KPIとは何か?その意味や設定方法、業績につながるビジネス指標を簡単解説

1 組織戦略・マネジメント

KPIとは、ビジネスにおける目標達成度を可視化するための重要な指標です。
本コラムでは、KPIの基本的な意味や設定方法、業績向上に直結する活用ポイントまで、実践に役立つ視点を網羅的に解説します。成果につながるKPI活用の第一歩を、ここから一緒に始めてみませんか?

Contents

KPI(重要業績評価指標)の基本知識

― 組織を“動かす数字”の正体とは ―

ビジネスを成長軌道に乗せるために、何を基準に進捗を判断し、成果を測定すべきか――この問いに対する答えが「KPI(重要業績評価指標)」です。戦略を「現場で動かす」には、数値などの客観的なデータで表す定量的に可視化された目標が欠かせません。

この記事では、KPIの基本的な考え方や活用例を紹介しながら、組織運営にどう活かすべきかを解説していきます。

KPIとは何か?

KPI(Key Performance Indicator)とは、企業やチームの目標達成度を数値で把握するための指標です。たとえば「売上◯円」「顧客満足度◯%」「クレーム件数◯件以下」など、日々の活動が戦略目標にどれだけ近づいているかを測る“物差し”のような存在です。

多くの企業が、「行動」と「成果」をつなぐ共通言語としてKPIを設定しています。

KPIが果たす役割

KPIには、経営や現場の意思決定を加速する以下のような役割があります。

目標の明確化

抽象的な「頑張る」「売上を増やす」といった目標ではなく、「◯ヶ月で売上10%増」と明文化することで、組織全体の進む方向性が一致します。

進捗の可視化

現場レベルでも経営レベルでも、今どの地点にいるかが見えるようになるため、問題点の早期発見や軌道修正が可能になります。

成果の評価とフィードバック

感覚や印象に頼らない“客観的評価”が可能になることで、評価の納得感が増し、人材育成や報酬制度とも連動しやすくなります。

KPIの具体例

業界や職種によってKPIの内容は変わりますが、ここでは汎用性の高い指標を一部紹介します。

項目内容例
売上高月次・四半期・年間など期間別での総売上。経営の健全性を測る基本指標。
顧客満足度アンケート結果、NPSスコア(顧客が企業やサービスを他者にどれだけ勧めたいかを示す指標)、リピート率などを用いて測定。
製品・サービス品質クレーム件数、不良率、ユーザー評価など。信頼性・ブランド力の源泉に。
業務効率作業時間、対応スピード、処理件数など。生産性やコストパフォーマンスの改善に直結。

KPIの設定の流れ

適切なKPIを設計するには、以下のようなステップが重要です。

1.戦略目標の明確化

組織の戦略的目標を明確にし、それに基づいた具体的な目標を設定します。

例:売上拡大、顧客基盤の拡大、新サービスの定着 など

2.評価指標の選定

戦略目標に直結する要素を数値化。例:新規顧客獲得数、リピート率

3.具体的な数値の設定

「前年比120%」や「月10件以上」など、実行レベルまで落とし込みます。

4.定期的なモニタリングと見直し

KPIは“一度決めたら終わり”ではなく、定期的な振り返りによる改善が不可欠です。

業界別KPI設定の一例

製造業不良率、生産効率、原価率
サービス業顧客満足度、リピート率、平均対応時間
IT業界システム稼働率、開発期間、ユーザーアクティブ率(サービスやアプリを一定期間内に利用したユーザーの割合を示す)
小売業在庫回転率、来店数、客単価
教育業卒業率、就職率、学生満足度

なぜKPIが今、改めて注目されているのか?

人材の多様化、働き方の変化、そしてデジタルツールの進化により、企業が“肌感覚”だけで組織を動かす時代は終わりつつあります。
KPIは、定量的な管理を通じて、個人の感覚や経験に頼った判断を最小限に抑え、組織全体に透明性と納得感を生む仕組みです。

特に中堅・中小企業にとっても、「誰がどこまで頑張っているのか」「何が成果に直結しているのか」を明らかにするKPIの活用は、マネジメントの質を飛躍的に高める武器になるのです。

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ビジネスにおいてなぜ設定が必要なのか

― 組織全体を「成果」に向かって動かすために ―

企業経営において、「目標に向かって動いているはずなのに、なぜか成果が出ない」という悩みは少なくありません。その原因の一つが、「目標の不明確さ」「進捗の見えづらさ」です。

