コーポレートガバナンスと内部統制の違いを徹底解説!仕組みや関係性とは?

1 組織戦略・マネジメント

企業の持続可能な成長を支えるためには、ガバナンス内部統制といった仕組みが欠かせません。ガバナンスコーポレートガバナンスとは何か?内部統制はどのように企業運営を支えるのか?――これらの仕組みの基本や違いを正しく理解することが、企業の成長の土台となります。本コラムでは、そのポイントについてわかりやすく解説します。

Contents

内部統制とは

内部統制とは、組織が効率的で効果的な業務運営を実現し、財務報告の正確性を確保し、法令や規則を遵守するために必要な仕組みや手順の総称です。特に企業や組織においては、リスクを適切に管理し、透明性と信頼性のある運営を行うための基盤として機能します。

内部統制の背景と必要性

企業の内部統制が注目されるようになった背景には、企業が不正な会計処理をしたり、経営に関する不祥事を起こしたりするケースが相次いだことがあります。

たとえば、2000年代初めに発覚したエンロンやワールドコムの大規模な会計不正では、多くの投資家や従業員が大きな損害を被りました。このような事態は、企業の情報の透明性や信頼性が欠如している深刻な問題を浮き彫りにしました。こうした状況を受け、内部統制の重要性が世界的に見直され、各国で法律や基準が整えられるようになりました。

日本では、2008年に「金融商品取引法(J-SOX法)」が施行され、上場企業に対し内部統制報告書の提出が義務付けられました。この法律は、財務報告の信頼性確保を目的とし、内部統制の整備と運用を組織運営の重要な要素として位置付けています。このように、内部統制は企業が健全に成長し、利害関係者の信頼を得るための必須条件となっています。

内部統制の定義と特徴

内部統制の定義は、国際的に統一された基準として「COSOフレームワーク」が広く参照されています。このフレームワークでは、内部統制を「組織の目標達成を確実にするために取締役会、経営陣、および他の従業員が関与するプロセス」と定義しています。

内部統制の特徴は以下の通りです。

1.全社的な関与

経営層から現場の従業員まで、組織全体が内部統制の仕組みや取り組みに関わります。

2.リスクに基づく対応の考え方

組織の目標達成を妨げる可能性のあるリスクを特定し、それに対応するための仕組みが組み込まれます。

3.継続的な運用と改善

内部統制は一度構築すれば完了するものではなく、継続的なモニタリングと改善が求められます。

内部統制の重要性

内部統制は、単なるリスク管理やチェック機能を超えて、組織の持続可能な成長を支える重要な役割を果たします。以下のような具体的な効果があります。

1.信頼性の向上

透明性の高い財務報告や情報開示により、株主や投資家、取引先からの信頼を得ることができます。

2.組織文化の向上

内部統制を通じて倫理観や透明性が根付くことで、健全な組織文化を育てることが可能です。

3.競争力の強化

内部統制が整備された組織は、不正やミスを未然に防ぐだけでなく、業務効率化や新しい価値や仕組みを生み出すことにもつながります。

内部統制の限界

内部統制は多くの利点を持つ一方で、万能ではありません。その限界として以下の点が挙げられます。

1.人為的ミス

優れた仕組みを構築しても、人間のミスを完全に防ぐことはできません。

2.コスト負担

内部統制の構築・運用にはコストがかかり、特に中小企業ではその負担が課題となることがあります。

3.悪意ある行動

内部統制の仕組みを潜り抜けるような悪意ある行為や共謀を完全には防止できません。


内部統制とは、組織が目標を達成し、リスクを適切に管理するための重要な仕組みです。その役割は、単にリスクを防ぐだけでなく、組織全体の効率性や信頼性、透明性を向上させることにあります。内部統制は、経営の健全性を確保し、組織の持続的な成長を実現するために不可欠な要素です。

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内部統制の目的

金融庁の「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」では、内部統制の目的を以下の4つの側面から明確に定めています。

