エンゲージメントが高まると、従業員は仕事に熱意を持ち、自ら考え行動しながら組織の成長に主体的に関わるようになります。では、どのような職場環境がエンゲージメントを高めるのでしょうか?
本コラムでは、そのポイントについて詳しく解説します。
Contents
組織エンゲージメントとは

近年、「組織エンゲージメント」という言葉がビジネスの場で注目されています。組織エンゲージメントとは、従業員が組織に対して持つ心理的な結びつきや主体的な関わりの度合いを指します。単なる満足度や忠誠心とは異なり、「会社のために自ら貢献したい」「この組織の一員として成果を出したい」といった前向きな意識が含まれます。
エンゲージメントの高い従業員は、仕事への意欲が高く、生産性向上や組織の成果に貢献する傾向があります。
組織エンゲージメントの定義
組織エンゲージメントにはさまざまな定義がありますが、代表的なものとして、アメリカの調査会社ギャラップ(Gallup)やシカゴ大学のウィリアム・カーン(William Kahn)教授の研究が挙げられます。
ギャラップの定義
ギャラップ社は、組織エンゲージメントを「従業員が仕事や組織に情熱を持ち、自発的に貢献する姿勢」と定義しています。彼らの調査では、エンゲージメントが高い企業は業績向上や離職率の低下などの成果を上げていることが示されています。
ウィリアム・カーンの定義
カーン教授は、エンゲージメントを「従業員が物理的、認知的、感情的に仕事に没頭する状態」と定義しました。つまり、エンゲージメントの高い従業員は、身体的なエネルギーを持ち、知的な関心を持ち、感情的にも仕事に関与しているということです。
これらの定義からもわかるように、組織エンゲージメントは単に「やる気がある」「満足している」といった表面的なものではなく、会社と従業員が相互に良い関係を築きながら、共通の目標に向かって進んでいく状態を指します。
組織エンゲージメントと類似概念の違い
「エンゲージメント」という言葉は、しばしば「従業員満足度」「ロイヤルティ(忠誠心)」「モチベーション」と混同されがちですが、それぞれ異なる概念です。それぞれの違いを明確にすることで、組織エンゲージメントの本質をより深く理解できます。
1.組織エンゲージメントと従業員満足度の違い
組織エンゲージメント | 従業員満足度 |
---|---|
企業の目標に共感し、主体的に貢献する意識 | 会社の環境や待遇に対する満足感 |
高いほど業績向上に直結する | 高くても企業の成長には必ずしもつながらない |
仕事への没頭・意欲が含まれる | 職場環境や福利厚生の充実による満足感 |
ポイント
従業員満足度が高いからといって、従業員が積極的に企業の成長に貢献するとは限りません。満足していても、現状維持で満足してしまうケースもあります。一方で、エンゲージメントが高い従業員は、会社の成功のために積極的に動き、成果を生み出そうとします。
2.組織エンゲージメントとロイヤルティ(忠誠心)の違い
組織エンゲージメント | ロイヤルティ(忠誠心) |
---|---|
企業の成功のために主体的に行動する | 企業への帰属意識が強く、長く働く意識 |
目標に共感し、積極的に貢献しようとする | 企業に愛着があり、離職を考えにくい |
高いほど成果の向上につながる | 高くても必ずしも成果にはつながらない |
ポイント
ロイヤルティが高い従業員は、会社に対する愛着を持ち、長く勤めたいと考えますが、必ずしも積極的に成果を上げようとするわけではありません。エンゲージメントの高い従業員は、忠誠心だけでなく、自ら考え、行動し、組織の成長に貢献するという意識を持っています。
3.組織エンゲージメントとモチベーションの違い
組織エンゲージメント | モチベーション |
---|---|
組織の目指す方向に共感し、継続的に高い貢献をする | 仕事に対する意欲ややる気 |
会社の方針や文化が影響する | 個々の仕事や環境要因が影響する |
長期的に組織へ貢献する姿勢 | 短期的なモチベーションの波がある |
ポイント
モチベーションは短期的に変動するものであり、状況によって上下します。一方、組織エンゲージメントは長期的に組織と従業員の関係性を強固にし、持続的に高い貢献意欲を生み出すものです。単なる「やる気」とは違い、組織の価値観や目標に深く共鳴し、意欲的に行動することがエンゲージメントの特徴です。
