コンプライアンスとガバナンスの違いとは?それぞれの意味や役割、強化の必要性について詳しく解説

1 組織戦略・マネジメント

『コンプライアンス』『ガバナンス』は、現代の企業経営に欠かせない重要な要素です。このコラムでは、それぞれの具体的な意味や役割、その違いについて詳しく解説するとともに、これらを強化することで得られるメリットや現代のビジネス環境における重要性について掘り下げていきます。

Contents

コンプライアンスとは

コンプライアンスとは、企業や個人が法律や規則を遵守し、社会的な倫理観や道徳に基づいて行動することを指します。「法令遵守」という言葉で表現されることもありますが、単に法律を守るだけではなく、企業活動において社会的責任を果たすことや、信頼される行動を取ることを含む広い概念です。

コンプライアンスは、現代社会において健全な組織運営やビジネスの継続性を確保するために欠かせない要素です。

コンプライアンスの具体的な内容

コンプライアンスの対象には、以下のようなものがあります。

1.法令の遵守

労働法や税法、消費者保護法、環境関連法など、企業が守るべき法律全般を遵守することです。たとえば、労働時間の管理や適切な税金の申告などがこれに該当します。

2.規則・ルールの遵守

業界団体が定めるガイドラインや、企業内部で制定された行動規範や倫理規定もコンプライアンスの範囲に含まれます。これには、顧客情報の適切な取り扱いや、ハラスメント防止対策が含まれます。

3.社会的責任の遂行

法律や規則だけでなく、社会の期待に応える行動を取ることもコンプライアンスの一部です。たとえば、環境保護への取り組みや、地域社会への貢献活動などが挙げられます。

4.倫理的行動

法律には違反していない場合でも、不正や不道徳な行為を行わないことです。たとえば、過度な広告や誤解を招くようなマーケティング活動は倫理的に問題視されることがあります。

コンプライアンスが企業にもたらす効果

コンプライアンスを徹底することで、以下のような効果が期待できます。

1.社会的信頼の獲得

法令や倫理に基づく行動を行う企業は、顧客や取引先、投資家などから信頼を得ることができます。この信頼は、ブランド価値の向上や取引の安定化につながります。

2.リスクの低減

法令違反や不正行為による罰則や訴訟のリスクを未然に防ぐことができます。また、これにより企業の評判が損なわれるリスクも低減します。

3.内部統制の強化

コンプライアンスを徹底する過程で、組織内のルールや手続きを整備することが求められます。これにより、業務の透明性や効率性が向上し、不正の発生を防ぐ仕組みが強化されます。

4.従業員のモチベーション向上

コンプライアンスが徹底される環境では、公正で誠実な職場環境が整備されるため、従業員の働きやすさやモチベーションが向上します。

コンプライアンスの具体例

具体例として、以下のような取り組みが挙げられます。

個人情報保護法への対応

顧客の個人情報を適切に管理し、漏えいを防止するための対策を講じる。

労働基準法の順守

適正な労働時間管理を行い、従業員が過剰な負担を強いられないようにする。

内部通報制度の整備

従業員が不正や法令違反を発見した際に、安心して通報できる仕組みを作る。

コンプライアンスの重要性

現代のビジネス環境では、コンプライアンスは単なる「守らなければならないもの」ではなく、企業の競争力を高めるための戦略的な要素とされています。コンプライアンス違反による不祥事は、企業の評判を大きく傷つけ、信頼を失う結果を招きます。そのため、あらゆる業界でコンプライアンスが重視されるようになり、経営戦略に組み込まれるケースが増えています。

特に、グローバル化が進む中で、異なる国や地域の法令や文化的価値観に対応することが求められています。これにより、コンプライアンスはより複雑化し、専門的な知識や仕組みが必要とされています。


コンプライアンスとは、法令や倫理を守るだけでなく、企業が社会的責任を果たし、信頼される存在であり続けるための基盤です。従業員一人ひとりがコンプライアンスを意識し、実践することで、組織全体の信頼性や成長力が向上します。コンプライアンスの重要性を理解し、日々の業務に取り入れることが、持続可能な経営を実現する第一歩と言えるでしょう。

