業務効率化やコスト削減だけではない、デジタル化の本当のメリットとは?
本記事では、デジタル化の基礎からメリット・デメリットまでを紹介し、実践に活かせるヒントについて解説します。
Contents
デジタル化の基礎知識

経営改善と人事改革の第一歩
「デジタル化」と聞くと、「紙をなくすこと」や「業務のIT化」といったイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし、真のデジタル化はそれだけではありません。
デジタル化とは、これまで紙や人の手で行っていた業務や情報管理を、デジタル技術を活用してより“効率的”かつ“正確”に変える取り組みです。
たとえば、従業員の勤怠を紙で集計していたものを、クラウド勤怠ツールに変えることで、リアルタイムに勤怠状況を把握できるようになります。あるいは、人事評価の記録を紙やExcelで行っていたものを、評価システムに切り替えることで、評価の透明性やフィードバックのスピードが格段に向上します。
つまり、デジタル化はただの「作業の置き換え」ではなく、
- コスト削減
- 業務の時短
- 人材活用の最適化
- 経営判断のスピードアップ
といった、経営の根幹に関わる“メリット”を生み出す可能性を秘めているのです。
特に中堅・中小企業では、「今までのやり方」を見直すことで、限られた人員や時間、資金といった経営資源(リソース)でも大きな成果を出す仕組みづくりが必要とされています。デジタル化は、その強力な武器になります。
これからの時代、「人の力」と「デジタルの力」をどう組み合わせるかが、企業成長を左右します。
本コラムでは、デジタル化の基本的な考え方から、具体的な取り組み手順、注意すべきポイント、活用できる最新ツールまで、押さえておきたい内容をわかりやすく整理して解説していきます。
デジタル化が求められるようになった背景

なぜ“今”なのか?
「デジタル化が必要だ」と耳にする機会が増えた昨今。ですが、なぜ今これほどまでに注目されているのでしょうか?
その背景には、働き方の変化、顧客ニーズの多様化、そして市場のスピード感の加速といった、経営環境の大きな転換点があります。
デジタル化は“時代の流れ”の集大成
デジタル化の源流は、1970年代のコンピューター導入にさかのぼります。当時は会計処理や給与計算などの反復作業を効率化するために、企業がこぞってIT化に踏み出しました。
1990年代にはインターネットが普及し、メールや社内ネットワークを使った情報共有が当たり前に。
2000年代にはクラウドやスマートフォンが登場し、「どこでも・誰とでも」仕事ができる時代に突入しました。
そして現在、AI(人工知能)やビッグデータ(膨大なデータを収集・分析して活用する技術)、IoT(Internet of Things:モノがインターネットにつながり情報をやり取りする仕組み)といった技術革新が、業務の自動化や分析、個別最適化を可能にしています。
「業務を早く・正確に」から、「事業をどう変えるか」へ――。デジタル化は、戦略の中心に位置するようになったのです。
デジタル化が解決する課題とは?
経営者や人事担当者が直面する課題は年々複雑化しています。
人手不足・コスト増・従業員のモチベーション低下・働き方改革への対応…。こうした課題に共通する解決策が、「デジタル化による業務の見直し」です。
たとえば、
- RPA(Robotic Process Automation:定型的な業務を自動で処理する仕組み)の導入で経費処理を自動化 → 人的ミスの削減、処理スピードの向上
- クラウド勤怠管理でリモートワーク対応 → 勤怠の見える化と公平な評価につながる
- 人事データの可視化 → 適材適所の配置や離職予兆の早期把握が可能に
これらはすべて、経営のスピードと精度を高め、企業の競争力を底上げする効果をもたらします。
デジタル化の目的は「利益」だけではない
デジタル化は、業務の効率化やコスト削減だけでなく、「従業員の創造性を引き出すこと」「顧客との関係を深めること」にも大きな意味があります。
たとえば、
- 社内SNSやチャットでの情報共有 → チーム連携が活発に、社内の風通しが改善
- 顧客行動データの分析 → ニーズに即した提案で顧客から選ばれ続ける関係を築く
- ペーパーレス化やリモート会議の定着 → 環境負荷を軽減し、持続可能な経営を実現
つまり、「人が力を発揮する環境を整える」ことが、今のデジタル化の本質なのです。
中堅・中小企業こそ、今がチャンス
大企業が多額の投資をして始めたデジタル化。今や、中小企業でも「手の届く範囲」で始められるツールが数多く登場しています。
クラウド会計、タスク管理(やるべき仕事や作業を整理・管理する仕組み)、チャットツール、AI面談記録、簡易RPA…。これらを段階的に導入し、自社に最適化していくことが、経営体質の強化につながります。
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デジタル化では何が解決できるか

経営・人事の“見えない課題”を可視化する力
「これまで当たり前のように行ってきた業務」に、ムダや非効率が潜んでいるとしたら?