組織エンゲージメントと従業員エンゲージメントの違い
「エンゲージメント」という言葉は、「従業員エンゲージメント(Employee Engagement)」とも関連がありますが、両者は厳密には異なります。
従業員エンゲージメントは、個々の従業員が仕事に対して持つモチベーションや熱意を指します。
組織エンゲージメントは、組織全体として、従業員がどれだけ一体感を持ち、組織の目標達成に向けて貢献しているかを示します。
つまり、個々の従業員のエンゲージメントが高いからといって、組織全体のエンゲージメントが高いとは限りません。組織エンゲージメントを高めるには、個人のやる気だけでなく、組織文化やリーダーシップ、職場環境といった要素も重要になります。
組織エンゲージメントとは、従業員が組織と深い関係を築き、積極的に組織の成功に貢献しようとする意識や行動を指します。「従業員満足度」「忠誠心」「モチベーション」とは異なり、組織の目標達成に向けて主体的に行動する点が特徴です。
組織エンゲージメントが高い企業では、生産性の向上、離職率の低下、イノベーションの促進など、多くのメリットが得られます。
エンゲージメントが注目される背景

組織エンゲージメントが注目される背景には、さまざまな要因がありますが、その中でも特に 「人材不足と従業員の定着」 そして 「企業の競争力向上とイノベーションの必要性」 は、すべての企業にとって重要な課題となっています。以下では、この2つのポイントに焦点を当て、組織エンゲージメントがどのようにこれらの課題解決に貢献するのかを解説します。
1.人材不足と従業員の定着の重要性
少子高齢化による人手不足
日本では少子高齢化が加速しており、労働人口の減少が深刻な問題となっています。総務省の統計によると、生産年齢人口(15歳~64歳)は1995年をピークに減少し続けており、2030年には現在よりも約800万人減ると予測されています。
このような状況下では、新しい人材を確保するだけでなく、今いる従業員に長く働いてもらうことが企業の成長に直結するのです。
離職率の上昇とその影響
労働市場の流動性が高まる中で、従業員が転職を考える機会も増えています。特に、エンゲージメントが低い従業員は、「自分の仕事が評価されていない」「職場にやりがいを感じない」といった理由から、より良い環境を求めて転職しやすくなっています。
企業にとって、優秀な人材の流出は大きな損失となります。
離職が増えることで企業が直面する問題には、以下のようなものがあります。
1.採用コストの増加
新しい従業員を採用するには、求人広告、面接、研修など多くのコストと時間がかかります。企業によっては、1人の採用コストが数十万円から100万円以上にのぼることもあります。
2.知識・スキルの流出
経験豊富な従業員が離職すると、社内のノウハウや顧客との関係が失われるリスクがあります。特に、中小企業では「この人がいないと業務が回らない」といった属人的な業務が多く、離職による影響が大きくなります。
3.組織の士気(モチベーション)の低下
「優秀な人材が辞めていく会社は、将来性がないのではないか」と不安に感じる従業員が増えると、社内の雰囲気が悪化し、残った社員のエンゲージメントも低下する可能性があります。
2.企業の競争力向上とイノベーションの必要性
エンゲージメントが低い企業のリスク
エンゲージメントの低い企業では、従業員が 「言われたことをやるだけ」 という状態になりがちです。これにより、以下のような問題が発生します。
- 新しいアイデアや改善提案が生まれにくい
- 業務の効率化が進まない
- 組織が変化に対応できない
- 顧客満足度が低下する
特に、変化の激しい市場環境においては、従業員が自発的に考え、行動することが企業の競争力を高める上で欠かせません。
組織エンゲージメントが注目される背景として、特に 「人材不足による定着率向上の必要性」 と 「企業の競争力向上のためのイノベーション促進」 の2つが大きな要因となっています。
- 人材不足の中で従業員の定着率を上げるために、エンゲージメント向上が欠かせない
- 企業の競争力を高めるために、従業員が主体的に働ける環境が必要
今後、企業が持続的に成長するためには、組織エンゲージメントを向上させ、従業員が 「この会社で働き続けたい」 と感じられる環境を整えることが不可欠です。
組織エンゲージメントを高めると組織はどうなるか