コンプライアンスが注目される理由

現代の企業経営において「コンプライアンス」という言葉が頻繁に取り上げられるのは、単なる法令遵守を超え、企業が社会的責任を果たしながら持続可能な成長を実現するために欠かせない要素だからです。では、なぜこれほどまでにコンプライアンスが注目されるのでしょうか?以下に、その背景と具体的な理由を詳しく解説します。

1.社会的信頼の重要性が増している

企業は、単なる利益追求だけでなく、社会に貢献し信頼を得る存在でなければ、長期的な存続が難しい時代を迎えています。企業の行動が透明性を持ち、公正であると認められることが、顧客や取引先、投資家などのステークホルダーからの信頼を築く土台となります。

特に、情報が瞬時に拡散する現代では、不正や違反行為が発覚した際に一気に信頼を失うリスクが高まっています。コンプライアンスを徹底することは、こうしたリスクを未然に防ぎ、信頼を維持するための重要な手段です。

2.法規制の強化と複雑化

各国での法規制が厳格化し、国際的な法制度や規範が進化する中で、コンプライアンスの重要性が増しています。たとえば、日本では労働基準法や個人情報保護法が改正されるたびに、企業に求められる遵守事項が増えています。また、国際ビジネスにおいては、取引先の国や地域ごとに異なる法規制を守る必要があり、グローバルコンプライアンスへの対応が課題となっています。

このように、法規制の強化と複雑化が進む中で、コンプライアンスの徹底は企業の生存戦略の一部と位置付けられています。

3.不祥事による企業リスクの顕在化

過去の企業不祥事を振り返ると、コンプライアンス違反が引き金となって企業の信用が大きく損なわれ、経営に深刻な影響を与える事例が多く見られます。不正会計やハラスメント、個人情報の漏えいなど、違反の種類は多岐にわたります。

これらの問題が発覚すると、法的制裁だけでなく、株価の下落、取引先の喪失、ブランドイメージの低下といった大きな代償を払うことになります。特に、SNSやインターネットの普及により、不祥事の拡散が早まり、影響がさらに拡大しやすい現代において、コンプライアンス違反のリスクを軽視することは、企業経営にとって致命的です。

4.ESG経営と持続可能性への期待

近年、ESG(環境・社会・ガバナンス)経営が注目される中で、企業が社会的責任を果たすことが重視されています。ESG経営とは、企業活動において、環境(E: Environment)、社会(S: Social)、ガバナンス(G: Governance)の要素を考慮し、持続可能な発展を目指す経営手法です。

これは単に利益を追求するだけでなく、地球環境の保全や人権の尊重、透明性の高い組織運営を通じて、社会全体の利益にも貢献する姿勢を指します。

この中で「社会(S)」や「ガバナンス(G)」の分野で求められる取り組みの多くが、コンプライアンスと関連しています。たとえば、人権や労働環境に関する規範を守ること、環境に配慮した行動を取ることなどは、すべてコンプライアンスの一環といえます。こうした活動が投資家や消費者の支持を得る要因となり、企業価値の向上につながるため、コンプライアンスの徹底が求められているのです。

5.働き方改革と職場環境の改善

日本における働き方改革の推進により、企業が遵守すべき労働関連の規制が増加しました。具体的には、労働時間の管理、ハラスメントの防止、育児・介護休業の確保などが挙げられます。

これらの規制を守ることは、単に法的リスクを回避するだけでなく、従業員が安心して働ける職場環境を整備することにもつながります。職場環境が改善されることで、従業員の満足度や生産性が向上し、結果として企業の競争力が高まるのです。

6.投資家や取引先からの要求

企業が社会的責任を果たしているかどうかは、投資家や取引先の判断基準にもなっています。投資家は、コンプライアンスを軽視する企業に対してリスクを懸念し、投資を避ける傾向があります。また、取引先も同様に、不正や違反のリスクを抱える企業との取引を控えることがあります。こうした背景から、企業は外部からの信頼を確保するために、コンプライアンスを重視する必要があります。


コンプライアンスが注目される理由は、企業が法令や社会的規範を守ることが、単なる義務ではなく、持続可能な成長や社会的信頼の基盤として不可欠だからです。法規制の強化や企業不祥事の影響、ESG経営への期待が高まる中で、コンプライアンスの徹底がますます重要になっています。