業務の有効性および効率性

報告の信頼性

事業活動に関わる法令などの遵守

資産の保全

ここでは、それぞれの目的について詳しく解説します。

1.業務の有効性および効率性

業務の有効性と効率性とは、企業が目指す経営目標を達成するために、仕事を効率よく、そして効果的に進めることを意味します。内部統制は、業務の流れを整えたり、資源の無駄遣いを減らしたりするための仕組みを提供し、組織全体の生産性を高めるサポートをします。

具体例
たとえば、製造業では在庫管理システムを適切に運用することで、必要な製品を適切なタイミングで供給しつつ、過剰在庫を回避することが可能です。また、販売部門では、売上目標達成に向けた行動計画を策定し、その進捗を定期的にモニタリングする仕組みを導入することが考えられます。

実現のための要素

  • 明確な仕事の流れと担当者ごとの責任の設定
  • 定期的に業務を確認し、改善する仕組みづくり
  • 仕事の目標をはっきりさせ、それがどれだけ達成されたかを評価すること

これらにより、企業はリソース(人材や時間、資金などの経営資源)を最適に活用しながら、効率的に目標を達成できます。

2.報告の信頼性

報告の信頼性とは、財務報告を含むすべての情報が正確かつ透明であり、利害関係者に信頼されるものであることを確保することです。企業の財務報告は、株主、投資家、取引先、金融機関など、多くのステークホルダーの意思決定に影響を与える重要な情報です。

具体例
財務諸表における誤りや不正会計は、企業への信頼を損ない、資金調達や取引に悪影響を及ぼします。内部統制では、帳簿のダブルチェックや会計処理の自動化などを取り入れ、財務報告の正確性を確保します。また、情報開示のタイミングや内容についても、規制を遵守することが求められます。

実現のための要素

  • 権限と責任の明確化による不正防止
  • 会計システムの整備と自動化
  • 内部監査や外部監査の活用によるチェック体制の強化

これにより、財務報告がステークホルダーから信頼される内容となります。

3.事業活動に関わる法令などの遵守

企業は、事業活動を遂行するうえで、税法、労働法、環境法規、金融商品取引法など、さまざまな法令や規則を遵守する責任を負っています。内部統制は、これらの法令遵守を徹底し、違法行為や社会的信用の失墜を防ぐ役割を担います。

具体例
たとえば、個人情報保護法の遵守を求められる企業では、顧客情報を管理するシステムにアクセス制限を設けることや、データの利用目的を明確化することが内部統制の一環として行われます。また、コンプライアンス教育を実施し、社員全員が関連法令について正しい知識を持つことも重要です。

実現のための要素

  • コンプライアンス推進体制の構築
  • 法令遵守に関する教育や研修の実施
  • 内部通報制度の整備と適切な対応

これにより、企業は法令違反によるリスクを最小限に抑え、社会的信用を維持できます。

4.資産の保全

資産の保全とは、企業が保有する有形・無形の資産を適切に管理し、損失や不正使用を防止することを指します。これには、現金や在庫といった物理的資産だけでなく、知的財産や顧客情報といった無形資産も含まれます。

具体例

たとえば、在庫管理では、商品の持ち出しや棚卸のミスを防ぐためにバーコードシステムを使うことが考えられます。また、現金の管理では、取引ごとに事前に承認を得る仕組みを作ることで、不正な利用を防ぐことができます。

さらに、情報に関しては、セキュリティ対策を施したり、誰がアクセスできるかをしっかり管理したりすることで、不正なアクセスや情報漏洩を防ぐ必要があります。

実現のための要素

  • 資産管理の方法を統一し、定期的に状況を確認する仕組みづくり
  • 定期的に棚卸や資産の評価を行うこと
  • 情報を守るためのセキュリティ対策を強化すること