その正体を浮き彫りにし、迅速に対応できる武器こそ、デジタル化です。
ここでは、デジタル化によって“具体的に何が変わるのか”を見ていきましょう。
情報の可視化:経営判断を“感覚”から“データ”へ
最も大きな変化のひとつが、業務や組織の状態を「見える化」できることです。
たとえば、紙の報告書や口頭での共有では把握しきれなかった業績や人事データも、
ダッシュボードやグラフで一目で把握可能になります。
- 売上やコストの推移をリアルタイムで見ながら、即座に経営判断ができる
- 在庫管理システムの導入で、欠品や余剰を未然に防ぐ戦略が立てられる
- 社員の勤怠状況・評価状況を可視化し、マネジメントの精度が向上
つまり、「何となくこうだろう」から、「数字がこう示している」へ。
デジタル化は、直感に頼らない経営と人事戦略の実行を可能にするのです。
リモートワークの促進:場所に縛られない生産性を
コロナ禍以降、一気に広がったリモートワーク。その実現を支えたのが、まさにデジタル化です。
- ZoomやTeamsなどの会議ツールで、遠隔でも顔を見て会話できる
- クラウド上でのファイル共有やプロジェクト管理により、どこにいてもチームで動ける
- 働く場所にとらわれないことで、通勤ストレスや時間の無駄をカット
柔軟な働き方は、従業員の満足度を高めるだけでなく、離職リスクの低減にも直結します。
経営者視点で言えば、人材の流動性に対応できる「しなやかな組織」をつくる基盤が整うのです。
顧客対応の迅速化とパーソナライズ:選ばれる企業になるために
今や、顧客は“待ってくれない”時代。そんな中で重要なのが、スピードと個別対応力の強化です。
- チャットボットやAIによる24時間対応 → 問い合わせの即時対応が可能に
- CRM(Customer Relationship Management:顧客との関係を管理・強化する仕組み)を活用した顧客データの一元管理 → 顧客ごとの最適な提案や対応が実現
- データをもとにしたリコメンドやDM配信 → 購入意欲の高いタイミングを逃さない
これらは、単に業務を効率化するだけでなく、「選ばれる企業」に進化するための土台となります。
デジタル化は「企業の見えない弱点」を明るみにする光
見えなかった業務のムダ、人材のポテンシャル、顧客の本音…。
それらを可視化し、すばやく対応できる体制を整えることこそ、今の経営に求められている視点です。
デジタル化によるメリットとデメリット

導入前に知っておきたい“光と影”
「デジタル化は良いことばかり?」——そうとは限りません。
導入の成功には、期待されるメリットと乗り越えるべきデメリットの両方を正しく理解しておくことが重要です。
ここでは、デジタル化の光と影を、現場に即した視点で整理してみましょう。
【メリット】企業成長を加速させる5つの追い風
1.業務効率と生産性の向上
RPAなどの導入により、定型的な業務を自動化できます。
たとえば、請求書の処理や経費精算など、毎回ほぼ同じ手順で行う事務作業を機械に任せることで、
従業員はより重要な「企画立案」「顧客対応」といった考える仕事や人と関わる業務に集中できるようになります。
2.コスト削減の実現
ペーパーレス化やリモートワークの定着により、紙代・印刷代・交通費・オフィスコストの削減が可能に。
たとえば、オンライン会議の導入により、出張や会場費といった“見えにくいコスト”を大きく圧縮できます。
3.データの戦略的活用
デジタル化によって集まるデータを活用すれば、経営の判断は「経験や勘に頼る」やり方から、根拠のある事実にもとづいた判断へと進化します。
たとえば、ビッグデータを分析することで、売れ筋商品の傾向やお客様の行動パターンを読み取り、より的確で先を見据えた戦略を立てることができるようになります。
日々の業務データを蓄積していくことで、精度の高い分析や、より深いインサイト(洞察)を得られるようになる点も、デジタル化の大きなメリットです。
4.顧客体験の向上
CRMやAIチャットボットの導入により、24時間体制でのサポートが可能となり、一人ひとりのニーズに合わせた対応も実現できます。