現代のビジネス環境において、コンプライアンスを軽視することは、企業の存続を危うくするリスクを伴います。逆に、これを徹底することで、信頼される企業としての地位を確立し、長期的な成長を実現できるのです。

ガバナンスとは

ガバナンスとは、直訳すると『統治』『管理』『支配』を意味し、企業活動においては『経営統治』として位置づけられます。これは、企業や組織が適切に運営され、健全な経営を実現するための管理・統制の仕組みを指します。

具体的には、意思決定やリスク管理、経営陣の監視といった活動を通じて、組織が透明性を保ちながら目標を達成できるようにする枠組みです。この枠組みは、企業ガバナンスコーポレートガバナンスとも呼ばれ、企業の経営活動全般を正しい方向へ導くための重要な基盤として機能します。

ガバナンスの基本的な目的

ガバナンスの目的は、組織運営を健全で効果的なものにすることです。具体的には以下のような要素が含まれます。

1.経営の透明性の向上

ステークホルダー(株主、投資家、従業員、取引先など)に対して経営の透明性を確保し、信頼を築く。

2.リスクの管理

経営における潜在的なリスクを早期に察知し、適切に対処することで、損害や混乱を最小限に抑える。

3.意思決定の健全化

客観的で公正な視点から意思決定を行い、組織の利益を最大化する。

4.経営陣の監視

経営陣が過度なリスクを取らないよう監視し、組織全体の利益に反する行動を防ぐ。

ガバナンスの主要な構成要素

ガバナンスを機能させるためには、以下のような仕組みが重要です。

1.取締役会

企業の意思決定を担う最高機関であり、経営戦略や方針を決定するとともに、経営陣を監督する役割を果たします。

2.監査委員会や監査役

財務状況や業務運営の適正性を監査することで、不正や誤りを未然に防ぎます。

3.内部統制システム

業務進め方やリスク管理を体系化し、業務の効率性や適法性を確保する仕組みです。

4.ステークホルダーとの連携

株主や投資家、従業員、取引先など、多様な利害関係者の意見を反映し、全体の利益を考慮する体制を整えます。

ガバナンスの適用分野

ガバナンスは企業運営全般に関わる幅広い分野で適用されます。以下はその一例です。

経営の意思決定

長期的な成長を目指す戦略の策定や、新規事業への投資判断などにおいて、リスクとリターンを慎重に評価します。

財務の透明性

財務報告書や業績データを正確に公開し、ステークホルダーからの信頼を得る。

倫理的行動の促進

不正行為や腐敗を防ぐための倫理基準を設定し、経営陣や従業員に徹底します。

ガバナンスが求められる理由

ガバナンスが求められる理由は、企業が公正で透明性のある運営を行い、社会や市場からの信頼を得るためです。ガバナンスが強化されている企業は、リスク管理が徹底されており、経営における不正やトラブルの発生が抑えられるため、持続的な成長が可能になります。

また、ガバナンスは、企業の社会的責任(CSR)やESG経営とも深く関連しており、持続可能な社会の実現に寄与する役割も担っています。


ガバナンスとは、企業が持続可能な成長を遂げるために必要な管理・監視の仕組みです。透明性や公平性を確保しつつ、リスクを最小限に抑える役割を果たします。現代の企業運営において、ガバナンスは信頼を築く基盤であると同時に、変化の激しい環境で競争力を維持するための重要な要素です。

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ガバナンスが注目される理由

近年、『ガバナンス』という言葉は企業経営において重要なキーワードとして広く注目されています。特に、株主やステークホルダーとの信頼関係を構築し、企業の持続可能な成長を支える仕組みとして、その重要性がますます高まっています。ここでは、ガバナンスが注目される具体的な背景について詳しく解説します。

1.企業不祥事の増加と透明性の必要性

ガバナンスが注目される大きな理由のひとつに、過去の企業不祥事の増加があります。不適切な会計処理、情報の隠蔽、労働環境の不備など、さまざまな問題が明るみに出るたびに、企業の信頼性が損なわれてきました。これらの事例は、株主や消費者、取引先などのステークホルダーに対する責任が十分に果たされていない結果とも言えます。