これらを徹底することで、企業は資産を効率的に活用しつつ、損失を最小限に抑えることが可能です。


金融庁の基準に基づく内部統制の目的は、「業務の有効性および効率性」「報告の信頼性」「事業活動に関わる法令などの遵守」「資産の保全」の4つに集約されます。これらの目的は、企業が健全な経営を維持し、利害関係者の信頼を得るための基盤となります。

内部統制を適切に整備し運用することは、単にリスクを防ぐだけでなく、組織の成長や競争力向上に直結する重要な取り組みです。

内部統制の基本的要素

金融庁の「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」では、内部統制を構築・運用する際に欠かせない6つの基本要素を定義しています。

1.統制環境

2.リスクの評価と対応

3.統制活動

4.情報と伝達

5.モニタリング

6.ITへの対応

これらの要素は、企業がリスクを管理し、財務報告の信頼性を確保し、法令を遵守するための基盤となるものです。ここでは、この6つの基本要素について詳しく解説します。

1.統制環境

統制環境は、内部統制の基盤であり、組織全体の統制に対する意識や姿勢を決定します。経営者のリーダーシップや倫理観、企業文化が統制環境を形成します。

具体的な内容

経営者の姿勢経営トップが内部統制を重要視し、その重要性を組織全体に示す。
倫理規範の策定従業員に対して倫理的な行動基準を示し、これを遵守させる。
権限と責任の明確化役割を適切に分担し、責任の所在を明確にする。
人材管理適切な人材の採用・育成により、統制環境の質を高める。

統制環境が整備されていなければ、他の要素が十分に機能せず、不正行為や業務エラーが発生しやすくなります。

2.リスクの評価と対応

リスクの評価と対応とは、企業が目標を達成するうえで障害となる可能性のあるリスクを見つけ出し、それに対して適切な対策を取るための仕組みです。

具体的な内容

リスクの特定財務報告に影響を及ぼす可能性のあるリスクを洗い出す。
リスクの分析リスクの発生頻度や影響の大きさを評価する。
対応策の策定リスクを軽減、回避、または許容するための具体的な方策を計画する。

リスク管理が不十分だと、財務報告の信頼性や業務の効率性が損なわれる可能性があります。適切なリスク対応策は、組織の持続的な成長を支える要素です。

3.統制活動

統制活動は、特定されたリスクを軽減または排除するための具体的な方策や手続きを指します。不正行為や業務エラーを未然に防止、または早期に発見するための仕組みが含まれます。

具体的な内容

承認手続き重要な取引や意思決定について、事前に確認や承認を行う仕組みを作る。
業務分掌業務と責任を分担し、一人の担当者がすべてを管理しない体制を構築する。
物理的管理現金、在庫、情報資産などの重要な資産を適切に保護する。
独立したチェック業務の流れを定期的に監視し、異常や問題を発見する。

統制活動が機能していない場合、組織内でリスクが適切に管理されず、不正や重大なエラーが発生する可能性が高まります。

4.情報と伝達

情報と伝達は、内部統制を効果的に機能させるために必要な情報を収集し、それを組織全体に適切に共有する仕組みです。

具体的な内容

情報の収集財務報告やリスク管理に必要な情報を適切なタイミングで集める。
情報の伝達経営層から従業員への指示や現場から経営層への問題報告を迅速かつ正確に行う。
コミュニケーションツールの活用ITシステムやポータルサイトを活用して、情報の共有を効率化する。

情報伝達が滞ると、内部統制が十分に機能せず、リスク対応や意思決定が遅れる可能性があります。

5.モニタリング

モニタリングは、内部統制が適切に機能しているかを継続的に評価する仕組みです。日常的な監視と定期的な評価の両方を含みます。

具体的な内容

日常的な監視仕事の進め方や管理の取り組みが正しく行われているかを確認する。
独立した評価内部監査や外部監査を通じて、客観的な視点から内部統制を評価する。
是正措置の実施モニタリングの結果を基に、問題点を改善するための対策を講じる。