これにより、顧客満足度が高まり、リピートや口コミにつながる「ファンづくり」がしやすくなります。
5.組織文化の変革
デジタルツールの活用によって、情報が隠されずにスムーズにやりとりされる風通しの良い社内文化が育まれます。
部門をまたいだ情報共有が活発になり、社員一人ひとりが「自分たちで会社を動かしている」という実感を持てるようになることも期待できます。
【デメリット】乗り越えるべき現実と向き合う
1.初期コストと導入ハードル
システムの導入費用や、従業員への教育コストは決して小さくありません。
特に中小企業では、「元が取れるのか?」という不安もあるかと思いますが、導入効果を可視化しながら、無理のないステップで進めることが成功の決め手となります。
2.セキュリティリスクの増加
デジタル化が進むほど、サイバー攻撃や情報漏洩といったリスクが発生する可能性も高まります。
「誰が・いつ・どの情報にアクセスできるか」を明確にし、ウイルス対策やアクセス制限など、情報管理のルール整備が必須です。
そのためにも、適切なセキュリティ対策を講じ、安全なデータ管理環境を確保することが、安心してデジタル化を進めるための大前提となります。
3.従業員の“慣れ”への対応
新しいシステムやツールに対する戸惑いや抵抗感は、どの企業にもあります。
丁寧な導入説明、OJT(On the Job Training:実際の業務を通じて行う現場指導)でのサポート、問い合わせ対応窓口の設置など、現場の「わからない」を放置しない仕組みづくりが求められます。
導入を成功に導くコツは、“小さく始めて、大きく育てる”こと
デジタル化は多くのメリットをもたらす一方で、準備不足のまま進めると新たな問題が発生するリスクもあります。
だからこそ、段階的に進め、現場の声に耳を傾けながら育てていく姿勢が不可欠です。
完璧を目指す必要はありません。まずは「困っている業務1つ」からデジタル化を始めることが成功の第一歩です。
成果が見えれば、現場も前向きに変わっていきます。
デジタル化の手順

デジタル化を成功させる5つのステップ:失敗しないための導入の進め方
「デジタル化が必要なのはわかっているけれど、何から始めればいいかわからない」
そんな声を多くの現場で耳にします。重要なのは、一足飛びに導入するのではなく、段階的に“狙いを定めて”進めていくことです。この記事では、デジタル化を無理なく、効果的に進めるための「正しい方法」として、5つのステップをご紹介します。
1.現状をしっかり見つめる(現状分析)
まずは、今の業務にどんなムダや非効率があるのかを洗い出すことがスタート地点です。
たとえば、紙の書類であふれている業務、社内で何度も手渡しされる申請書などは、デジタル化による改善効果が大きい領域です。
「現場で抱えている問題」や「日々感じている不便さ」から目を逸らさないことが、的確な判断につながります。
そのためにも、既存の業務の流れを客観的に見直し、どこに課題や改善余地があるかを丁寧に把握することが重要です。
2.目的を明確にする(目標設定)
「なぜデジタル化するのか?」をはっきりさせましょう。
たとえば、人手不足を補うためか、コストを削減したいのか、従業員の働き方改革を進めたいのか。
目的があいまいなまま進めると、ツールだけが先行して「使われない仕組み」になる危険性があります。
ゴールが明確であるほど、導入の効果も実感しやすくなります。
3.適したツールを選ぶ(ツール選定)
目的が決まったら、いよいよその課題を解決できるツールの選定です。
たとえば、
- ファイル共有をスムーズにしたい → クラウドストレージ(Google Drive, Dropboxなど)
- プロジェクトを効率化したい → 管理ツール(Backlog, Trello, Asanaなど)
- 社内の連携を強化したい → チャットや社内SNS(Slack, Chatworkなど)
「使いやすさ」「導入のしやすさ」「サポート体制」もチェックポイントです。