こうした背景から、企業経営の透明性と説明責任が求められるようになりました。ガバナンスは、これらの課題に対応するための仕組みとして機能します。具体的には、取締役会の構成や監査体制の強化を通じて、経営者の判断が適切かつ公正であることを監視し、企業の信頼性を高める役割を果たします。

2.持続可能な成長への期待

現代のビジネス環境では、企業が短期的な利益追求に終始するだけでなく、持続可能な成長を目指すことが求められています。これは、気候変動や社会問題への対応が企業の社会的責任として注目されるようになったためです。ガバナンスの枠組みの中では、ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みが重要な要素として位置づけられています。

たとえば、企業が環境保護や人権問題に配慮した事業を行うことは、単に倫理的な観点からだけでなく、長期的に企業価値を高める上でも重要です。このような取り組みがステークホルダーから評価されるためには、ガバナンスによる適切な監視と実行が欠かせません。

3.グローバル化による競争環境の変化

企業の活動範囲が国内市場から国際市場へと広がる中で、国際的なルールや基準に従った経営が求められるようになりました。特に、多国籍企業や輸出に依存する企業にとって、こうした基準に対応することは、海外での信頼を得て競争力を高める重要な手段となります。

ガバナンスは、企業がグローバル市場で信頼を獲得するための基盤として重要な役割を果たします。たとえば、国際的な会計基準(IFRS)の適用や、外国人取締役の登用などは、グローバルガバナンスの一環として進められている施策です。これにより、投資家や取引先からの信頼を得やすくなり、競争力を高めることができます。

4.デジタル化の進展とリスクの多様化

企業活動がデジタル化する中で、新たなリスクが生まれています。たとえば、サイバーセキュリティの脅威やデータプライバシー問題がその一例です。こうした新しい課題に対応するためには、従来型のガバナンスだけでなく、デジタル分野を含めた包括的な経営統治が必要です。

これに伴い、ガバナンスの範囲は広がり、単なる内部統制にとどまらず、技術や情報の管理能力も含まれるようになりました。たとえば、情報セキュリティ委員会を設置する企業が増えているのは、デジタル時代における新たなガバナンス強化の一例です。

5.株主やステークホルダーからの圧力

最後に、株主やその他のステークホルダーからの圧力も、ガバナンスが注目される理由として挙げられます。株主の利益を最大化することはもちろん、従業員、取引先、地域社会といった多様なステークホルダーの期待に応えることも求められています。

特に株主総会における経営陣への質問や提案が活発化している中で、企業はより効果的なガバナンスを構築しなければなりません。これにより、経営の健全性が保たれ、長期的な成長が可能になるのです。


ガバナンスが注目される理由は多岐にわたりますが、共通して言えるのは、企業が社会的信頼を得て、持続可能な成長を目指すために不可欠な仕組みであるという点です。

透明性や説明責任を重視するガバナンスの強化は、現代の企業経営において避けては通れない課題であり、企業が持続可能な成長を実現するために極めて有効な取り組みです。また、これらの取り組みを通じて、企業価値の向上が期待され、長期的な競争力の強化にもつながります。

コンプライアンスとガバナンスの違い

コンプライアンスガバナンスは、会社が健全に運営されるための重要な要素ですが、その目的や役割には明確な違いがあります。これらの違いを理解することは、組織運営を効果的に進めるために欠かせません。以下では、コンプライアンスとガバナンスがどのように異なり、どのように補完し合うのかを詳しく解説します。

目的と視点の違い

コンプライアンスの目的は主に「ルールを守ること」です。これは、法令や規則、社会的倫理に従うことで企業が法的なリスクを回避し、社会的信頼を得ることを目指します。一方、ガバナンスの目的は「組織を適切に管理・統治すること」です。ガバナンスでは、経営陣が適切な意思決定を行い、組織全体が透明性と効率性を保ちながら目標を達成することに重点を置きます。

具体的に言えば、コンプライアンスは「やってはいけないことをしない」ための仕組みであり、ガバナンスは「やるべきことを効果的に行う」ための枠組みと言えます。このように、視点が防御的か、あるいは能動的かという点で大きな違いがあります。

取り組み方の違い

コンプライアンスは、「ルール遵守を現場レベルで徹底する仕組み」に焦点を当てています。たとえば、社員に対するコンプライアンス教育や、内部通報制度の導入、不正行為の監視体制などが該当します。これにより、従業員一人ひとりが法令や規則を守る行動を促されます。