KPI(重要業績評価指標)は、こうした課題を解消し、組織全体を成果に直結する行動へと導くための“仕組み”です。その導入によって得られるメリットは非常に多く、この章では、KPIを設定することで得られる主な効果を、6つの観点から解説します。

1.目標が明確になる

KPIは、経営目標を「数値」という共通言語に変換します。
たとえば「売上拡大」という抽象的な目標ではなく、「毎月5%の売上成長」と設定することで、社員は自分に求められている行動を具体的に理解できます。

漠然とした目標 → 社員ごとに受け取り方がバラバラ
明確なKPI → 社員全員が同じ方向に動ける

2.パフォーマンスが見える

KPIは、現状の進捗状況や成果を「見える化」します。
数値で把握できることで、問題点の早期発見や、成功要因の分析が可能になります。

たとえば売上の停滞に気づいたときも、「新規顧客が伸びていないのか」「リピート率が下がっているのか」といった原因の特定が容易になり、打ち手をすぐに検討できます。

3.リソース配分の最適化

人員・時間・コストといった経営資源は限られています。KPIをもとに優先順位をつけることで、「どの業務にどれだけ投資すべきか」が判断しやすくなります。

例:

顧客獲得コストに対してリピート率が低ければ、サポート施策に重点を置く
売上に貢献している販売経路に広告費を集中する など

4.プロジェクトの進行管理がしやすくなる

KPIは、プロジェクトの進捗を客観的に評価する道具でもあります。進みが遅れている場合には、作業のどこで滞っているか(=遅れの原因)を特定して対策を打てます。

例:

新製品の開発が遅れている → 何をどのように作るかを整理・決定する初期の準備段階(=要件定義フェーズ)の完了率などのKPIで原因を特定

5.モチベーション向上につながる

KPIによって、努力と成果の関係が見えるようになると、社員は「自分の仕事が組織にどう貢献しているか」を実感しやすくなります。これは、やりがいや達成感の向上につながります。

さらに、KPIを軸とした評価制度や成果に応じた報酬や表彰といったインセンティブ(動機づけとなる仕組み)と連動させることで、「結果に報いる仕組み」が構築できます。

6.経営判断の精度が上がる

KPIは、経営者や管理職が意思決定を行う際の“事実に基づいた材料”になります。過去データの分析によって、将来のリスクや成長のチャンスを見抜くことも可能になります。

たとえば、ある商品のKPI(成約率・客単価・リピート率)が他と比べて優れていれば、その商品に戦略的投資を集中させる判断ができます。


ここまで見てきたように、KPIには目標の明確化や業務の効率化、社員のモチベーション向上といった多くのメリットがあります。
これらのメリットを最大限に引き出すためには、KPIの「設定の仕方」が非常に重要です。

KPI設定を成功させるための原則

最後に、効果的なKPIを設定する際のポイントを簡単に紹介します。

SMART原則に沿って設定する

Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連性がある)、Time-bound(期限がある)

経営と現場、両方の視点を融合する

上からの目標と、現場の実態や声の両方を反映することで、現実的かつ納得感あるKPIとなります。

継続的なモニタリングと改善を行う

KPIは一度設定して終わりではありません。定期的な振り返りや進捗確認と柔軟な見直しを通じて、変化に適応していくことが重要です。


KPIは、単なる数値目標ではなく、組織を戦略的に動かすための基盤です。

KPIとKGIの違い

―「進捗」と「ゴール」を区別して管理する力とは?―

目標管理を行う上で欠かせない2つの指標、それが KPI(重要業績評価指標)KGI(重要目標達成指標) です。

どちらも「目標達成の度合いを測る」ための指標ですが、KPI=途中経過KGI=最終ゴールというように、その役割とタイミングが異なります。

この違いを正しく理解することが、戦略的な行動管理と成果創出につながります。

KGIとは?:最終的なゴールを示す指標

KGI(Key Goal Indicator)は、企業や組織が目指す「最終的な成果」を数値で示す指標です。

例:

  • 年間売上10億円の達成
  • 新規市場シェア20%獲得
  • 利益率15%の確保

KGIは“目指す山の頂上”です。ここを目標に、組織は具体的な行動計画を立てていきます。

KPIとは?:ゴールに向かう過程の進捗を示す指標

KPI(Key Performance Indicator)は、KGIの達成に向けて「どれだけ進んでいるか」を測る中間指標です。

例:

  • 月次売上800万円
  • 新規顧客獲得数30件/月
  • サイトからの問い合わせ数100件/週

KPIは“頂上にたどり着くまでのルート上にある途中の目印”と考えると分かりやすいでしょう。

KPIとKGIの関係性

項目内容
KGI最終的な成果・ゴールを示す指標
KPIゴール達成までの進捗・行動を測る指標
関係性KPIが機能することで、KGI達成が現実になる

たとえば、KGIを「年間売上1億円」と定めた場合、KPIとして「月次売上830万円」「月20件の新規商談」などを設定し、その進捗を追っていくイメージです。
同様に、採用活動において「KGI=半年以内に営業職3名の採用」とした場合、「KPI=月間応募数20件」「面接通過率30%」などを設定することで、進捗の可視化と改善が可能になります。

KPI・KGI設定のステップ

KPIとKGIを機能させるには、「ゴール→手段」の順で設計するのが基本です。

1.最終目標(KGI)を明確にする

例:1年間で売上1億円を達成する

2.その目標に向けた中間目標(KPI)を設定する

例:月次売上830万円、新規リード数100件/月など

3.KPIを達成するための具体的な行動を決める

例:広告出稿、営業リスト強化、ウェビナー開催など

4.進捗をモニタリングし、必要に応じて修正する

例:新しい見込み顧客の数が伸びない→広告予算配分の見直し

    よくある落とし穴:KPIだけに集中してKGIを見失う

    KPIは数値化しやすいため、現場ではKPI達成に意識が集中しがちです。
    しかし、KPIはあくまでKGI達成のための“手段”であることを忘れてはいけません。

    たとえば「SNSフォロワー数を増やす」ことにこだわるあまり、肝心の売上や成約率に結びついていない、というようなケースは要注意です。
    このように、KPIが“目的化”してしまうと、現場の動きが形だけのものになり、最終的な成果に結びつかなくなる恐れがあります。

    だからこそ、定期的にKGIとの整合性を確認し、KPIが本来の目的と合致しているかを見直すことが、効果的なKPI運用には不可欠です。

    KPIとKGIを使いこなすことで、組織はどう変わるか?

    • 現場は「自分たちの行動が何に貢献しているか」がわかる
    • 経営陣は「戦略の進捗と実効性」を定量的に把握できる
    • 全社で「目的」と「手段」が噛み合った行動がとれる

    KGIとKPIの関係を整理することは、会社がどこを目指すのかという“ビジョン”を、現実の行動に落とし込むための思考を育てることでもあります。KPIとKGIを正しく使い分ける力は、単なる数値管理を超えて、組織の成長スピードを左右する“戦略遂行力”につながるのです。

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    【組織・施策別】KPIの設定方法

    ― 現場ごとの“成果の見える化”が、組織全体の動きを変える

    KPI(重要業績評価指標)は、全社共通の指標を持つだけでなく、部門や施策ごとに最適な指標を設計することが重要です。役割や業務の特性に応じて、追うべき数字は異なります。

    この章では、「組織単位」と「施策単位」に分けて、具体的なKPI設定のポイントを解説します。

    営業部門のKPI設定

    売上拡大に直結する活動を数値で追う

    営業は「結果」が求められる領域だからこそ、活動と成果を両方数値化することが重要です。

    KPI項目説明
    月次売上高毎月の売上目標に対する達成度を確認
    新規顧客獲得数新しい取引先の開拓状況を定量的に評価
    契約成立率商談から成約に至るまでの転換効率を可視化

    たとえば、ある中堅製造業では「新規顧客獲得数」を目標に設定していたが、実際には「成約率」が低下し、売上が伸び悩んだ。KPIを「商談からの契約成立率」に見直したことで、案件ごとの質に注目が集まり、営業活動の質が向上した。

    マーケティング部門のKPI設定

    「関心→行動」へのつながりを追う

    マーケティングは成果が見えづらい分野だからこそ、段階ごとに区切ったKPI設定が欠かせません。

    KPI項目説明
    ウェブサイト訪問者数自社施策による集客の効果を測定
    リード獲得数資料請求・問い合わせなど見込み客数の推移
    コンバージョン率LP(ランディングページ=申込や問い合わせに誘導するための専用Webページ)やキャンペーンからの実際の成約割合