モニタリングが欠如している場合、内部統制の効果が低下し、リスクの増大や財務報告の信頼性の低下につながります。

6.ITへの対応

ITへの対応は、情報技術(IT)の活用と管理に関連する内部統制の要素です。特に現代の企業において、ITは業務の効率化や情報の正確性に不可欠な役割を果たしています。

具体的な内容

ITシステムの管理仕事の流れを支えるITシステムが信頼できる状態であることを確保する。
アクセス管理機密情報へのアクセスを適切に制限し、不正使用を防止する。
データ保護バックアップやセキュリティ対策を実施し、データの消失や漏洩を防ぐ。

ITへの対応が不十分だと、システム障害や情報漏洩が発生し、財務報告や業務運営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。


内部統制のこの6つの基本的要素は、それぞれが相互に補完し合いながら、組織の目標達成を支援します。これらの要素を適切に整備し運用することは、企業のリスク管理能力や財務報告の信頼性向上に直結します。

ガバナンスとは

「ガバナンス」という言葉は、企業の運営や組織の管理においてとても重要な考え方です。ガバナンスとは、組織が目標を達成するために必要な指示や管理を行う仕組みや、その全体的な流れを指します。

特に企業ガバナンス(コーポレートガバナンス)は、会社が公正かつ透明性をもって運営されるためのルールや仕組みを指し、株主やステークホルダーの利益を守りつつ、長期的な成長を支える枠組みとなります。

ガバナンスの背景と重要性

企業の規模が拡大し、利害関係者(ステークホルダー)も多様化する中で、ガバナンスはますます重要視されています。特に、大企業では経営者と株主の間に情報の非対称性(経営者が株主よりも多くの情報を持っている状態)が生じやすいため、経営が株主や社会全体の利益に反しないよう、適切な監督や指導が必要です。

ガバナンスが機能していない場合、不正会計や企業の私物化といった問題が発生し、企業の信頼が大きく損なわれるリスクがあります。

ガバナンスの目的

ガバナンスの主な目的は、以下の3点に集約されます。

1.経営の透明性を確保すること

経営の意思決定や業務運営が透明であり、社内外の関係者から見ても適切であることを示すことが求められます。透明性が確保されることで、企業は信頼を得やすくなり、株主や投資家の支持を得ることができます。

2.法令遵守の徹底

ガバナンスには、企業が法令や規制を遵守し、適切な行動をとることを支援する役割があります。これにより、コンプライアンス違反のリスクを低減します。

3.ステークホルダーの利益保護

ガバナンスは、株主だけでなく従業員や顧客、取引先、地域社会といった多様なステークホルダーの利益を守る仕組みを整えます。これにより、企業の持続可能な成長を実現します。

ガバナンスを構成する要素

ガバナンスを強化するには、いくつかの基本的な要素が必要です。以下はその代表的な例です。

1.取締役会

経営の重要な意思決定を行う中核機関であり、経営陣が適切に業務を遂行しているかを監督する役割を担います。

2.監査役制度

経営陣の活動を監視し、法令や規定に違反していないかを確認する機能です。監査役や外部監査人が独立した立場で監査を行います。

3.内部統制との連携

ガバナンスの中で内部統制は、業務の適正さや透明性を保つための重要な手段となります。内部統制が強化されることで、ガバナンス全体の信頼性が向上します。

4.情報開示とコミュニケーション

株主やステークホルダーに対し、経営の状況やリスクについて適切な情報を開示することもガバナンスの一環です。

ガバナンスがもたらす効果

ガバナンスがしっかりと機能している企業は、以下のようなメリットを享受できます。

リスクの軽減

経営の透明性が向上し、不正や不祥事の発生リスクが低減します。

企業価値の向上

適切なガバナンスは、株主や投資家からの信頼を獲得し、長期的な企業価値の向上につながります。

社会的責任の遂行

ガバナンスを通じて企業の社会的責任(CSR)を果たすことで、地域社会や環境への貢献を実現できます。


ガバナンスは、企業が健全で持続可能な運営を行うための指針であり、透明性や法令遵守、ステークホルダーの利益保護といった重要な要素を含みます。これを強化することで、企業の信頼性を高め、長期的な発展を支える基盤が整えられます。内部統制と密接に関連しているため、ガバナンスの構築には内部統制の仕組みも欠かせない要素となるのです。