近年、多くの企業が組織エンゲージメントの向上に取り組んでいます。では、組織エンゲージメントが高まると、組織はどのように変化するのでしょうか。
ここでは、その具体的な影響について解説します。
1.生産性の向上
組織エンゲージメントが高い従業員は、仕事に対する意欲が高く、積極的に業務に取り組む傾向があります。これにより、以下のような効果が期待できます。
1.業務効率の向上
エンゲージメントが高い従業員は、自発的に業務改善を行うため、ムダの削減や作業の効率化が進みます。たとえば、日々の 仕事の進め方 を見直し、より合理的な方法を導入することで、組織全体の業務効率が向上します。
2.業務品質の向上
エンゲージメントの高い従業員は、仕事への責任感が強く、ミスを減らし、より高い品質の成果物を生み出します。特に、顧客対応や製品開発の分野では、この意識の高さが競争力の向上につながります。
2.社内コミュニケーションの活性化
組織エンゲージメントが高まると、従業員同士のコミュニケーションが円滑になり、チームワークが強化されます。
1.部門間の連携がスムーズに
異なる部門の間で情報共有が活発になることで、業務の重複や手戻りが減少し、組織全体の効率が向上します。たとえば、営業部門と製造部門が連携することで、顧客ニーズに即した製品開発が可能になります。
2.風通しの良い職場環境
心理的安全性が高まり、従業員が自由に意見を発信しやすい環境が生まれます。これにより、業務の改善提案が増え、組織全体の成長スピードが加速します。
3.従業員の主体性が向上
エンゲージメントが高い従業員は、指示を待つのではなく、自ら考え行動する傾向があります。これにより、以下のような変化が生まれます。
1.自律的な問題解決
問題が発生した際に、従業員が主体的に解決策を考え、実行に移すようになります。たとえば、顧客対応の現場でトラブルが発生した場合、上司の指示を待たずに適切な対応ができるようになります。
2.創造性とイノベーションの促進
新しいアイデアが生まれやすくなり、業務の革新が進みます。エンゲージメントが高い従業員は、常に「もっと良い方法はないか?」と考えながら仕事に取り組むため、企業の成長につながる革新的な取り組みが生まれます。
4.顧客満足度の向上
組織エンゲージメントが高い企業では、従業員が自社の商品やサービスに誇りを持ち、顧客対応に積極的に取り組むようになります。
1. 顧客志向の強化
エンゲージメントの高い従業員は、単なる業務としてではなく、「顧客の役に立ちたい」という思いを持って対応します。これにより、顧客の満足度が向上し、長期的な関係構築につながります。
2.ブランド価値の向上
従業員一人ひとりが企業の顔として、良質なサービスを提供することで、企業のブランド価値が高まります。特に、サービス業においては、従業員のエンゲージメントが顧客満足に直結するため、その重要性は非常に大きいです。
5.離職率の低下と人材定着
組織エンゲージメントが高まることで、従業員の定着率が向上し、人材の流出を防ぐことができます。
1.働きがいの向上
エンゲージメントが高い職場では、従業員が「自分の仕事が評価されている」と実感しやすくなります。これにより、仕事にやりがいを感じ、長期的に働き続ける動機づけが強まります。
2.採用コストの削減
離職率が低下すると、新しい人材を頻繁に採用する必要がなくなり、採用コストが削減されます。また、経験豊富な従業員が長く働くことで、組織のノウハウが蓄積され、業務の安定性が高まります。
6.組織の持続的成長
組織エンゲージメントが高い企業は、長期的な視点で持続的に成長する傾向があります。
1.経営理念の浸透
従業員が組織のビジョン(企業が目指す将来の姿)や価値観に共感し、それを日々の業務で体現することで、企業文化が強化されます。
2.組織の柔軟性と適応力の向上
変化の激しいビジネス環境において、エンゲージメントの高い組織は、迅速に対応し、競争力を維持することができます。市場環境の変化に柔軟に適応できる組織は、持続的な成長を遂げることが可能です。
企業は組織エンゲージメントを高めることで、生産性の向上、社内コミュニケーションの活性化、従業員の主体性向上、顧客満足度の向上、離職率の低下、そして組織の持続的成長といったさまざまなメリットを享受できます。そのため、経営者や人事担当者は、積極的にエンゲージメント向上施策を検討すべきでしょう。