    たとえば、あるサービス業の企業では、「ウェブサイト訪問者数」のKPIを重視していたが、実際には申込につながらない状態が続いていた。
    KPIを「問い合わせからの成約率」に見直し、申込ページの構成や広告訴求を改善したことで、集客の“質”が上がり、売上増加に直結した。

    人事部門のKPI設定

    人と組織の健全性を数字でとらえる

    人事領域では、定性的(=数値では表しにくい主観的な情報)なものを定量化する工夫が求められます。

    KPI項目説明
    社員満足度スコアアンケートなどで組織状態を可視化
    離職率離職傾向の兆候把握や施策の効果検証に活用
    採用成功率募集人数に対する採用完了率を確認

    たとえば、あるIT企業では、「離職率」だけをKPIにしていたが、すでに退職してから気づく“手遅れ感”があった。
    そこで、離職率に加えて「社員満足度スコア」や「1on1実施率」を導入したところ、離職の前兆に早く気づき、面談や配置転換でフォローする体制が整った。

    プロジェクトマネジメントのKPI設定

    「進み具合」「守れているか」を数字で管理

    プロジェクト型業務では、スケジュールとコストの両面から管理する必要があります。

    KPI項目説明
    プロジェクト進捗率計画に対してどこまで完了しているか
    予算遵守率コストが計画通りに使われているか
    タスク完了率担当チームの業務遂行状況を可視化

    たとえば、ある建設プロジェクトでは、スケジュールが遅れていたにもかかわらず「全体進捗率」しか見ておらず、原因が不明確だった。
    「タスク完了率」と「予算遵守率」をKPIに加えたところ、進行の妨げになっていた下請け業者の作業の遅れや、材料費の膨張といった問題点が可視化され、早期対応が可能になった。

    組織全体のKPI設定

    会社全体の健康状態を定点観測する

    経営レベルでは、企業の成長性・安定性・社内の活性度を測る指標が重要です。

    KPI項目説明
    全社売上高収益性の推移を把握
    顧客満足度ブランド信頼やリピート率の向上に直結
    従業員エンゲージメント働きがい・貢献意欲を可視化

    たとえば、ある中堅企業では「全社売上高」だけをKPIとしていたが、部門間の連携不足が見えづらく、内部の停滞感があった。
    「従業員エンゲージメントスコア」をKPIとして取り入れ、各部署ごとのエンゲージメント状況を可視化した結果、特定部門の離職傾向やモチベーション低下が浮き彫りになり、組織改善に役立った。

    施策別KPI設定のポイント

    「この施策はうまくいっているか?」を評価するために

    KPIは、施策の「結果」を見える化するためにも有効です。以下では、新製品開発や既存顧客維持といった主要施策ごとに、KPIの例と実際の活用事例を紹介します。

    新製品開発施策

    KPI項目説明
    製品開発期間開発の効率性・スケジュール通りの進行確認
    市場投入後の売上高新製品の収益力を測る指標
    顧客フィードバック数評判や改善点を収集・分析するための指標

    たとえば、ある製造業では「開発完了日」にばかり注目していたため、市場投入後の売れ行きに課題があっても気づくのが遅れがちだった。
    KPIに「顧客フィードバック数」や「市場投入後の初月売上高」を追加したところ、初期段階でのニーズとのズレを早期に把握でき、プロモーションや仕様の見直しにつなげることができた。

    顧客リテンション(継続利用)施策

    KPI項目説明
    顧客継続率既存顧客の維持状況を数値で把握
    顧客満足度スコアサービスの質や対応の満足度を可視化
    再購買率リピーターの発生状況をチェック

    KPI設定時によくある失敗と注意点

    • 成果に直結しないKPIを追ってしまう
    • 現場が把握しきれない複雑なKPI設定
    • 定量化しにくい項目を無理に数値化し、現場が疲弊
    • 評価と結びつけすぎて、行動が「数字合わせ」になってしまう