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ガバナンスと内部統制の違い

ガバナンス内部統制は、企業の適正な運営を支える重要な要素でありながら、目的や適用範囲、取り組み方に違いがあります。この違いを理解することは、企業運営の実務を効果的に行う上で欠かせません。

ここまで解説してきたガバナンスと内部統制の目的や特徴を踏まえた上で、ここではその違いをさらに深掘りしながら、実務的な視点からその関係性を解説します。

両者の役割における大きな違い

1.ガバナンスは方向性を示す仕組み

ガバナンスは、企業全体の戦略的方向性を示し、利害関係者(株主、従業員、取引先など)の利益を守ることを目的としています。これは、経営陣の意思決定が透明性を持ち、社会的責任を果たすための「枠組み」を提供するものです。

具体的には、取締役会や監査役が中心となり、組織全体の大きな方向性や規範を設定します。たとえば、企業が「環境への配慮」や「デジタル化の推進」といった社会的・経済的課題に対応するためには、ガバナンスのレベルでこれらを優先事項として明確に示す必要があります。このようなガバナンスは、組織全体の「羅針盤」として機能します。

2.内部統制はその方向性を実現する仕組み

一方、内部統制はガバナンスで示された方向性や規範を「現場で具体的に実現するための仕組み」です。これは、業務の進め方の適切性や効率性、コンプライアンス(法令遵守)の徹底を支える仕組みとして、現場の担当者や管理職が実際に運用します。

たとえば、内部統制の一環として、財務報告の正確性を保つために「ダブルチェック体制」を導入したり、従業員が法令に違反しないよう「内部監査部門」が定期的にチェックを行うことが挙げられます。

    視点と取り組み方の違い

    ガバナンスと内部統制は、視点と取り組み方の違いからも明確に区別されます。

    視点の違い

    ガバナンスは、経営陣が組織全体を広い視野で見渡し、リスクやチャンスを見極めながら、長期的な価値の創出を目指す仕組みです。このように、組織の方向性を上層部から示していく仕組みを「トップダウン型」と呼びます。

    一方、内部統制は、具体的な業務の流れや日々の活動が正しく行われるよう、現場からの働きかけや確認を通じて支える役割を担います。このように、現場が主体となって取り組む仕組みを「ボトムアップ型」といいます。

    取り組み方の違い

    ガバナンスでは、戦略的な意思決定や政策の策定が中心となります。たとえば、取締役会が新たな成長戦略を策定したり、株主総会で重要な経営方針を決定することです。
    それに対して、内部統制は戦略を実現するための具体的な手続きやルールの整備に焦点を当てます。たとえば、購買の流れで不正が起きないように承認手続きを複数段階に分けるといった施策が該当します。

    主な関与者の違い

    ガバナンスと内部統制に関与する主体も異なります。

    ガバナンスの関与者

    ガバナンスの主体は、経営陣や取締役会、株主などです。これらの人々は、組織全体の方向性を示すだけでなく、その進捗や実行状況を監視する役割を担います。

    内部統制の関与者

    内部統制においては、現場の従業員や管理職、内部監査部門が主要な役割を果たします。これらの人々は、組織の中で定められたルールや手続きを日々の業務に適用し、その適切性を維持します。

    ガバナンスと内部統制の関係性

    ガバナンスと内部統制は、それぞれ独立した仕組みでありながら、企業運営において密接に関連しています。その関係性を整理すると次のようになります。

    1.ガバナンスが内部統制の方向性を示す

    ガバナンスの中で定められる基本方針やリスク管理戦略は、内部統制の基盤となります。たとえば、コンプライアンス重視の方針をガバナンスで示せば、それを実現するための具体的な手順が内部統制の中で整備されます。