また、組織の成長と従業員の満足度向上を両立するためには、組織エンゲージメントの向上が欠かせません。
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組織エンゲージメントの調べ方

組織エンゲージメントを高めるためには、まず現状を正しく把握することが重要です。しかし、エンゲージメントは「従業員の心理的な結びつき」や「組織への主体的な関与の度合い」といった目に見えにくい要素を含むため、単なる業績指標では測ることができません。
では、どのような方法で組織エンゲージメントを調査し、その結果を活用すればよいのでしょうか。ここでは、組織エンゲージメントの測定方法について詳しく解説します。
1.組織エンゲージメントを測る主な指標
エンゲージメントを測定するためには、定量的なデータ(数値)と定性的なデータ(意見・感情) の両方を活用することが重要です。以下の指標が代表的なものとして挙げられます。
1.従業員エンゲージメント・サーベイ(調査)
エンゲージメントの測定方法として最も一般的なのが、従業員向けのアンケート調査です。
定期的に実施することで、エンゲージメントの変化を追跡し、改善施策の効果を測ることができます。
代表的なエンゲージメント調査の項目
仕事への熱意・満足度 | 「仕事にやりがいを感じているか?」 |
組織への信頼・誇り | 「自社で働くことを誇りに思うか?」 |
上司・同僚との関係性 | 「上司やチームメンバーとの関係は良好か?」 |
成長機会の有無 | 「スキルアップの機会があると感じるか?」 |
組織のビジョンとの一致 | 「会社の方向性に共感しているか?」 |
代表的な調査ツール
ギャラップ社の「Q12サーベイ」
→12の質問でエンゲージメントを測定
Googleの「Googlegeist(グーグルガイスト)」
→Googleが全社で実施する従業員意識調査。職場環境、マネジメント、成長機会など幅広い項目について意見を収集し、組織の改善に活用
独自設計のエンゲージメント調査
→自社に適した質問を作成
2. eNPS(従業員の推奨度スコア)
eNPS(Employee Net Promoter Score)は、従業員が「この会社を友人や知人に勧めたいか?」を0~10点のスケールで評価するシンプルな指標です。
eNPSの計算方法
1.推奨者(9~10点をつけた人)
会社に強い愛着を持ち、積極的に貢献しようとしている。
2.中立者(7~8点をつけた人)
大きな不満はないが、会社への強い愛着はない。
3.批判者(0~6点をつけた人)
会社に不満を持ち、転職を考えている可能性がある。
eNPS = 推奨者の割合(%)- 批判者の割合(%)
プラスの値が大きいほど、従業員のエンゲージメントが高いと判断されます。
3.離職率・定着率
組織エンゲージメントが高い企業では、従業員の定着率が高く、離職率が低い傾向にあります。
そのため、エンゲージメントの測定指標として「離職率」や「平均勤続年数」を分析することが有効です。
離職率が高い場合
→ エンゲージメントが低く、会社への不満を持つ社員が多い可能性がある。
定着率が高い場合
→ 組織への愛着があり、働き続ける意欲が高い可能性がある。
ただし、離職率の増減だけではエンゲージメントの全体像は把握できないため、他の指標と併用することが重要です。
4.仕事のパフォーマンス(生産性・成果)
エンゲージメントの高い従業員は、自発的に行動し、業績向上に貢献する傾向があります。
そのため、以下の指標を追跡することで、エンゲージメントの変化を間接的に把握できます。
- 個人・チームの目標達成率
- プロジェクトの完了率
- 業務改善提案の数
- 顧客対応の品質(NPSやCSATスコア)
NPS(ネット・プロモーター・スコア) 顧客が企業やサービスを他者に推奨する可能性を数値化する指標。一般的に0〜10のスコアで評価される。 CSAT(カスタマー・サティスファクション・スコア) 顧客満足度を測る指標で、購入やサービス利用後の満足度をアンケートで収集する。
組織エンゲージメントが向上すれば、これらの数値も改善される可能性が高くなります。
2.組織エンゲージメント調査の実施の流れ
エンゲージメント調査を実施する際は、次のステップに沿って進めると効果的です。
1.調査の目的を明確にする
- 「従業員の満足度を知りたいのか?」
- 「エンゲージメント向上のための具体的な課題を把握したいのか?」