一方、ガバナンスは、「組織全体を適切に管理する仕組み」に注力します。たとえば、取締役会の設置や監査役の選任、リスク管理の枠組みづくりなど、組織の中枢が行う活動が中心です。ガバナンスは、経営トップの意思決定やリスク管理が適切に行われているかを監視し、企業全体の健全性を維持する役割を果たします。

対象範囲の違い

コンプライアンスの対象は、現場レベルでの具体的な業務の流れや個人の行動に重点が置かれます。具体的には、営業担当者が競争法を守る、会計担当者が税法を遵守するといった行動が含まれます。これは、組織全体が不正行為や違法行為に巻き込まれないよう、基盤を整えることが目的です。

ガバナンスの対象は、経営陣や組織全体の運営体制にあります。たとえば、取締役会が経営計画を策定する際の透明性や、外部監査機関が企業活動を評価する仕組みなどが該当します。このように、ガバナンスは組織の「運営の骨格」を形成する役割を担います。

コンプライアンスとガバナンスの相互関係

コンプライアンスとガバナンスは、それぞれ独立した役割を持ちながらも、相互に補完し合う関係にあります。たとえば、ガバナンスが適切に機能し、経営陣がコンプライアンスを重視する方針を打ち出すことで、ルール遵守の文化が組織全体に浸透します。また、コンプライアンスが守られていることで、ガバナンスの枠組みが信頼され、経営の健全性が確保されます。

たとえば、会社が内部通報制度を設ける際、通報内容を適切に処理する仕組みが必要です。この仕組みはコンプライアンスの一部ですが、その運用が透明性を持つかどうかはガバナンスの枠組みによります。このように、コンプライアンスの運用とガバナンスの仕組みが連携することで、企業全体が持続可能な成長を目指すことが可能になります。

なぜ両者をバランスよく強化する必要があるのか

コンプライアンスだけを重視すると、法令を守ることに偏りすぎ、組織としての創造性や効率性が低下するリスクがあります。一方、ガバナンスだけに力を入れると、現場レベルでの法令違反が見過ごされる可能性があります。

たとえば、ある企業が労働基準法を遵守するために厳格なルールを設定したとします。しかし、そのルールが実際に現場で守られているかは、ガバナンスの監視がなければ確認できません。一方で、ガバナンスがどれほど透明性の高い運営を目指しても、現場での法令違反が頻発すれば、組織全体の信頼は失われます。このような理由から、両者をバランスよく強化することが重要なのです。


コンプライアンスとガバナンスは、企業の健全な運営を支える両輪のような存在です。コンプライアンスは現場レベルでの法令遵守を徹底し、ガバナンスは経営全体の透明性と効率性を確保します。

この2つの概念を明確に区別し、それぞれの役割を正しく理解することで、企業はより持続可能な成長を実現することができます。そして、この両者を強化することが、社会的信頼を得る上で不可欠な要素となります。

コンプライアンスとガバナンスはなぜ強化するのか

ここまで述べてきたように、企業活動において『コンプライアンス』と『ガバナンス』は、どちらも欠かすことのできない重要な要素です。しかし、これらを単に整備するだけでは不十分で、時代の変化に合わせて継続的に強化していく必要があります。なぜコンプライアンスとガバナンスを強化する必要があるのか、その背景と理由を詳しく解説します。

1.社会的信頼の確保と維持

企業が社会から信頼される存在であり続けるためには、コンプライアンスとガバナンスをしっかりと機能させることが不可欠です。不正会計や情報隠蔽、労働問題などの企業不祥事が報道されるたびに、その企業は顧客や取引先、投資家からの信頼を失い、経営危機に陥ることがあります。