    「目的に合ったシンプルなKPIを、現場が納得して使えるか」が成功のための重要なポイントです。


    KPIは単なる目標の「数値化」ではなく、戦略と現場をつなぎ、行動を変える仕組みです。組織や施策の特性に合ったKPIを設計することで、社員は「自分の仕事が成果につながっている」と実感しやすくなります。
    成功の鍵は、正しく“測る”ことではなく、測ることで“動かす”ことにあります。

    KPIにマネジメントは必要か

    ―「設定して終わり」にしない運用の仕組みづくり―

    KPI(重要業績評価指標)は、組織の目標達成に向けた“行動の道しるべ”ですが、ただ設定するだけでは意味がありません。
    KPIを「生きた指標」として活用するには、適切なマネジメント=日々の運用と管理が不可欠です。設定と運用はセットで考えるべきものであり、どちらか一方だけでは成果にはつながりません。

    この章では、KPIマネジメントの重要性と、その実践方法をわかりやすく解説します。

    なぜKPIにマネジメントが必要なのか?

    KPIを効果的に機能させるには、「つくる→使う→見直す」のサイクルを回し続ける必要があります。

    多くの企業で見られる課題のひとつが、「KPIを設定したのに、現場がその存在を意識していない」「更新も共有もされておらず、放置された状態になっている」といった“KPIの形骸化”です。
    マネジメントを怠ると、次のようなリスクが生じます。

    • 指標だけが残り、現場で活用されない
    • 達成困難なKPIが放置され、モチベーションが低下
    • 環境変化に対応できず、ズレた数値管理が続く

    これらを防ぐためにも、KPIは「運用の仕組み」とセットで設計し、日常的なモニタリングと柔軟な調整を組み込んでおくことが不可欠です。

    KPIマネジメントの3つのポイント

    1.定期的な確認とフィードバック

    進捗状況を定期的にチェック(モニタリング)し、必要に応じて上司やチームからフィードバックを行うことが重要です。

    月ごとのKPIの進捗確認のための会議、1on1面談での進捗確認
    目的遅れや問題の「早期発見」と「方向修正」

    2.透明性の確保

    KPIの設定内容や達成状況を組織全体にわかりやすく共有することで、目標への納得感が生まれ、部門間の連携もスムーズになります。

    社員向けの情報共有サイトでの可視化、朝礼での共有
    効果全員が“自分ごと”として目標を認識できる

    3.柔軟な見直し・調整

    市場や顧客の変化、社内戦略の転換などに応じて、KPIを定期的に見直す柔軟性が求められます。

    営業目標が過大である → 市場縮小に合わせて現実的な水準へ調整
    ポイント変更の判断基準を事前に定めておくと、混乱を防げます

    KPIマネジメントの実践ステップ

    KPIを“運用しきる”ためには、次の4ステップを組織的に回していくことが成功の決め手となります。

    ステップ内容実施例
    1.目標の共有KPIを誰もが理解できるように伝える社内会議、報告書、社内専用の情報共有サイト(イントラネット)活用
    2.定期的なモニタリング進捗を継続的に確認KPIや進捗をひと目で確認できる管理画面(ダッシュボード)、月次報告、週報など
    3.フィードバックの実施達成状況をもとに改善点を伝える評価面談、1on1、チームミーティング
    4.柔軟な再設定必要に応じてKPIを見直す市場変動や社内戦略の変更に応じた修正

    KPIは「管理する」ことで価値が生まれる

    KPIは、単なる目標の“見える化”ではなく、組織の行動をゴールに向かって導くためのツールです。
    その価値を最大限に引き出すには、現場と経営層が一体となって運用・改善を重ねていくマネジメント体制が欠かせません。

    意識すべき重要な考え方とは

    ― KPIを“形だけ”にしないための5つの視点 ―

    KPIを効果的に運用するには、「数値を設定する」こと以上に、その運用姿勢や考え方が問われます。
    KPIを“使いこなす組織”には、いくつかの共通したマネジメント視点があります。

    ここでは、KPIを機能させるために意識しておきたい重要な考え方を5つの切り口で整理します。

    1.目標は「具体的に」。曖昧さをなくす

    KPIは“なんとなく頑張る”では機能しません。
    「何を、いつまでに、どこまで達成するのか」を具体的な数値で表現することで、誰が見ても評価できる指標になります。

    NG例「営業を強化する」「売上を伸ばす」
    OK例「月末までに新規顧客20件」「四半期売上1,000万円」

    2.「つくって終わり」にしない。継続的に見直す

    KPIは環境や戦略に合わせて“育てる”ものです。定期的な見直しと改善のサイクル(PDCA:Plan[計画]→Do[実行]→Check[評価]→Act[改善])が不可欠です。

    • 市場環境の変化に合っているか?
    • 達成状況に大きなずれはないか?