- 「離職リスクを事前に察知したいのか?」
目的を明確にすることで、適切な指標を設定できます。
2.調査の設計(質問項目・手法を決める)
- 定量調査(アンケート・eNPSなど)
- 定性調査(1on1面談、グループ対話形式の意見交換 など)
組織の規模や目的に応じて、適切な手法を選択します。
3.調査の実施とデータ収集
- 年1~2回の定期調査が一般的ですが、企業によっては四半期ごとに実施することもあります。
- 調査は匿名性を確保することで、正直な回答を得やすくなります。
4.データ分析と課題の特定
- スコアの推移(前年との比較)
- 部門ごとの差異(エンゲージメントの高い部署と低い部署の違いを分析)
- 自由記述の分析(定性的な意見から課題を特定)
5.改善施策の立案・実行
- 評価制度の見直し
- キャリア開発の機会を増やす
- 上司・部下のコミュニケーション強化 など
調査結果をもとに、具体的な対応策を決めます。
6.フォローアップ
- 改善策を実行した後、エンゲージメントの変化を継続的に測定。
- 「何がうまくいったのか?」「どの課題が残っているのか?」を振り返り、次の施策に活かす。
組織エンゲージメントを測定するには、定量的なデータ(アンケート・eNPS・離職率など)と定性的なデータ(面談・インタビューなど)を組み合わせることが重要です。
また、調査結果をもとに課題を特定し、具体的な改善策を講じることで、エンゲージメントの向上につなげることができます。
組織エンゲージメントを高める方法

エンゲージメントは自然に高まるものではなく、戦略的に取り組むことが求められます。経営層や人事が計画的に施策を講じることが不可欠です。
ここでは、組織エンゲージメントを高める具体的な方法について解説します。
1.目的やビジョンを明確に伝える
従業員が自分の仕事に誇りを持ち、組織への帰属意識を高めるためには、会社の目的(ミッション)やビジョンを明確に伝えることが重要です。企業の存在意義や目指す方向性が不明瞭だと、従業員は単なる作業の繰り返しになりがちで、エンゲージメントは高まりません。そのため、経営戦略と連動したエンゲージメント向上の取り組みが重要です。
具体的な取り組み
経営層が直接発信
経営者が全社集会や動画メッセージを通じて、企業の方向性を繰り返し伝える。
日々の業務と結びつける
個々の業務が組織のビジョンにどうつながるのかを説明し、納得感を持たせる。
経営理念の浸透
ポスターや社内向けのお知らせ(社内報やメール配信など)で価値観を繰り返し伝え、日常業務に組み込む。
2.双方向のコミュニケーションを活性化する
エンゲージメントを高めるためには、経営層や管理職と従業員との間の円滑なコミュニケーションが不可欠です。一方通行の情報伝達ではなく、従業員の声を吸い上げ、意思決定に反映することが求められます。
具体的な取り組み
定期的な1on1ミーティング
上司と部下が定期的に対話し、キャリアや悩みを共有する場を設ける。
エンゲージメントサーベイ
組織の課題を定期的に調査し、改善策を検討する。
アイデア募集制度
従業員が自由に提案できる仕組みを作り、採用されたアイデアは評価・表彰する。
3.適正な評価とフィードバックを行う
従業員は、自分の努力や成果が正当に評価されていると感じることで、仕事に対するモチベーションが高まります。公平で戦略的な評価制度を設計し、エンゲージメントの向上を図ることが重要です。
具体的な取り組み
評価基準の明確化
何を基準に評価されるのかを全社員に共有し、納得感を持たせる。
フィードバックの頻度を増やす
年1回の評価面談だけでなく、定期的なフィードバックを行い、成長を支援する。
360度評価の導入
上司だけでなく、同僚や部下からのフィードバックも受けられる仕組みにする。
4.従業員の成長機会を提供する
キャリアの成長やスキル向上が期待できる環境は、エンゲージメントを高める重要な要素の一つです。従業員が『この会社で成長できる』と感じることで、長期的な定着率も向上します。そのため、企業は従業員のスキルアップを成長戦略の一環として位置付け、計画的に支援することが求められます。
具体的な取り組み
研修・教育プログラムの充実
スキル向上のための研修や学習機会を提供する。
ジョブローテーション
異なる部署での経験を積ませ、キャリアの幅を広げる。
キャリア面談の実施
従業員のキャリアプランを聞き、適切な成長機会を提供する。