具体的には、従業員への教育プログラムの実施や、内部監査体制の強化といった方法が効果的です。

コンプライアンスがもたらす成果

法律や規則を守り、不正や違法行為を防ぐことで、社会的な信頼を損なうリスクを回避します。たとえば、個人情報保護法の遵守や、環境関連法規への対応がこれに該当します。

ガバナンスがもたらす成果

経営陣が透明性を重視して意思決定を行い、社会的責任を全うする仕組みを整えることで、組織全体の信頼性を向上させます。


これらが適切に機能すれば、企業は長期的に信頼され、ステークホルダーとの良好な関係を維持できます。

2.法的リスクの回避

企業が直面するリスクの中でも、法的リスクは特に大きな影響を及ぼします。違法行為が明るみに出れば、罰則や賠償金だけでなく、ブランドイメージにも深刻なダメージを与えます。しかし、コンプライアンスとガバナンスを徹底することで、こうしたリスクを未然に防ぐとともに、トラブル対応にかかるコストや時間を削減するといったメリットを得ることができます。

コンプライアンスがもたらす成果

従業員一人ひとりが法令や社内ルールを守れるよう、教育や監視体制を整えることは、法的リスクを未然に防ぐ基本的な手段です。たとえば、反社会的勢力との取引を防ぐ仕組みや、反贈収賄法に対応したガイドラインの策定が挙げられます。

ガバナンスがもたらす成果

経営陣がリスク管理を的確に実施し、内部統制の仕組みを整えることで、企業全体として法的リスクに対する対応力が向上します。特に、監査役や取締役会が定期的に法令遵守を確認することが重要です。

3.事業の持続可能性を支える

企業が長期的に成長を続けるためには、持続可能性を意識した経営が欠かせません。環境問題や社会的課題に対する取り組みが求められる現代において、コンプライアンスとガバナンスの強化は、持続可能な事業運営を支える基盤となります。

持続可能な成長を支えるためには、ESG課題への対応を組織の経営戦略に組み込む方法や、透明性を高めるための定期的な情報開示が重要です。

コンプライアンスがもたらす成果

法令や社内ルールを従業員一人ひとりが確実に守るために、教育や監視体制を整えることは、企業の社会的責任を果たす第一歩です。たとえば、環境法規の遵守や労働関連法規への対応を通じて、社会からの信頼を築くことができます。これにより、社会的課題に対応した経営基盤を構築し、法的リスクを未然に防ぐことが可能です。

ガバナンスがもたらす成果

ESG課題(環境・社会・ガバナンス)に対応した経営方針を策定し、透明性を高めることは、ステークホルダーの信頼向上につながります。経営陣が適切なリスク管理を行い、内部統制や監査体制を整えることで、持続可能な成長を目指す企業体制を構築できます。これにより、投資家や顧客、取引先などの期待に応え、長期的な事業の安定と成長を実現できます。

4.グローバル化への対応

企業が国際市場で活動する中で、グローバル基準に沿った経営が求められています。国際的な取引では、各国の法令やルールを守るだけでなく、透明性や倫理観も厳しく問われます。

グローバル市場での信頼を得るためには、国際的な会計基準の採用や、各国の法令に対応するための現地チームの設置といった方法が有効です。

コンプライアンスがもたらす成果

各国の法律や文化に対応するため、グローバルコンプライアンス体制を整備することが重要です。たとえば、海外での反贈収賄規制に対応するだけでなく、取引先や製品を作る過程で働く人々の人権を守る仕組みをしっかりと運用することが求められます。

ガバナンスがもたらす成果

国際的な投資家からの信頼を得るためには、透明性の高い経営が欠かせません。独立性のある取締役会や監査体制を整えることで、グローバル基準に沿った経営を実現します。

5.組織全体の効率性向上

コンプライアンスとガバナンスの強化は、組織全体の効率性向上にも寄与します。ルールが明確に定められ、適切な管理体制が整っていることで、社員が安心して業務に集中できる環境が生まれます。

ルールを明確化し、管理体制を整える方法として、業務の流れの可視化やデジタルツールの活用が挙げられます。これにより、業務の効率化とリソース(人材、資金、時間などの経営資源)の最適化が図れます。

コンプライアンスがもたらす成果

社内規定や業務ルールが整備されていることで、不正行為が減少し、トラブル対応にかかるコストや時間が削減されます。また、仕事の流れが明確化されることで、顧客に提供するサービスの一貫性や迅速な対応が可能となります。

ガバナンスがもたらす成果

取締役会や監査体制がしっかりと機能することで、意思決定のスピードと精度が向上し、経営の効率化が実現します。これにより、限られたリソースを効率的に活用し、サービスの質の向上と競争力の強化を実現できます。