    2.内部統制がガバナンスを支える

    内部統制が適切に機能することで、経営陣がより正確な情報に基づいて意思決定を行えるようになります。また、不正や不適切な運用を未然に防ぐことで、ガバナンスの目標が効果的に実現されます。

      ガバナンスと内部統制が補完し合う事例

      たとえば、ある企業が取引の流れ全体(サプライチェーン)における環境規制への対応を強化したいと考えた場合、ガバナンスの段階では「取引全体での環境負荷を削減する」という方針を明確にします。

      そして、その方針を具体的に実現するために、内部統制の取り組みとして「取引先(サプライヤー)の選定基準に環境基準を追加する」「定期的に環境負荷に関する監査を行う」といった具体策を導入します。


      ガバナンスと内部統制は、企業運営において目的や視点、関与者、適用範囲などに違いがありますが、相互に補完し合いながら組織の健全性を支えています。

      ガバナンスは「方向性を示す仕組み」であり、一方の内部統制は「その方向性を実現するための仕組み」です。この両者を適切に運用することで、企業は持続的な成長を実現し、社会からの信頼を得ることができるのです。

      内部統制を強化することでガバナンスにもつながる

      企業が持続的な成長を遂げ、社会的な信頼を得るためには、内部統制とガバナンスが相互に補完し合いながら機能する必要があります。ここでは、内部統制の強化がガバナンスの質を高める具体的な効果や、ガバナンスへの貢献を新たな視点から探ります。

      内部統制強化の重要性とその影響

      内部統制は、企業の現場で業務が適切に遂行され、効率性や透明性が保たれるための仕組みです。この仕組みが強化されることで、企業全体に次のようなポジティブな影響がもたらされます。

      1.意思決定の正確性を高める

      内部統制が強化されると、現場から経営陣に伝わる情報の正確性が向上します。たとえば、財務データが誤りなく収集され、リスクに関する情報が迅速に伝達される環境が整備されます。この正確な情報がガバナンスの基盤となり、経営陣がより適切な意思決定を下せるようになります。

      2.現場の意識向上がガバナンスに影響を与える

      内部統制の強化は、現場で働く従業員の意識改革にもつながります。たとえば、社内ルールの遵守を徹底するための研修や教育を通じて、全社員が企業の方針や目標を深く理解し、自分たちの行動がガバナンスの一部であると意識できるようになります。このような意識を根付かせることが、ガバナンスを組織全体に浸透させる基盤を作ります。

      3.リスクの早期発見と対応

      内部統制が強化されると、現場レベルで発生するリスクを早期に検出し、対応する力が向上します。たとえば、内部監査やモニタリング体制が整備されていれば、取引先の不正や業務の進め方の非効率性といった課題を早い段階で是正することが可能です。これにより、経営陣がリスク管理の戦略を練りやすくなり、ガバナンスの効果が最大化されます。

        ガバナンスの視点から見た内部統制の強化

        ガバナンスは、経営陣が企業全体を広い視野で見渡し、方向性を示す役割を担います。しかし、現場での内部統制が不十分だと、経営陣が思い描く方針が実現されず、ガバナンスの効果が弱まる可能性があります。これを防ぐために、内部統制を以下の観点で強化することが求められます。

        1.透明性の確保

        内部統制の中で特に重要なのは、透明性を高めることです。たとえば、取引の記録を明確に残し、監査が容易にできる仕組みを構築することで、経営陣が現場の状況を正確に把握できます。こうした透明性が確保されることで、ガバナンスの基盤がより堅固になります。

        2.コンプライアンスの徹底

        ガバナンスの中核には、法令や倫理規範を守るというコンプライアンスの概念が含まれています。内部統制を強化し、従業員がルールを正しく理解し、実行できる環境を整えることで、ガバナンスの目標である持続可能な企業運営が実現されます。