5.チームの協力を促す組織文化を育てる
エンゲージメントは、個人だけでなく組織全体の雰囲気にも大きく影響されます。協力的で心理的安全性のある職場では、従業員同士が積極的に関わり、エンゲージメントが高まりやすくなります。
具体的な取り組み
チームビルディング活動の推進
社内イベントやプロジェクトを通じて、チームの結束を高める。
成功事例の共有
業務の成功事例を社内で発信し、称賛する文化を作る。
ピアボーナス制度
従業員同士が感謝を伝え合い、報酬を分配できる仕組みを導入する。
6.働きやすい環境を整備する
エンゲージメントを高めるためには、従業員が快適に働ける環境を整えることも重要です。過度なストレスや仕事と私生活のバランスの崩壊は、エンゲージメント低下の要因となります。
具体的な取り組み
柔軟な働き方の導入
リモートワークやフレックスタイム制を導入し、多様な働き方を認める。
健康管理支援
従業員の健康をサポートするための制度を導入する(例:健康診断、メンタルヘルスケア)。
オフィス環境の改善
快適なオフィス設計や福利厚生の充実を図る。
組織エンゲージメントを高めるには、単に給与や福利厚生を充実させるだけでは不十分です。さまざまな要素をバランスよく組み合わせ、総合的に取り組むことが重要です。
また、エンゲージメントの向上は、一時的な施策ではなく、経営戦略の一環として長期的に推進する必要があります。経営層や人事部門が積極的に関与し、従業員一人ひとりが「この組織で働くことに価値がある」と感じられる環境を整えることが、エンゲージメント向上の実現に向けた重要なポイントとなります。
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組織エンゲージメントを高める組織開発のポイント

前節では、組織エンゲージメントを高めるための具体的な施策について解説しました。本節では、それらの施策を組織全体に浸透させ、継続的にエンゲージメントを向上させるための「組織開発(OD:Organizational Development)」の観点からポイントを解説します。
個々の施策を効果的に機能させるためには、組織の仕組みや文化そのものを変革し、エンゲージメント向上を支える環境を作ることが不可欠です。
1.リーダーシップの変革を推進する
組織エンゲージメントを高めるためには、リーダーシップのあり方が大きく影響します。従業員が上司や経営層に対して信頼を持ち、共に成長できると感じられるかどうかが、エンゲージメントの決め手となります。
特に、日本企業では従来の「トップダウン型」のマネジメントが根強く残る一方で、従業員の主体性を引き出す「支援型リーダーシップ」が求められるようになっています。
実践ポイント
リーダー層の意識改革
経営層や管理職が従業員の成長をサポートする意識を持ち、指示型マネジメントから支援型マネジメントへ移行する。リーダー向けの育成プログラム
1on1のスキル、傾聴力、心理的安全性を高めるコーチングスキルを習得するための研修を実施する。リーダーの評価指標の見直し
目標達成だけでなく、チームの成長や従業員のエンゲージメント向上をリーダー評価の基準に組み込む。
2.エンゲージメントの指標を設定し、データを活用する
エンゲージメント向上の施策を効果的に機能させるには、現状を可視化し、定量的に評価することが重要です。組織開発では、エンゲージメントの数値化とPDCAサイクルの確立が欠かせません。
実践ポイント
エンゲージメントサーベイの継続的な実施
従業員の満足度やエンゲージメントレベルを定期的に測定し、改善のヒントを得る。KPI(重要業績指標)を明確化
エンゲージメント向上の目標値を設定し、定期的に振り返る(例:「エンゲージメントスコア80%以上」「離職率を○%以下に抑える」など)。データに基づく意思決定
施策ごとの成果を分析し、改善ポイントを明確にして次の施策につなげる。
3.組織内の関係性を強化する
組織エンゲージメントは、個人のモチベーションだけでなく、組織内の関係性によっても左右されます。従業員同士の信頼関係が強く、相互にサポートし合える環境があると、エンゲージメントは自然と高まります。
実践ポイント
クロスファンクショナルなチーム編成
部署を超えたプロジェクトを立ち上げ、横のつながりを強化する。社内SNSやチャットツールの活用