導入前には、「本当に必要な機能は何か」「現場で使いやすいか」など、具体的な視点でじっくり検討することが、失敗しないツール選びにつながります。焦らずに比較検討を重ねることが、現場に合った最適なツール導入への近道です。
4.社内に根づかせる(導入とトレーニング)
ツールを導入しただけでは、効果は出ません。
大切なのは、“使いこなせる人を育てる”ことです。
たとえば、新しいソフトの使い方や、仕事の進め方がどのように変わるのか、社員にしっかり説明・教育する場を設けましょう。
既存の業務から新しいツールへの移行をスムーズに進めるためには、段階的な説明と継続的なサポートが欠かせません。特に苦手意識のある従業員に対しては、丁寧に寄り添いながら支援を続けることが効果的です。
5.定期的に見直して、育てる(評価と改善)
導入して終わりではなく、「うまく使えているか?」「もっと改善できることはないか?」を定期的に確認することが重要です。
たとえば、月1回の社内ミーティングで運用状況を共有したり、アンケートで現場の声を集めるなど。
「現場の使いやすさ」と「経営の視点」の両方から見直しを行うことで、より使いやすく、効果的な仕組みに整えていくことができます。
小さな一歩の積み重ねが、未来の競争力をつくる
デジタル化に“完成形”はありません。
だからこそ、まずは「できるところから」「ムリのない範囲で」取り組むことが、長く成果を出すための近道です。
一足飛びにすべてを変えようとするのではなく、現場の声を聞きながら、段階的に進めていく姿勢が成功への鍵となります。
デジタル化とDX化・IT化の違い

混同しがちな3つの概念をわかりやすく整理
「デジタル化」「DX化」「IT化」――いずれも耳にする機会の多い言葉ですが、それぞれの意味を正確に理解して使い分けているでしょうか。
この3つはすべて、企業の業務効率化や競争力強化に役立つ手段である一方で、目的や取り組みの範囲が大きく異なります。
ただし、これらは独立したものではなく、互いに関連しながら企業の成長や変革に影響を与えています。
ここでは、それぞれの違いを具体的な事例とともに詳しく解説し、「自社では何から着手すべきか」を見極めるヒントをお届けします。
1.デジタル化:まずは“紙と手作業”をなくすことから
デジタル化とは、アナログの情報や業務をデジタルに置き換えて、業務のスピード・正確性・共有性を高める取り組みです。
最も身近な例は、「紙の書類をPDFにする」「社内文書をクラウドで管理する」といった作業の電子化です。
デジタル化の目的
- 業務の効率化(作業時間の短縮)
- コスト削減(紙や郵送、保管スペースの削減)
- 情報の検索・共有の容易化
具体例
- 書類のスキャンとデジタル保存
- 電子メールや電子署名の活用
- 勤怠・経費のクラウド管理ツール導入
2.DX化(デジタルトランスフォーメーション):事業そのものを変える取り組み
DX化とは、単なるデジタル化ではなく、デジタル技術を使ってビジネスモデルや組織のあり方を根本から変える取り組みです。
単なる効率化にとどまらず、「企業の在り方」そのものを再構築する戦略的な取り組みといえます。
DX化の目的
- 競争力の強化・新たな価値の創出
- 顧客体験の革新
- 収益源の多様化
具体例
- デジタルマーケティングによる新規市場開拓
- IoTを活用したスマート工場の構築
- AIによるカスタマーサポートの自動化
- 顧客データをもとにした個別対応の強化
3.IT化:業務の一部を“情報技術”で改善する取り組み
IT化とは、情報技術(IT)を業務に取り入れ、日々の仕事の流れや手順の一部を見直して、より効率よく進めるための取り組みです。
導入範囲はDXよりも限定的で、あくまで「現行業務の改善」が主な目的です。
IT化の目的
- 業務の効率化
- 情報の一元管理と見える化
- 作業時間の短縮と、うっかりミスや入力間違いの防止
具体例
- ERPシステム(企業全体の情報や業務をまとめて管理するシステム)による財務管理の効率化
- CRMシステムによる顧客管理の強化
- 人事管理システムによる勤怠・評価管理の自動化
デジタル化・DX化・IT化の違いを図で整理すると?