コンプライアンスとガバナンスの強化は、法的リスクの回避や信頼性の向上だけでなく、長期的な競争力の強化や事業の持続可能性を支えるといった多くのメリットを企業にもたらします。これらの取り組みは、短期的な課題解決にとどまらず、企業の長期的な価値向上や競争力強化に直結します。

また、グローバル化やESGへの対応が求められる現代において、コンプライアンスとガバナンスを一体的に強化することが、企業の未来を切り開き、さらなる成長を実現する鍵となるのです。

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コーポレートガバナンスコードと基本原則

コーポレートガバナンスコードガバナンスコード)は、企業が健全な経営を行い、社会的信頼を確保するための指針として、各国で策定されています。このコードは、企業が株主やステークホルダーに対して透明性のある経営を実現し、長期的な価値創造を目指すための仕組みを提供するものです。

ここでは、ガバナンスコードとはどのようなものか、その基本原則、そして日本版コードの特徴について解説します。

コーポレートガバナンスコードとは?

ガバナンスコードとは、企業が取るべき経営の指針を示した枠組みです。具体的には、株主や投資家をはじめとするステークホルダーの利益を保護し、企業価値の向上を目指すために設けられています。このコードは法的拘束力を持つわけではありませんが、「原則に従うか、さもなくば説明せよ(comply or explain)」という仕組みを採用し、企業に自主的な取り組みを促しています。

日本においては、2015年に東京証券取引所が「コーポレートガバナンス・コード」を策定し、その後も改訂を重ねています。このコードは、上場企業が公正で透明性のある経営を行うことを促進し、投資家との信頼関係を強化するために重要な役割を果たしています。

ガバナンスコードが求める基本原則

コーポレートガバナンスコード(ガバナンスコード)は、企業が健全な経営を行い、長期的な価値を創出するための指針を示しています。その中心となるのが、コードが掲げる基本原則です。これらの原則は、株主をはじめとする多様なステークホルダーとの信頼関係を構築し、企業価値を最大化するために欠かせない要素です。ここでは、ガバナンスコードが求める基本原則を詳しく解説します。

1.株主の権利の尊重と平等性の確保

株主は企業の所有者であり、その権利を守ることはガバナンスの最優先事項です。すべての株主が平等に扱われることを保証し、以下のような取り組みが求められます。

株主総会の運営の透明性
株主が十分な情報を基に議決権を行使できるよう、重要な情報を事前に適切に提供することが求められます。

少数株主の保護
多数株主による権利の濫用を防ぐ仕組みを整え、少数株主が不当に不利益を被らないようにすることが重要です。


これらの取り組みによって、株主が安心して投資を行い、企業価値向上に寄与することが期待されます。

2.ステークホルダーとの効果的な協働

企業は株主だけでなく、従業員、取引先、地域社会といった多様なステークホルダーと関わりながら活動しています。これらのステークホルダーと協力し、相互の利益を高めることが求められます。

従業員の重要性
従業員が安心して働ける環境を整えることは、企業の持続可能な成長の基盤となります。労働環境の改善やダイバーシティ推進(多様な背景や価値観を持つ人々を尊重し、多様性を活かした職場づくりを目指す取り組み)などが具体的な取り組み例です。

地域社会への貢献
地域社会との良好な関係を築き、企業活動を通じて社会的価値を提供することが求められます。たとえば、地域の環境保護活動への参加や地元雇用の促進が挙げられます。


こうした協働によって、企業が社会から信頼される存在となり、長期的な成長が可能になります。

3.適切な情報開示と透明性の確保

企業が株主や投資家から信頼を得るためには、適切な情報開示が欠かせません。これは財務情報だけでなく、非財務情報も含まれます。

財務情報の開示
投資家が企業の状況を正確に把握できるよう、決算情報や経営戦略を適時かつ正確に開示することが求められます。

非財務情報の重要性
近年では、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)に関する情報開示が重視されています。企業が環境保護や人権保護にどのように取り組んでいるかが、投資判断における重要な要素となっています。


