重を減らす」という目標は、単に「体重を減らす」という目標よりも明確で具体的です。

難易度とモチベーション 

目標設定理論において、目標の難易度も重要な要因です。難易度が十分であるが達成可能な目標は、モチベーションを高めます。難易度が低すぎる目標では興味を引きませんし、逆に難易度が高すぎる目標は挫折感を生む可能性があります。

評価とモチベーション

 目標設定理論は、達成度の評価がモチベーションに影響を与えるとも主張しています。個人が目標に向かって進捗を感じ、成功体験を積むことが、モチベーションを高める要因となります。逆に、達成できない目標や評価の不足は、モチベーションを低下させる可能性があります。

目標に対する献身や約束

目標設定理論は、目標に対する献身や約束がモチベーションに重要な役割を果たすと考えています。個人が自分自身や組織に対しての目標に尽力し、その達成に向けた強い意志を持つことがモチベーションの維持につながります。

長期的な目標と短期的な目標

 目標設定理論は、長期的な目標と短期的な目標の設定が両方とも重要であると主張しています。長期的な将来像を持つことは方向性を提供し、短期的な目標はその将来像を具体的な行動に落とし込む手助けをします。

公に宣言された目標

目標を公に宣言することは、目標設定理論においてもモチベーションにプラスの影響を与えるとされています。公に宣言することで、他人の期待や評価を受けるプレッシャーがかかり、目標達成のための決意が強まり、責任感を持つことができます。

目標の達成と新たな目標 

目標設定理論は、目標を達成した後も新たな目標を設定することが重要だと強調します。達成感や成功体験が次の目標に向けたモチベーションを高め、成長と発展を支えます。

個人差と環境や状況の違い 

目標設定理論は、人々がそれぞれ異なる背景、性格、価値観を持っているということや、置かれている環境や状況が異なるということに応じて、モチベーションの影響が異なるということも考慮しています。人々は異なる価値観や動機を持ち、同じ目標が全ての人に同じように効果的ではないことを認識しています。したがって、目標は個別に設定され、適切に調整される必要があります。


目標設定理論は、個人や組織のモチベーションを理解し、向上させるための有力な枠組みとして広く受け入れられています。具体的で難易度のある目標を設定し、達成度を振り返りとして受け取りながら、責任を持って自ら取り組むことが、モチベーションを高め、成果を向上させる手段とされています。

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まとめ

従業員のやる気を高めるためには、モチベーション理論を活用できます。まず、報酬や認知を提供し、業績と結びつくように設計された目標を設定します。さらに、彼らの個々の欲求や価値観を理解した上で、適切な課題やプロジェクトを割り当て成功体験を提供します。コミュニケーションと振り返りは常に欠かせず、従業員の声を尊重し、関与を促進します。モチベーションを維持するために、継続的な評価と調整が必要です。

監修者

髙𣘺秀幸
髙𣘺秀幸株式会社秀實社 代表取締役
2010年、株式会社秀實社を設立。創業時より組織人事コンサルティング事業を手掛け、クライアントの中には、コンサルティング支援を始めて3年後に米国のナスダック市場へ上場を果たした企業もある。2012年「未来の百年企業」を発足し、経済情報誌「未来企業通信」を監修。2013年「次代の日本を担う人財」の育成を目的として、次代人財養成塾One-Willを開講し、産経新聞社と共に3500名の塾生を指導する。現在は、全国の中堅、中小企業の経営課題の解決に従事しているが、課題要因は戦略人事の機能を持ち合わせていないことと判断し、人事部の機能を担うコンサルティングサービスの提供を強化している。「仕事の教科書(KADOKAWA)」他5冊を出版。コンサルティング支援先企業の内18社が、株式公開を果たす。

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