    見直しを前提にKPIを設計することで、柔軟で強い運用が可能になります。

    3.「共有されているか?」を常に意識する

    KPIは、一部の人だけが把握していても意味がありません。
    全員が目標を理解し、協力し合える状態がベースです。

    • 朝礼での共有、社内ツールでの見える化
    • 部署横断での連携・補完関係の構築

    KPIは「個人の指標」であると同時に「組織を束ねる旗印」でもあります。

    4.感覚ではなく、データで判断する

    KPI運用においては、“なんとなく”ではなく“根拠のある行動”が求められます。
    直感や経験も大切ですが、事実(=データ)をベースにした判断こそが成果につながります。

    例;

    • 問い合わせ数が減った → 広告効果の推移をデータで分析
    • 離職率が上昇 → 面談記録や満足度調査との関連を可視化

    この「データドリブンの視点(=感覚ではなく、データに基づいて判断・行動する考え方)」が、KPIの改善にも直結します。

    5.フィードバックで行動を変える

    KPIは数字を見るためだけのものではありません。
    進捗をもとに、行動を修正・強化していくことが最大の目的です。

    • 定期的な進捗共有や1on1でのフィードバック
    • 成果が出ている要因・出ていない要因の言語化
    • チーム内での成功事例の横展開

    こうしたフィードバックの積み重ねが、数字の裏側にある行動の質を高めます。

    6.想定外を許容する“柔軟さ”を持つ

    完璧なKPIは存在しません。
    市場の変化、競合の動き、社内体制の変化などにより、計画通りにいかないことは当然あります。

    だからこそ、目標は柔軟に見直す前提で設計し、変化にしなやかに対応するマネジメント力が求められます。

    • 「KPIが現場の実態に合っていない」→ 修正・再設計へ
    • 「達成済みのKPIに固執している」→ 次のステージに挑戦

    柔軟な対応力は、KPIを成果につなげる「最後のピース」ともいえます。


    KPIを成果につなげるのは「人の意識と運用」

    KPIそのものが成果を生むわけではありません。
    それをどのように理解し、共有し、運用するか――人の意識とマネジメントの姿勢がKPIの効果を決定づけます。

    KPIを、組織を動かす力に変えるために

    KPI(重要業績評価指標)は、ビジネスにおける目標達成度を見える化し、組織の進むべき方向を示す指標です。
    本コラムでは、その基本知識からビジネスでの活用意義、KGIとの違い、組織・施策別の設定方法、マネジメントの実践、さらには効果を引き出すための考え方まで、幅広く解説してきました。

    KPIは“設定して終わり”ではありません。
    現場で活用されてこそ意味があり、共有・モニタリング・フィードバックという運用プロセスの中でこそ本来の力を発揮します。

    KPIを効果的に活用することで、組織全体が同じ目標に向かって動き出し、戦略と現場の行動がしっかりと結びついていきます。
    そして、定期的な見直しと継続的な改善のサイクルによって、組織のパフォーマンスは確実に高まっていくはずです。

    ぜひ今回の内容を、貴社における目標管理や組織マネジメントの実践に活かしていただければ幸いです。

    監修者

    髙𣘺秀幸
    髙𣘺秀幸株式会社秀實社 代表取締役
    2010年、株式会社秀實社を設立。創業時より組織人事コンサルティング事業を手掛け、クライアントの中には、コンサルティング支援を始めて3年後に米国のナスダック市場へ上場を果たした企業もある。2012年「未来の百年企業」を発足し、経済情報誌「未来企業通信」を監修。2013年「次代の日本を担う人財」の育成を目的として、次代人財養成塾One-Willを開講し、産経新聞社と共に3500名の塾生を指導する。現在は、全国の中堅、中小企業の経営課題の解決に従事しているが、課題要因は戦略人事の機能を持ち合わせていないことと判断し、人事部の機能を担うコンサルティングサービスの提供を強化している。「仕事の教科書(KADOKAWA)」他5冊を出版。コンサルティング支援先企業の内18社が、株式公開を果たす。

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