透明性のある情報開示は、企業の信頼性を高め、持続可能な経営を後押しします。

4.取締役会等の責務の適正な遂行

取締役会は企業の意思決定の中枢であり、その実効性が企業全体のガバナンスを左右します。取締役会の役割を果たすためには、次のような取り組みが必要です。

独立社外取締役の活用
社外取締役を取締役会に加えることで、外部からの客観的な視点が加わり、経営の公正性が高まります。

多様性の確保
女性や外国人を含む多様な背景を持つ取締役を選任することで、意思決定の幅を広げ、変化の激しい経営環境に対応しやすくなります。

リスク管理の強化
経営リスクを適切に予測し、迅速に対応する仕組みを取締役会内で整えることが重要です。


これらの取り組みを通じて、取締役会が企業の方向性を正しく導く役割を果たします。

5.株主との対話

株主は企業経営に対する重要な意見を持つ存在であり、建設的な対話が企業価値を高める原動力となります。

株主の意見の反映
株主との対話を通じて、経営方針や施策に対する意見を吸い上げる仕組みが求められます。これにより、経営陣が市場の期待を理解し、適切な意思決定を行うことが可能になります。

IR活動の充実
投資家向け広報(IR)を積極的に行い、経営状況や将来の計画を明確に伝えることで、株主からの信頼を得ることが重要です。


これらの取り組みを通じて、株主との協力的な関係が企業価値の向上と長期的な成長の基盤を支えます。

日本のコーポレートガバナンスコードの特徴

日本のガバナンスコードは、海外のコードと比較して「株主との対話」に重きを置いている点が特徴的です。これは、日本企業が歴史的に経営陣主導の経営を行ってきた中で、株主とのコミュニケーションが不足していた反省に基づいています。また、日本版コードでは、持続可能な成長を目指し、女性や外国人を含む多様性の確保にも焦点を当てています。


コーポレートガバナンスコードは、企業が健全で透明性の高い経営を行い、社会的信頼を確保するための重要な枠組みです。

ガバナンスコードは単なる規範にとどまらず、企業が変化の激しい経営環境に適応し、長期的な成長を実現するための実践的なガイドラインです。企業がこの原則をいかに真摯に取り組むかが、競争優位性を確立するための重要な要素となります。

まとめ

コンプライアンス」と「ガバナンス」は、企業が社会的信頼を獲得し、持続可能な成長を実現する上で欠かせない重要な要素です。本コラムでは、それぞれの概念や重要性、さらに相互の関係性について解説しました。

コンプライアンスは「ルールを守る」ことに焦点を当て、法令遵守や倫理的な行動を通じて企業の土台を支えるものです。一方で、ガバナンスは「組織を適切に管理・統治する」ための枠組みを提供し、経営の透明性や効率性を高める役割を果たします。この2つの取り組みは互いに補完し合い、企業価値の最大化や長期的な信頼構築に寄与します。

また、コーポレートガバナンスコードは、これらの取り組みを具体化し、企業が社会や投資家との信頼関係を強化するための指針を示しています。企業がこれらを適切に実行することで、複雑化する経営環境やグローバルな競争に対応しやすくなり、持続的な発展の基盤を築けるのです。

これからの時代、企業に求められるのは、法令を守るだけでなく、社会的責任を果たしながら透明性の高い経営を行うことです。「コンプライアンス」と「ガバナンス」を両輪としてバランスよく強化し、ステークホルダーから信頼される企業を目指すことが、未来への大きな一歩となるでしょう。

このコラムが、読者の皆様にとって、企業運営やビジネス現場で活用できる知見を提供するものとなれば嬉しく思います。

監修者

髙𣘺秀幸
髙𣘺秀幸株式会社秀實社 代表取締役
2010年、株式会社秀實社を設立。創業時より組織人事コンサルティング事業を手掛け、クライアントの中には、コンサルティング支援を始めて3年後に米国のナスダック市場へ上場を果たした企業もある。2012年「未来の百年企業」を発足し、経済情報誌「未来企業通信」を監修。2013年「次代の日本を担う人財」の育成を目的として、次代人財養成塾One-Willを開講し、産経新聞社と共に3500名の塾生を指導する。現在は、全国の中堅、中小企業の経営課題の解決に従事しているが、課題要因は戦略人事の機能を持ち合わせていないことと判断し、人事部の機能を担うコンサルティングサービスの提供を強化している。「仕事の教科書(KADOKAWA)」他5冊を出版。コンサルティング支援先企業の内18社が、株式公開を果たす。

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