情報共有を円滑にし、部門間のコミュニケーションを活発化させる。従業員同士の感謝を大切にする職場をつくる
ピアボーナス(従業員同士が評価し合う仕組み)や社内表彰制度を導入することで、ポジティブな関係を育む。
4.「学習する組織」を確立する
エンゲージメントの高い組織は、変化に適応しながら学び続ける文化を持っています。組織開発においても、継続的な学習と改善を促進する環境づくりが欠かせません。
実践ポイント
ナレッジシェアの仕組み化
社内Wikiやデータベースを活用し、知見を共有しやすい環境を整備する。自己学習の支援
従業員の自主的な学習を支援する制度(書籍購入補助、外部セミナー受講費の補助など)を導入する。トライアル&エラーに前向きな職場を整える
失敗を糧にして学ぶ文化をつくり、挑戦しやすい環境を整える。
5.変革を継続できる組織体制をつくる
組織開発のポイントとして、エンゲージメント向上を一時的な施策ではなく、持続可能な取り組みにすることが求められます。そのためには、エンゲージメントを高める文化や仕組みを組織のDNAとして定着させることが不可欠です。
実践ポイント
エンゲージメント向上を経営課題として位置付ける
経営会議の議題として継続的に取り上げ、組織全体で意識する仕組みを作る。人事部門だけでなく現場リーダーも巻き込む
エンゲージメント向上の責任を人事部門だけに任せず、各現場のリーダーにも役割を持たせる。エンゲージメントの成功事例を社内に展開する
他部門の取り組みを共有し、成功事例を横展開することで、組織全体の変革スピードを加速させる。
組織エンゲージメントを高めるための施策は、単発で実施するだけでは効果が限定的です。組織全体としてエンゲージメント向上に取り組み、それを持続可能な仕組みにするためには、組織開発の視点が欠かせません。
こちらで紹介してきた視点を取り入れることで、組織全体でエンゲージメント向上を推進することが可能になるでしょう。
組織エンゲージメントは、一朝一夕で高まるものではありません。しかし、組織開発の視点を持ちながら継続的に改善を進めることで、従業員が主体的に働き、組織全体の成果が向上する環境を築くことができるのです。
組織エンゲージメントを継続的に高めるために
本コラムを通じて、「組織エンゲージメント」とは何か、その重要性、そしてエンゲージメントを高めるための具体的な方法について解説してきました。エンゲージメントの高い組織では、従業員が主体的に行動し、チームの一体感が生まれ、結果として組織全体の生産性や業績の向上につながります。しかし、エンゲージメントは単発の施策で高まるものではなく、継続的な取り組みが不可欠です。
特に、経営層・管理職・人事部門が一体となり、ビジョンの浸透、適正な評価、成長機会の提供、そして組織文化の改善を進めることが、エンゲージメント向上のカギを握ります。加えて、データを活用しながら組織の現状を可視化し、PDCAサイクルを回し続けることで、より効果的な施策へと進化させることができます。
エンゲージメントの向上には時間がかかるため、「すぐに成果が出ないから意味がない」と考えず、中長期的な視点で取り組むことが重要です。小さな変化の積み重ねが、やがて大きな組織の変革につながります。
本コラムが、皆さまの組織におけるエンゲージメント向上のヒントとなり、より良い職場環境を築く一助となれば幸いです。従業員一人ひとりがいきいきと働き、組織の未来を共に創り上げるために、できることから始めていきましょう。
監修者

- 株式会社秀實社 代表取締役
- 2010年、株式会社秀實社を設立。創業時より組織人事コンサルティング事業を手掛け、クライアントの中には、コンサルティング支援を始めて3年後に米国のナスダック市場へ上場を果たした企業もある。2012年「未来の百年企業」を発足し、経済情報誌「未来企業通信」を監修。2013年「次代の日本を担う人財」の育成を目的として、次代人財養成塾One-Willを開講し、産経新聞社と共に3500名の塾生を指導する。現在は、全国の中堅、中小企業の経営課題の解決に従事しているが、課題要因は戦略人事の機能を持ち合わせていないことと判断し、人事部の機能を担うコンサルティングサービスの提供を強化している。「仕事の教科書(KADOKAWA)」他5冊を出版。コンサルティング支援先企業の内18社が、株式公開を果たす。
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