項目 | デジタル化 | DX化 | IT化 |
---|---|---|---|
主な目的 | アナログ業務の電子化 | 事業・価値の根本的な変革 | 業務プロセスの部分的な改善 |
影響範囲 | 部分的(業務単位) | 全社的(組織・ビジネスモデル全体) | 部門・プロセス単位 |
導入の難易度 | 低〜中(手軽に始めやすい) | 高(中長期の視点が必要) | 中(システム整備が必要) |
成果の特徴 | 業務効率・スピードの向上 | 売上・市場競争力・顧客体験の革新 | 作業ミスの削減・情報管理の最適化 |
事例で見る違い
デジタル化 | 保険会社が紙の申込書をスキャンし、電子保存。検索・管理の効率が向上。 |
DX化 | 小売企業がSNSを使った顧客獲得と個別提案を実現し、売上増とファン獲得に成功。 |
IT化 | 製造業者がERPを導入して財務データを一元管理し、経営判断のスピードが向上。 |
経営判断のヒント:どれから始めるべきか?
- まずは「デジタル化」で足元の業務改善から着手
- 成熟度に応じて「IT化」で業務効率を底上げ
- 将来の成長戦略として「DX化」を計画的に推進
中堅・中小企業にとって、まず取り組みやすいのは「デジタル化」です。社内でデータ活用の基盤が整えば、次に「IT化」、そして中長期で「DX化」へと進んでいく流れが現実的です。
メリットをできるだけ享受するためには

導入して終わりにしないために
デジタル化のメリット――業務の効率化、コスト削減、スピードアップ――を最大限に引き出すためには、単なるツール導入に留まらず、きちんと運用・定着させることが不可欠です。
ここでは、デジタル化を「形だけ」で終わらせないために、押さえておきたい3つのポイントをご紹介します。
業務に合ったツールを選ぶ(適切なツール選定)
たとえば、プロジェクト管理を効率化したいのか、社内のコミュニケーションを円滑にしたいのか。
目的に合わせて最適なツールを選ぶことが、デジタル化成功の第一歩です。
無理に高機能なツールを導入する必要はありません。
実際の現場で「本当に必要な機能」に絞り込んで選ぶことで、無駄なコストを抑え、業務改善に直結する効果を得ることができます。
人を育てる(従業員教育)
どれだけ優れたツールでも、使いこなせる人が育たなければ成果は出ません。
ツールの導入と同時に、現場の社員が使いこなせるようにサポートすることがとても重要です。
たとえば、トレーニングやワークショップを開催して、
- どう使えば仕事がラクになるのか
- どんな場面で活用できるのか
を具体的に伝えることで、現場への定着と活用の広がりが期待できます。
常に見直し、より良く育てる(継続的な改善)
一度ツールを導入しただけでは、すぐに使いにくさや運用のズレが生まれてしまうものです。
だからこそ、定期的に「今の使い方はベストか」を見直すことが必要です。
たとえば、月1回のペースで
- 現場の使いづらさ
- もっと便利にできそうな工夫
を共有する場を設けることで、道具も運用も、より現場になじむ形に育てていくことができます。
「道具を選び」「人を育て」「使いながら育てていく」――これが成功の秘訣
デジタル化の真のメリットは、「導入した瞬間」ではなく、使い続け、磨き上げていくプロセスの中でこそ得られます。
地道な運用改善こそが、確かな業務改革につながっていきます。
デジタル化の代表的なツール

現場で役立つ具体例を押さえる
デジタル化を成功させるには、業務の目的や課題に合わせて最適なツールを選ぶことが欠かせません。
ここでは、実際によく使われている代表的なツールを、用途ごとにご紹介します。
「何から導入すべきか」を考えるヒントにしてみてください。
社内のやり取りをスムーズにする【コミュニケーションツール】
Slack(スラック)
チーム内の連絡をすばやく行えるチャットツールです。
リアルタイムでの情報共有や、グループごとのやりとりがスムーズに行えます。Microsoft Teams(マイクロソフト・チームズ)
チャットだけでなく、ビデオ会議やファイル共有もできる総合コミュニケーションツール。
リモートワークでも、対面に近い形で連携が取れるのが特長です。
タスクやプロジェクトを整理する【プロジェクト管理ツール】
Trello(トレロ)
やるべきことを「カード」として視覚的に整理できるツール。
進捗状況が一目でわかり、タスク管理を直感的に行えます。Asana(アサナ)
プロジェクト単位でタスクを細かく管理できるツール。
期限設定や担当者割り当ても簡単で、チームの仕事を見える化できます。
資料の作成・共有を簡単にする【ドキュメント管理ツール】
Google Drive(グーグルドライブ)
ドキュメントや表計算ファイルをオンライン上で作成・共有・共同編集できるクラウドストレージ。