        3.現場の声を取り入れる仕組み

        内部統制の強化には、現場からのフィードバックを受け入れる仕組みも重要です。現場の課題や提案を経営陣が適切に吸い上げることで、トップダウンだけではなく、ボトムアップの視点も取り入れた実効性のあるガバナンスを実現できます。

          具体的な事例:内部統制がガバナンスを支える場面

          たとえば、製造業の企業が品質管理を強化したいと考えた場合を想定してみましょう。経営陣が「製品の不良率を削減する」という目標を掲げたとしても、現場の内部統制が整備されていなければ、その目標は達成困難です。ここで、以下のような内部統制の取り組みがガバナンスを支えます。

          • 生産ラインのチェック体制を強化し、不良品が発生した際には原因を迅速に特定する仕組みを導入
          • 原材料の調達基準を見直し、品質基準を厳格化
          • 従業員に対する品質基準の教育を徹底

          これらの取り組みにより、経営陣の方針が具体化され、実行可能なものとなります。このように、内部統制の強化はガバナンスが求める方向性を支える鍵となるのです。


          内部統制を強化することは、単に現場の効率性や正確性を向上させるだけでなく、ガバナンスそのものを支え、強化する結果を生み出します。特に、現場レベルでの透明性や法令遵守、リスク管理が改善されることで、ガバナンスの基盤が確立され、経営陣が示す方向性が組織全体に浸透しやすくなります。

          内部統制とガバナンスは独立した仕組みでありながら、相互に補完し合う存在であり、そのバランスを保ちながら強化することで、企業の持続可能な成長と社会的な信頼の向上を実現するのです。

          まとめ

          本コラムでは、「ガバナンス」「内部統制」という企業運営に欠かせない2つの仕組みについて、その違いや関係性を整理し、それぞれの役割を詳しく解説してきました。ガバナンスは経営陣が全体の方向性を示し、組織を長期的な成功へと導く役割を果たす一方で、内部統制はその方向性を現場レベルで具体的に実現し、リスクを管理しながら企業活動を支える仕組みです。

          この2つは単独で機能するものではなく、互いに補完し合いながら組織の健全性を保っています。ガバナンスで示された方針が内部統制によって具体化されることで、企業は透明性の高い運営を実現し、持続的な成長と社会的信頼を得ることができます。また、内部統制を強化することで、ガバナンスの質がさらに向上し、経営陣がより正確で適切な意思決定を行うための土台が整います。

          企業が競争の激しい環境の中で信頼を維持し、成長を続けていくためには、ガバナンスと内部統制を一体的に捉え、バランスよく強化していくことが不可欠です。経営陣、管理職、そして現場の全ての人がこれらの仕組みを正しく理解し、それぞれの役割を果たすことが、組織全体の成功につながります。

          本コラムが、ガバナンスや内部統制に関する理解を深め、より強固で健全な組織づくりの一助となれば幸いです。

          監修者

          髙𣘺秀幸
          髙𣘺秀幸株式会社秀實社 代表取締役
          2010年、株式会社秀實社を設立。創業時より組織人事コンサルティング事業を手掛け、クライアントの中には、コンサルティング支援を始めて3年後に米国のナスダック市場へ上場を果たした企業もある。2012年「未来の百年企業」を発足し、経済情報誌「未来企業通信」を監修。2013年「次代の日本を担う人財」の育成を目的として、次代人財養成塾One-Willを開講し、産経新聞社と共に3500名の塾生を指導する。現在は、全国の中堅、中小企業の経営課題の解決に従事しているが、課題要因は戦略人事の機能を持ち合わせていないことと判断し、人事部の機能を担うコンサルティングサービスの提供を強化している。「仕事の教科書(KADOKAWA)」他5冊を出版。コンサルティング支援先企業の内18社が、株式公開を果たす。

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