複数人でリアルタイムに編集作業ができるため、会議資料作成にも便利です。Dropbox(ドロップボックス)
ファイルの保存・共有・同期ができるサービス。
パソコンやスマホ間でスムーズにデータをやり取りでき、データのバックアップにも役立ちます。
経費処理をスピーディーにする【経費精算ツール】
freee経費精算(フリーけいひせいさん)
経費の申請から承認、精算までをオンラインで完結できるツール。
紙の申請書や手入力が不要になり、経費処理にかかる時間を大幅に短縮できます。マネーフォワードクラウド経費
領収書をスマホでスキャンするだけでデータ化できる経費精算サービス。
申請から経理処理までがスムーズになり、ミスも防げます。
顧客との関係を深める【顧客管理ツール】
Salesforce(セールスフォース)
顧客情報を一元管理し、営業活動を効率化できるツール。
過去の商談履歴や対応状況をすぐに確認でき、顧客との関係強化に直結します。HubSpot(ハブスポット)
マーケティング・営業・カスタマーサポートが一体化したCRMツール。
顧客対応の質を高めながら、営業活動の効率化も実現できます。
データを「見える化」して活用する【データ分析ツール】
Tableau(タブロー)
大量のデータをグラフや図表に変換し、誰でも直感的に分析できるツール。
営業データや経営指標の可視化に強みがあります。Power BI(パワー・ビーアイ)
さまざまなデータをまとめて分析・レポート作成できるツール。
ビジネスの現状をリアルタイムで把握し、素早い意思決定をサポートします。
「何を改善したいか」からツールを選ぼう
ツールは数多く存在しますが、目的を明確にして選ぶことが何よりも大切です。
- 社内のやり取りを効率化したいなら、コミュニケーションツール
- タスク管理を整えたいなら、プロジェクト管理ツール
- 顧客対応を強化したいなら、CRMツール
多くのツールは、専用アプリやソフトをダウンロードして利用する形が一般的です。手軽に始められるものも多いため、まずは試してみるところから一歩を踏み出しましょう。
導入するだけで満足せず、現場で実際に利用し、効果を引き出していくことが成功のポイントです。
自社にとって「まずはここを変えたい」という部分から、少しずつ導入を進めるのがおすすめです。
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デジタル化を起点に、未来の競争力を育てる

デジタル化は、いまや現代の企業にとって避けて通れない取り組みです。
単なる業務効率化やコスト削減にとどまらず、組織全体のスピードと柔軟性を高め、次の成長に向かうための土台をつくるものです。
一方で、初期コストやセキュリティリスクといった課題も存在します。
しかし、適切なツール選び、従業員教育の徹底、そして導入後の継続的な改善を地道に積み重ねることで、デジタル化のメリットを確かな成果へとつなげることができるでしょう。
また、デジタル化、DX化、IT化――この3つの概念も、それぞれ役割が異なります。
- デジタル化は、アナログ業務をデジタルに置き換え、効率化を図る取り組み
- IT化は、情報技術を使って業務の一部を効率化する取り組み
- DX化は、デジタル技術で業務やビジネスモデルを抜本的に変革し、新たな価値を創る取り組み
これらを正しく理解し、自社の今の状況や目指すゴールに合わせて活用していくことが、持続可能な成長と未来の競争力強化につながります。
これからさらに進化を続けるテクノロジーの波に乗るためにも、
デジタル化を単なる流行で終わらせず、戦略的に育てていくことが求められます。
小さな一歩を積み重ねながら、未来に向かう力を着実に育てていきましょう。
監修者

- 株式会社秀實社 代表取締役
- 2010年、株式会社秀實社を設立。創業時より組織人事コンサルティング事業を手掛け、クライアントの中には、コンサルティング支援を始めて3年後に米国のナスダック市場へ上場を果たした企業もある。2012年「未来の百年企業」を発足し、経済情報誌「未来企業通信」を監修。2013年「次代の日本を担う人財」の育成を目的として、次代人財養成塾One-Willを開講し、産経新聞社と共に3500名の塾生を指導する。現在は、全国の中堅、中小企業の経営課題の解決に従事しているが、課題要因は戦略人事の機能を持ち合わせていないことと判断し、人事部の機能を担うコンサルティングサービスの提供を強化している。「仕事の教科書(KADOKAWA)」他5冊を出版。コンサルティング支援先企業の内18社が、株式公開を果たす。
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